アフター結婚式
目を覚ましたら、いつの間にかボクのお部屋の夜空のベッドだった。
「あ、あれ?」
ぼんやりと呟けば、すぐ横でお兄さまのお声。
「大丈夫か?クリス」
「あ、はい。大丈夫です。えっと、ボク、どうした………って、ええ?!お、お兄さま?!」
バッと横を向けば、ボクの横でお兄さまも横になり、肩肘をついてボクをその煌めく瞳で見つめていた。
「ど、ど、ど、ど、どうなさったのですか、お兄さま?なぜここに?!」
「まずは落ち着こうか、クリス。また倒れてしまうぞ?
さあ、深呼吸をしてみなさい。すーーー、はーーーー、だ」
「は、はい。すーーーー、はーーーー、すーーーー、はーーーー」
なんどか繰り返してようやく脳に酸素が行き渡った。
ええと…思い出してみよう。
式をして、サインをして、そうしたら……
「思い出したか?クリスは自分が思うよりもまだまだ小さく弱いのだ。
無理をせぬよう気をつけねばな?」
「弱くありません。お兄さまが過剰供給するからこうなったのではないですか……」
がくり。
だって、推しにちゅーをしていただいたあげく、ボクとお兄さまの結婚式みたいなことを言われたら!!
誰だってああなります!
ただでさえそれまで限界までいっぱいっぱいだったのですから!
そして今まだ供給を継続中。
またしても供給のジャバジャバ垂れ流しにさらされ、遠い目になるボク。
速いところ慣れないと、ボクの心臓がもたないと思う。
恨めしそうに頬を膨らませると、ツンと頬をつつかれる。
「そんな顔をしてもかわいいだけだぞ?」
あああ!そういうところですよ!お兄さま!
「母上も父上もクリスを心配し、クリスが目覚めるまでここにいると言っていたのだがな。
またいつもの『キョウキュウカタ』というものだろうと『私がついているから大丈夫だ』と私が二人を止めたのだ。
良かったか?」
ナイスです、お兄さま!
入籍したばかりの二人をボクに……なんて申し訳なさすぎますからね。
「問題ありません。お気遣い頂きありがとうございます、お兄さま」
「うむ。そういうわけで、今日は私がここに泊まろう。
クリスのいう『興奮しすぎたから』にしても、何度も倒れたのは確かなのだ。
一人にしておくのも心配なのでな。いいか?」
頬をつついた手を伸ばし、お兄さまがボクの頭をクシャり。
え?
は?
ええええーーーー?!
今なんておっしゃいましたか?
勿論、お義父さまとお母さまがボクに付き添っていなかったのは問題ありません。
だけど、そこからどうして「お兄さまがここに泊まる」ことにつながるのですか?
そもそも興奮しすぎで倒れたって言いましたよね?
お兄さまがいたら、興奮しっぱなしですよね?
本末転倒ではないですか?
推しの添い寝イベントなんて、そんなこと!!ボクに死ねとでも?!
ということをコンマ1秒で考えたボク。
にっこり微笑んで口にしたのはこのひとこと。
「むりです」
しーーーーん。
「………?クリス、今なんと言った?
気のせいか?無理だと聞こえたような気がするのだが……」
「無理ですと申し上げました」
にっこり。
お兄さまの形の良い額にムムムっとしわが寄った。
そんなお顔をされても美しいですね、お兄さま!素敵です!
「なにが無理だというのだ?
このベッドは広い。二人で寝ても問題なかろう」
「いや、問題しかありませんよね?
そりゃあ、ボクはお兄さまのことが大好きなのですけれど!
興奮して倒れてしまうくらいには大好きなのですけれど!
だからこそ、一日でこんなに供給されてはボクの心臓がもちません!」
「?!クリスは心臓が悪かったのか?健康だと言っていなかったか?」
慌てて医者を呼ぼうとするお兄さまをバシッと捕まえる。
この流れ、もうだいぶ慣れてきましたよ、お兄さま。
「大丈夫です!ものの例えですから!!」
そ、そうか?とまだ信じていなさそうなお顔で、それでも大人しく戻ってくれたお兄さま。
「ならば何が問題なのだ?」
「そもそも思い出してくださいませ。ボクが倒れたのは、お兄さまの素晴らしさの供給が過多だったからです。
大好きが大きすぎて倒れてしまったのです。
今日の分のお兄さまの供給は既にボクの限界まで達しているのです。
これ以上大好きが溢れたら、ボクはまた倒れます」
情けない理由だけれども、はっきり言わないと分かって頂けないのはもう学習済みなので。
どのみちボクがお兄さまを好きすぎる問題についてはバレバレなので。
ここは開き直ってお伝えする所存です。




