最終試合
遂に!!
遂に、満を持して、ラスボスお兄様の戦いです!!
昨年のチャンピオンであるお兄様に挑むのは、そう、王国の誇る脳筋、次期騎士団長との呼び声も高いウエイン様!
その戦い方も、お兄様が敏捷性とそのしなりを活かした細くて軽いレイピアの双剣なのに対し、ウエイン様は一撃必殺、打撃力を活かした長くて太い両手剣。
お兄様が「静」なら、ウエイン様は「動」。
お兄様が「氷」なら、ウエイン様は「火」。
対照的なお二人です。
会場中が大盛り上がり。
これまでいなかった生徒たちまで続々と会場に詰め寄せております。
「ジル様あ、ステキーっ!!」
あ!誰かお兄様のことを「ジル様」って!
「ジルって呼ぶことを赦すのは、クリスだけだよ」って仰っておりましたのに!
(アイウ三人組に関しては、許可はしていないけれども何度ダメだと言っても勝手に呼ぶのだそう)
むむう、となるボクの頬を横からリオにぷすっとされてしまいました。
「リオ!もう!何をするのっ!」
思わずぷんすこ怒れば「あはははは!クリスってば意外とヤキモチやきだよね」と懲りることなくそのままぷにぷに。
「やめてくださいってば!……だって……ジル様って呼んでいいのはボクだけだってお兄様が……」
「ふふふ。そうなんだ。でもあれは勝手に言ってるだけでしょう?ジルベスター様がそう呼ばれたいのは、クリスだけなんじゃないのかな?」
言われてハッとした。
確かに、お兄様は「呼ぶことを赦すのは」って仰っておりました。「ジルと呼んで欲しい」って。
お兄様がそう言ってくれたのは、ボクだけ?
だったら。
ボクが声を届けなきゃ!
負けてなんていられません!
すー、はー。
「ジル兄さまああああっ!!カッコいいですううう!
輝かしきその雄姿を、この目にしっかりと焼き付けますのでええっ!!」
お兄様と目が合いました!
この距離なのに、バッチリと分かります。
お兄様が、目を細めて嬉しそうに微笑まれました!
「ジル兄さま、大好きですーーっ!!頑張ってくださいっ!!」
ぶんぶんぶんと手を振れば、お兄様が胸に手を当て、ボクに向かって紳士の礼を!!
ひいいいい!
か、か、か、かっこよ……!!
ボクの周りの生徒たちまで被弾してふらふらになっております!
何という凶器!カッコよさだけで生徒を次々と倒してゆけるかも!
「こ、これは……すごいね……」
「ヤベエな……。クリスが居るだけでこれかよ……」
「見ました?!見ましたかっ?見ましたよねっ?
お兄様はお優しくて紳士的なのです!!ね?カッコよすぎでしょう?
あんなに素晴らしいお方がお兄様だなんて、神に感謝致します!」
ああ。感動しすぎてまた鼻血が……
「うんうん。そうだねー。さあ、クリス、落ち着こうね?
ほら、ハンカチ」
「あいはほう(ありがとう)」
は!いけない!
お兄様が心配そうにこちらを見ております。
今にもこちらにやってきそうです。
ボクは慌てて「大丈夫です!」とぶんぶんと首を縦に振ってアピール。
横でリオも焦ったように「大丈夫です!」と必死で口パクしてくれております。
ほっとしたお兄様、後でね、ひとつ頷いてウエイン様に向き直ります。
よ、良かった……!
ボクのせいで推しを危うく棄権にしてしまうところでした。
ふう。
これからは予め鼻栓を用意しておくことにしましょう。
お二人の試合はさすがでした。
ウエイン様の一撃を、お兄様はあの細いレイピアで難なく受け止め、躱します。
上からの打撃に横からの力を加えることで軌道をそらしているのです。
ガッ!!
ものすごい音がしました!
何と今度は2本のレイピアをクロスさせて、両手剣を真正面から受け止めました!!
剣の重さとウエイン様の力。圧倒的なウエイトの不利をものともせずに、危なげなく受けきっております!
ギリギリギリッ
拮抗する力に剣と剣がきしんでおります。
ど、ど、ど、どうなるのでしょうか?
するとなんとお兄様、そのまま自ら剣を下に。
そしてその反動を利用し一回転!
ウエイン様の剣が勢いのままに地面に突き刺さると、その剣を踏み台にしてウエイン様の後方に着地。すかさず剣を付きつけました!
電光石火の早業です!
す、すごい!
声もなく魅入っていた会場から、一斉に歓声と拍手が巻き起こります。
「勝者!ジルベスター!」




