まさかの
こほん。
話がそれました。
とにかく、あの頃ボクが笑っていられたのは、ジルベスター様のおかげなのです。
実際にお会いしたジルベスター様は、ボクが思っていた通りだった。
お優しくて素晴らしいお兄さま!
多分だけれど、本来ならきっと表情も豊かだったはず。お母さまの言っていらした厳しいお祖父様がお兄さまとお義父さまから表情を奪ったんだ。
嬉しい、悲しい、楽しいもちゃんと感じていらっしゃるの。
長いこと表情筋を動かせなかったから、慣れていないだけ。
やっぱりね!そうだと思ってた!
ボク、ぜったいにお二人の表情筋を元気にして見せますからね!
冷たいとか心がないなんてもう言わせませんから!
だけれど、ボクのこの気持ちと同じものを推しから返して貰おうなんて図々しいことは考えていなかった。
だって、ジル兄さまはこの世界に燦然と輝くボクのお星さま。
ボクはお兄さまを幸せにするためにここにいるのだもの。
お兄さまを笑顔にすることができれば、お兄さまをお護りすることができればそれでいいと思っていた。
なのに!なのに!
出会ってからずっと、ファンサに次ぐファンサ!
ダバダバどころがザブンザブンと被せられる怒涛の供給にボクはもういっぱいいっぱい。
嬉しいも度を超すといっそ「スン」となる瞬間があることも知ってしまった。
その上こんな風に言って貰えるなんて……
ボク、もういつ死んでもいい!
いや、やっぱり死ねない。ピンク頭以後のお兄さまの無事なお姿を見るまでは死ねません。
ああ、ボクの情緒が大変なことになってしまいましたあ!
「クリス?クリス?大丈夫か?
やはり私は少し急ぎ過ぎたのだろうか?
もう少し『お試し』をする方が良いのなら……」
大変だ!推しがしょんぼりしてしまわれた!
「だ、だ、大丈夫です!ボクもすぐにでも、たった今にでも、名実共に家族がいいですっ!
でももうボクはお兄さまとお義父さまのことを大切な家族だと思っておりますよ?それはお二人が大好きだからなので、入籍するとかは関係ないのです」
ボクはお隣のジル兄さまの手をぎゅっと握った。
お兄さまのお気持ちは大変嬉しくて光栄で倒れそうなくらい。
でも、入籍しているのとかしていないとか関係ないくらいお兄さまのことが大好きなのです。
「よし!サインしよう!
実はもう用紙は用意してあるのだ。結婚式をする際に、と考えていたが、先に入籍しようではないか!今すぐに!
ティーナ、良いだろうか?」
お義父さま、ボクの話、聞いていらっしゃいましたか⁈
気持ちはもう家族です、準備もあるでしょうから焦らなくても大丈夫ですよ、ってお伝えしたつもりなのだけれど……
「うふふふ。私はいつでもいいわ。
クリスと同じ。もうお二人のことが大好きですし、家族だと思っておりますもの」
おもむろに周りがバタバタしだした。
きっと大急ぎで書類だとかを持ってきてくれるのだと思う。
なんと、初めてのお食事がそのまま入籍の場になってしまうみたいです。




