新しい生活2
とりあえず、ボクの訓練についてはお義父さまに要相談、ということになりました。
お兄さまは基礎ができていらっしゃるのだけれど、ボクはどれくらい基礎ができているのか分からないので、それを含めて相談していく必要があるのだそう。
確かに伯爵家ではサイモン叔父さまが木剣で稽古をしてくれていたのだけれど、正式に訓練するというよりも遊んでもらっていたというほうが近いのかもしれない。
だって叔父様ったら「やられたー」とか言って倒れたりサービス満点だったから。
ああ、思い出したら叔父様に会いたくなっちゃった。叔父様、元気かなあ?
僕たちが居なくて寂しくて泣いてしまったりしていないだろうか。
少しだけしんみりしていると、お兄さまに気付かれてしまった。
「どうした、クリス。何を考えている?」
スッとしゃがみこみ、ボクの頬を両手で包むようにして話しかけてくださる。
その気遣いが嬉しいやら申し訳ないやら。
「あ、あの……ボク、伯爵家ではサイモン叔父様さまにお稽古してもらっていたので……。えと、元気かなあ、と……」
「ああ。君たちはとても仲がいいと聞いている。まるで本当の親子のようだったと」
「はい。ボク、小さなころは叔父さまのことをお父さまだと思っていたのです。
とっても優しくって強くって、最高の叔父さまなのです」
言っているうちに、ダメだって思うのになんだか余計に恋しくなってポロリと涙が出てしまった。
公爵家でこんなにも良くして頂いているというのに。
「す、すみません。ボク、公爵家もとても好きです!
お義父さまも、お兄さまも、ジェームズさんも、みいんなとてもお優しくて、親切で、大好きなのです!
それなのに……叔父さまが恋しいなんて……」
公爵家の皆様の優しさを裏切っているような気がして、申し訳ない。
しょんぼりと俯けば、お兄さまが優しくその指先でボクの涙をぬぐってくださった。
「何故謝る?クリスは叔父様が大好きなのだろう?」
「はい。大好きです」
「ならば、離れて寂しいと思うのは当然だ。それだけお互いを大切に想い合っていたということではないか?
謝る必要は無い。
叔父様のことを大切に思っているからと言って、私たちへの気持ちを疑ったりはせぬ。
クリスは自分の気持ちを大切にしていればいい」
優しいお言葉に、思わずお兄さまの首にぎゅうっと抱き着いてしまった。
「ありがとうございます、お兄さま!……大好きです!」
「うん。私も大好きだぞ?
クリスの大好きなサイモン叔父様に、私もお会いしたいものだ。
可愛いクリスを大切に育てて下さった恩人なのだから。
ぜひまた公爵家にご招待しよう」
「はい!」
公爵家の人たちは、まだまだ沢山いる。
顔合わせの時にみんなに紹介してもらったのだけれど、沢山いたから覚えきれなかったのです。
一人一人ご挨拶して仲良くなりたいです、とお兄さまにお願いして、まずはお兄さま曰くの「主要な使用人」の皆様にご挨拶をして回りました。
あちこちでお茶を頂いたり、お仕事を見せて貰ったりしていたから、今日は団長さんまででおしまい。
この後は、ボクについてくれる専属の使用人さんを選ぶのですって!
一応お義父さまとお兄さまが良いと思われる方を何人か選んでくださっていて、その中から決めようと言われました。
え?ボクが選ぶのですか?
なんだかとても荷が重いような気が致します……。
ボクは家を継ぐわけではないので、ボク付きということは出世コースから外れてしまうのでは?
相手の方にボク付きでいいのかを聞いていただく方が気が楽なのだけれど。




