森の中2
お兄さまの胸の中に抱え込まれながらのお散歩はあらゆる意味で刺激的でした。
「クリス、そこの丈の高い草は毒草だ。葉に触れると酷いかゆみがでる。決して触れぬように」
「その木は神が宿ると言われていてな。どんな天災があろうと決して枯れることはないのだそうだ」
歩を進めながら色々なものを案内して下さるのはいいのですが。
赤い実を見つけた木をお兄さま。その横にスノーを止め、ボクを抱えたまま手を伸ばしひょいっとその実をもいで……
「クリス。この実はグリという名で食べることができるのだ。とても甘いぞ?ほら。お口をあけてごらん」
「あーん」だ!
しかも銀馬の上の王子様ならぬお兄さまからの「あーん」!!
勿論、推しのあーんでお口をあけない選択肢なんぞないので、激しくダンスをする心臓を宥めながら「あーん」とお口をあける。
2センチほどの大きさの赤い実が、お口の中でプチっとはじける。
思いのほか濃厚なトロリとした甘い果汁が口の中に溢れた。ものすごく甘い桃みたい。
「んーー!!……ほ、ほしひーれふーー!」
余りのおいしさに思わず「もっと」とお口を開ければ、クスクス笑ったお兄さまがせっせともいでお口に入れてくださった。
お隣では、マーシャも同じように実を詰んで食べさせてもらっている。マーシャの場合は「あーん」ではなく手渡しですけれど。
マーシャのお口からも「んん!」と感嘆の声があがった。
ね、美味しいよね!
この実は高い位置にあるから動物は食べないのだが、大抵はすぐに鳥さんに食べられてしまうそうで、今回見つかったのはとても運が良いのだそうだ。
お兄さまも護衛のみなさんも、せっせとお口に運んでいらっしゃった。
「あの、これ少し持って帰ることはできませんか?お留守番のみなさんにも食べて頂きたいのですけれど……」
オネダリすればお兄さまがとてもやさしいお顔をされた。
「うむ。クリスはとても良いことを思いついたな?
ブリック、ランチの入った籠にまだ入るか?」
「入りますよ。入らなければ袋に入れて鞍につけましょう」
ブリックさんがそう言ってグリをもぎはじめた。
「あ!鳥さんたちが食べる分に少し残しておいてくださいね。楽しみにしているとかわいそうなので」
「ふふ。分かりました。いくつか高い位置のものを残しておきましょうね?」
「ありがとうございます!」
ボクはすっかり嬉しくなってご機嫌でお兄さまに頭を擦り付けた。
「えへへ。
お兄さまやブリックさんのお陰で、お義父さまやお母さま、ジェームズさんたちにとても良いお土産ができました。
ありがとうございます。喜んでいただけるといいな。
ピクニックってとても楽しいですね!」
「うむ。そうだな。クリスが楽しそうにしているのを見ると、私も楽しい。
見慣れた森も素晴らしい場所に思えるから不思議だ」
ボクも、お兄さまが一緒だからとっても楽しいです。




