新郎新婦の入場です!
こうしてなんとかギリギリで間違いを犯さずにすんだボク。
お兄さまは何故だか少し不満そう。ボク以外にはわからないくらいに、ほんの少しだけ眉を下げている。
ボク、別にお兄さまと一緒に歩くのが嫌だと言っているわけではないのです。どうか機嫌を直してほしいな。
「お兄さま、この入り口でお義父さまたちをお待ちしましょう。
そうして、主役の二人の後ろからボクたちも一緒に入ればよいのではないでしょうか?」
そう提案してみると、なんとあっさりとご機嫌は直った。
「それもそうだな。2人の後から一緒に入ればよいのだ。
確かにクリスの言う通り、主役はあくまでもあの二人。私たちが邪魔をするわけにはいかぬからな。
クリスはとても賢い。おまけに気遣いもできる。良い子だ」
そう言ってボクの頭をそっと撫でてくれた。
ガッシガッシと撫でてくれるサイラスおじさまとは違って、ふんわりと優しくボクの髪に触れる。
えへへ。この優しい触れ方はお兄さまそのものという感じがしてとても心地いい。
当たり前のことを言っただけなのですが、お褒め頂けて嬉しいです!
そうこうするうちに二人が姿を見せた。
「お待たせしちゃったかしら?」
「お、お母さま?!すごおくキレイですっ!なんだかお母さまではないみたい!」
「あら、失礼ねえ!」
クスクス笑うお母さまだけど。
ホントに、いつものお母さまとは違うんだもの!
いつもはあまりお化粧もせず、どちらかというとあっさりしたドレスがお好みのお母さま。
でも今日は、いつもは後ろで軽く纏めている髪が複雑に編み込まれハーフアップに。ところどころに花まで編み込んである。あの短時間でどうやったの?
更に、本当の結婚式で着るような純白のドレス!
上半身はスッキリと、裾はなだらかに広がっていてシンプルなのにとても綺麗。
タフタが綺麗なドレープを幾つも生み出していて、なんだか変な言い方だけれども、派手じゃないのに豪華。
ボクにこの美しさを表現する語彙がないのが本当に残念だ。
そんなボクに対してお兄さまはさすが。
「義母上、ああ、なんとお美しい。清純なお姿に心が洗われるようです。
さすがクリスの母上。内側から光りが溢れるようだ。
素晴らしい方々と籍を同じくできることを神に感謝致します」
途中でなぜかボクの名前が登場したけれど、とにかくものすごく褒めて下さっている。
お母さまをお褒め頂けてボクも嬉しい。
そんなお母さまの後ろには、お母さまを支えるようにお母さまの腰にそっと手を当てて寄り添うお義父さま。
スラリとした長身にピタリとした燕尾服を身に纏うそのお姿はまさに軍神。文句なしの堂々たるお姿です。
全身から放たれる「ただモノではない感」が凄すぎて、思わず拝みたくなってしまいます。
「お義父さま、カッコいいです!とてもカッコいいです!」
お兄さまも成長したらきっとこのような感じなのかな?
思わずくるくるとお義父様の周りを回り360度確認。
ほわああああ。足とかとても長いし、すらりとしてる。
ボクなんてぴょいっと飛び越えてしまえるのでは?
とにかく抜群のスタイルです。
胸の前に手を組んでうっとりとしていると、お義父さまが困ったように頬を少し赤くした。
「……気に入ってくれたのならば嬉しい」
「はい!とても良いと思います!わざわざお母さまのドレスも用意してくださったのですね。
ありがとうございます!」
「……正式な式は後日執り行うのでな。試しに作らせていたものなのだ」
そうだったのか。
うふふ。試しに、だって。
お母さまのためにいろいろ頑張ってくれていたんですね、お義父さま。
ありがとうございます。




