ティムの試合です!
そうこうしているうちに、試合の時間です。
この大会はトーナメント戦。
お兄様、ウエイン様、アイク様は、昨年の上位入賞者のため最終シードとなります。
第一試合目は、初めて大会に参加する1年生と昨年の下位シード敗退者との組み合わせ。
お兄様の試合まではまだまだ時間があります。
でもティムが第一試合に出るので、クラス揃って応援に来ました。
試合会場には既に第一シードに出場する学生が勢ぞろいしております。
その中で、頭一つ分大きな縦長のシルエット……
「あ!あそこにいるの、ティムです!」
身長が大きいからすぐに分かりました。
ティムの鎧は、茶の髪の色と合わせた赤銅色のフルアーマー。
高身長なので小柄な敵には懐に飛び込まれやすくなります。
それを防ぐためでしょうか、特にお腹周りがしっかりとガードされております。同じ理由で、足回りもガッチガチに固められておりました。
反対に腕周りはショルダーアーマーと手首のみ。長い手のリーチを活かして戦うようです。
片手剣を腰に下げ、タガーをベルトに挟んで、準備万端整っております!
「こうしてみると、ティムって1年生とは思えない落ち着きがあるよね?」
リオが感心したように呟きます。
「ホントですね!2年生だと言われれば信じてしまいそうです」
あ。でも表情は意外と硬い!
当然です。初めての試合なのですものね。
よおっし!みんなティムを応援しているからね、って知らせなきゃ。
仲間がいると思うだけで心強いでしょう?
「ティムーーー!!みんなで応援してますからねーーーっ!!」
ぶんぶんと手を振れば、ボクたちに気付いたティムが、ぱっと表情を明るくし、片手を上げて走り寄ってきました。
「応援に来てくれたの?嬉しいなあ!
当たり前なんだけど、みんな好戦的でね。なんていうか……ピリピリしているんだよね」
「それはそうでしょう。騎士を目指す方からしたら、将来がかかっているんだもの」
「だよね。そんな中に僕って、場違いじゃないのかな?
ウエイン様には申し訳ないけど、見込み違いだと思うんだよね。
みんなが来てくれたのは心強いけど、でも、本当にあんまり期待しないでね?
僕、騎士を目指しているわけじゃないから最低限の手合わせくらいしかしたことないし、本気で打ち合ったことはもちろん、試合なんてしたことないから。
いくらウエイン様の指導を受けたといっても、一か月程度でどうにかなるものではないと思うんだよね……。
そりゃあせっかくだから試合に出てはみたいよ?でも出るとしても来年からのつもりだったし」
へにょりと眉を下げて首を撫でております。
「ええ?そうなのですか?でも、自分で大会エントリーしたのでしょう?」
「……ウエイン様だよ」
「え?」
「ウエイン様が『とりあえず強くなるには経験を積むのが一番だ!習うより慣れよ、な!試合申し込んどいたから。俺のとこまで勝ち進んで来いよ!』って………」
しーん。
クラスメートが恐る恐る口にした。
「いや、ウエイン様って最終シードだろ……?ラスボスみたいなものじゃあ………」
「そうだね。最終シードだね……」
遠い目、かつ諦めきった声でした。
が、がんばれティム!
上級生が大半を占める武術大会でなんというハードルの高さ!
意外にもウエイン様ってばスパルタ?!
ティムの出番は第三試合。対戦相手は2年生、ひとつ先輩です。
ティムと違う意味で体格が良く(主に横の方向に)、重量級。全身余すところなく頑丈なアーマーに覆われております。
これではダメージを与えるのは難しそう。
構える武器はウエイン様と同じ両手剣。幅も広く、長さもあります。当たりでもしたらひとたまりもありません!
「ティム、大丈夫でしょうか?」
ハラハラと見守れば、リオが相手を見極めるかのようにスッと目を細めました。
「……相手は大したこと無さそうだよ?
あのアーマーじゃあ、動きが相当制限されるはず。
確かに当たれば威力抜群。でもティムは動きやすいようにあえて腕周りのアーマーを軽量化しているよね?
第一打を避けることさえできれば、勝算はある」
「はい。ウエイン様の剣筋を間近で見ていたはずですし、こう言ってはなんですが、あのお相手程度ならば動きを見切ることができますよ、きっと」
なるほど。そう考えれば、なまじ軽量級の人よりも動きが大きな分、戦い易いのかもしれません。
「ティムーー!頑張れーーっ!!」
「落ち付いて相手をよく見ろ!そうすりゃ勝てる!!」
「いけーっティム!」
ボクたちの予想通り、お相手の動きは大振りなもの。
ティムは第一打をサッと躱して上に飛び、片手剣をお相手の腕に叩きつけました!
ガッキーン!!
金属同士がぶつかるものすごい音とともに、相手の手から剣が離れます。
おお!
す、すごい迫力!!
正面からではなく真上から体重と遠心力を利用して叩き込まれた衝撃が、頑丈なアーマーを通してすらお相手の腕を痺れさせたのです。
ティムってばあんなに細いのにどこにそんな力があるのでしょうか?
さすがウエイン様が見込んだだけのことはあります!
ボクたちとティム本人の予想をよそに、ティムは着々と勝利を重ね。なんと最終シードにまで勝ち残ってしまいました。
「だから僕、騎士科に行くつもりはないんですって!さりげなあくここまででフェードアウトできるはずだったのに……!
これ、下手に残ったら目を付けられますよね?これ以上囲い込まれたくないんだけど!」
ですよねー。
元々ウエイン様に無理やり稽古をつけられたようなものですし、しぶしぶ稽古した理由だって「妹たちを護るために」ですものね。
「いや、ここまでこれたんだから、ティムには騎士科の方が向いてるんじゃないのか?」
「あのウエイン様が見出した逸材ですもの。ここまできた時点で才能は証明されておりますわよね?」
可哀想なティム。
勝手に将来が決められていきます。
「ちょっと、みんな誰の味方なの?
僕は領地が大好きなんだけど?!騎士団なんで入るつもりないんだってば!」
えっと。
そのお……。
ここまで実力を見せられてしまいますと、ね?
騎士団か、アイク様の護衛あたりに収まるのも良いのではないでしょうか?
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