ボクのお兄さま2
ボクがそう心に誓っていると…
「……お前たちは何をしているのだ?」
困惑の声が後ろからかけられた。
この渋いロートーンボイスは…
「お義父さま!」
振り返ればなんとも表現し難い表情のお義父さまが。
お義父さまも、お母さまに聞いていたよりよほど表情豊かだと思う。
「…見てわかりませんか?クリスに邸を案内しております」
しれっと仰っておりますが、お兄さま、お義父さまが仰っているのはそういうことではないのでは?
まずは手を!この手を離してくださいっ!お義父さまがガン見されておりますっ。
「……見て理解らぬから聞いたのだが……」
ですよねーー!手を繋ぐのはまだしも、両手繋ぎのバックハグだもの!
経緯を知らない人から見れば意味不明ですよね。
ボクはお義父さまをなんとか安心させようと口を開いた。
「ボクもどうしてこうなったのかよくわかりませんが、でも大丈夫です!お兄さまのなさる事に間違いはありませんから!」
「そ、そう……か。う、うむ。クリスが良いのならば良いのだが……」
「まったく問題ありません!むしろボクのお願いに端を発しておりますので!ええ!」
「しかし……歩きにくくはないのか?」
えー?それを聞いてしまいますか?
歩きにくいに決まっているではありませんか。
するとお兄さまが「ああ」と納得。
「私とクリスは息が合っておりますゆえ問題はないかと。
それに良い方法を編み出しました。御覧になりますか?」
「あ、ああ。良い方法……?とやらを見せてくれ」
了解いたしました!
お兄さまがボクを見て「行くぞ?」と頷いた。
はい!いつで行けます!
「では。右、左、右、左……」
「はい!右、左、右、左…………」
ガタガタン!
後ろで大きな音がしたので慌てて振り返ると、よろけてしまったのかお義父さまが額に手を当て壁にもたれていた。
「だ、大丈夫ですか?!お義父さま!」
「あ、ああ。問題ない。…………仲良くなったようでなによりだ」
「はい。父上、義母上と出会って下さりありがとうございます。
おかげでこのように素晴らしい弟ができました。感謝致します」
ええー?お兄さまったら!ボクの方こそ感謝です!ありがとうございます!
ジル兄さまの言葉にお義父さまはゆっくりと目を細めた。
「……ジルベスター……そんなに多く話すことができたのだな……」
「私を何だと思っていらしたのですか?」
「ははは。すまぬ。いや……うむ。お前のそのような顔を見ることができて嬉しく思う。クリスのお陰かな?ありがとう」
「…………はい。私も父上のそのようなお顔を拝見することができて、嬉しく思います」
お互いになぜか照れ照れする二人。
なにこれ、尊い!!ふたりとも可愛いっ!!
「二人ともなんてお可愛らしいの!」
え?ボク、口に出してた?!
と思ったらお母さまだった。ニコニコしながら壁の影から顔を出している。
「覗き見!」
「あらあら、クリスったら人聞きのが悪いわよ?
だってとても面白……素敵なことをしていたのだもの。見守っていたの。楽しいところに水を差してしまっては申し訳ないでしょう?うふふふふ。
でもお義父さまとジル様があまりにお可愛らしいものだから、つい……!」
「ですよねえええ!お二人ともとっても素敵でお可愛らしいと思いますっ!
お母さま、お義父さまと出会ってくださってありがとうございます!感謝します!」
「そうでしょう?お二人ともとてもお可愛らしいし素敵よねえ!
あのね、初めてジル様にお会いした時にもね…」
そのままついお母さまと僕でお二人の素晴らしさを熱弁しあってしまう。
「……も、もうやめてくれないか?」
「クリス……君も……もういいから……」
ボクはお兄さまに、お母さまはお義父さまに確保されてしまったのだが、どうしてお二人はそんなに真っ赤になっているのですか?
それに気付けば集まっていた使用人のみなさん、どうしてそんなににこにこされているのでしょう?
「…………まだまだたくさんあるのに……」
「そうよねえ。またあとで続きをお話しましょう、クリス!」
「はい!お母さま!」
「………父上、いたたまれません………」
「奇遇だな、私もだ………」
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