いきなり入籍!
そこからはもう怒涛の展開だった。
あっという間に今日お義父さまとお母様は入籍することに。
正式な入籍はきちんと教会で認めて貰ってからになるから、「書類作成の儀」みたいな感じになのかな?
書類を記入しておいて、明日の朝一番で教会に向かうのだそうだ。
お母さまとお兄さまはもう何度か会っていたので、あとはボクがお二人と家族になっていいと思うかどうか、だったんだって。
「え?お兄さまとお義父さまがボクを認めて下さるか、じゃないの?」と聞いたら「クリスなのよ?」と当たり前のように返され、お二人にも当然のようにうんうんと頷かれてしまった。
本当にボク次第だったみたいです。
そのボクはといえば、お二人と会ったとたんに大好きになったし、お兄さまに至っては内緒だけど前世から大好きなので!まったくもって大歓迎!
気絶するくらいにお兄さまのことを大好きなのが十分伝わったし、なによりも普段あまり希望を言わないお兄さまが熱烈に望まれたので「よし!」となったのでした。
お茶を飲み終わった途端にお母さまとお義父さまは「では準備を」とどこかに連れて行かれてしまった。
「わあ……。な、なんだか大変なことに……」
あわあわするボクに、お兄さまがちょっと心配そうな表情。
「クリス、何か気がかりでもあるのか?私たちに遠慮しているのならば……」
「ありません!全く!お兄さまこそ、ボクが家族になっても良いのですか?
気がかりと言えばそれくらいです。だってお母さまはともかくボクはオマケなのですから。
ボクはお兄さまをお護りできればいいので、なんならお母さまだけ籍を入れてボクは同居人ということでも……「オマケなどではない。私はクリスがいい」
言いかけたボクの言葉を遮るようにジル兄さまが強い口調で言った。
その真剣な表情とまるでプロポーズのような言葉に、一瞬息が止まりそうになった。
「クリス、確かに父上と義母上の再婚により私たちは家族となる。しかし、私はクリスと出会えてよかったと思っている。
会ったばかりでこのようなことを言っても信じて貰えないかもしれぬが……。
クリスと居ると、………欠けたものが見つかったような気がするのだ。なぜなのだろうな?」
ああ。なんだか泣いちゃいそう。
なぜなのだろな、って。それはボクのセリフですよお兄さま。
ボクがお兄さまを大好きな理由はたくさんある。
でもお兄さまがボクを良いと言って下さる理由がわかりません。
お護りするとはいったけれど、まだなにもできていないのに。
それでもいいのでしょうか。
ボクにお兄さまが失くされた何かを取り戻すお手伝いができますか?
ジェームズさんがしれっと言った。
「……クリス様ももちろんお母様と共に公爵家の息子として籍を入れさせていただくことになっております。
ちなみに、将来的に一旦籍を抜き《《違う意味で入れなおす》》ことも可能でございます。ご安心くださいませ」
「ああ。ありがとうジェームズ。もちろんそれも考慮の上だ」
んん?抜いたり入れたりしなきゃいけないの?
「?よく分からないけれど、ボクはお二人がよろしければこのまま籍を入れて頂いて大丈夫ですよ?」
「ふふふ。ならば良かった。私はすぐにクリスと共に居る権利が欲しい。家族になってくれて嬉しいよ、クリス」
話をしている間にできる家令ジェームズさんと執事のシェパードさん(ジェームずさんの息子さんなんだって)が使用人さんたちにいろいろ指示していたみたい。
なんと、別室に即席の「入籍会場」を作り上げていた。
「公爵様と奥様は直接会場に向かわれます。お二人もそちらへ」
「え?えええ?凄い……!」
案内されたそこは、小さなサンルームだった。
だけど、入り口から奥に向かってたくさんの花が飾られた即席のバージンロードが続いている。
突き当りに同じく白を基調とした花やツタで飾り付けられた真っ白なテーブル。
途中途中に花びらの入った籠を持った使用人さんたちまで、にこにことスタンバイ。
「さあ、クリス。先に入っていよう」
スッと目の前にお兄さまの手が差し出された。
「はい!こんなに素敵な場所を即席で用意してしまうだなんて、凄いです!
お家だけど、まるで教会の式場みたいですね」
お兄さまの手を取りバージンロードを……
「あああ!ここは通ってはダメです!お義父さまとお母さまが一番に通らなくては!
二人が来るまで入り口で待ちましょう!」
気付いてよかったあ!失礼なことをしてしまうところだった。




