森の中
動き出すと、なんというか……前に動くだけじゃなくって上下左右にも動き出した。
スノーの背中の筋肉がその歩みと共に動いているのを身体で感じる。
とても不思議。
一人ならあちこちしちゃってたかもしれないけれど、お兄さまがしっかりと支えて下さっているからボクは安心してその揺れを楽しむことができた。
お散歩、と言っていたとおり、馬で駆けるのではなくゆったりと一列に並んで歩を進める。
いつものボクよりかなり高いところから見下ろす感じになって、ボクはなんだか自分が巨人になったような気がした。
「お兄さま!あの木の上の方を見てください!小鳥さんがとまっています!
わあ、水色でキレイです!」
「ああ、あれはルリという鳥だ。とても良い声で鳴くのだ」
いきなりボクの耳元で「ピーピチュピチュピチュ!」と綺麗な音が鳴った。
「え?え?鳥さん?」
ビックリして思わず振り返ると、そこにはお兄さまの美しい唇が。
え?まさか今のはお兄さまがされたのですか?
すると今度はルリが「ピーピチュピチュピチュ!」
「すごいっ!お返事しました!うわあ!とってもかわいい声ですねえ!」
するとお兄さまの口元からさっきの音が。
「ピーピルピルピー」
ルリがまた「ピーピルピルピー」と返し、パタパタパタっとこっちにやってきてお兄さまの肩にとまった。
えええーっ?
ボクはルリを驚かさないようにそうっと近くに寄ってみた。
ルリが「キュルル」と喉を鳴らし「なあに?」とでも言うように真ん丸の目をくるくる、首をこてりと傾げてボクを見る。
か、か、か、かんわゆううううい!!!
思わずそおっと手を伸ばせば、ルリはツンとボクの指をつついてパタパタと飛んで行ってしまった。
「あーーー……。行ってしまいました……」
「アレは人懐こい。また会うこともできるだろう。
ほら、クリス。危ないぞ?きちんと手綱を持ちなさい」
お兄さまが注意してくださったのに、ボクは鳥さんに夢中でそれどころではない。
「お兄さま、最初の音はジル兄さまが出されたのすか?本当の鳥さんみたいでした!
ルリはお返事していましたし、お兄さまの肩までやってきました。
お兄さまは鳥さんとお話ができるのですか?それってボクもできますか?難しいですか?」
夢中になりすぎたボクは……
「あっ!!」
グラリ。
バランスを崩してしまった。
「クリス!」
素早く反応したお兄さま。ググっとボクの腰に手を回してしっかりとボクを引き寄せる。
「び、びっくりしました……」
ちょっと震える声を何とか絞り出せば、お兄さまが大きく息を吐く。
「………私もだ。すまない。もう少し気を配るべきであった」
よっぽど驚いたのだろう。密着した身体からお兄さまの速い鼓動が伝わる。
「お兄さまが注意してくださったのに、ボクがいけないんです。ごめんなさい。つい夢中になってしまって……」
「いや、クリスは初めてなのだ。私が……「ボクが……」
お互いに私がボクがと言い合いになり、思わず顔を見合わせた。
「うふふ。あのですね、お兄さま。ボク、これからはしっかりと手綱を握っていますね?」
「うむ。そうだな。私もしっかりとクリスを抱きしめることとしよう」
言葉の通りお兄さまは更にボクに密着。ボクの肩に頬を寄せ、抱きしめるようにして手綱を握り直す。
横から呆れたような声で「まるで恋人同士ですね?」とレインさん。
ですよねー?この距離はさすがに恥ずかしいです、お兄さま。
自業自得ではあるのですけれど。
ボクは真っ赤になってひたすらうつむきながら目的地に向かったのでした。




