舞踏会
武闘会に全く関係のない生徒、いわゆる文官系の家門の生徒が楽しみにしているのは、武闘大会の晩に行われる入賞者褒章授与を兼ねた舞踏会。
こちらの方に懸けているのは、いわゆるご令嬢たち。もしくは夫夫を狙うご令息。
この舞踏会は、通常の社交とは違い「学園の中で行われるもの」のため、参加できるのは学生だけ。
でも例外があって、学生以外の婚約者がいた場合「エスコート役」として参加が許されるのです。
つまり「婚約者がいるかいないか」がものすごく分かりやすいの。
なので、エスコート役がいない人=婚約者募集中、という図式が成り立つ。
同じ学園生同士、しかもダンスという名目もあって比較的声をかけやすいため、この舞踏会をきっかけにお付き合いを始める方が多いのですって。
それに、意中の相手がいる場合、舞踏会の前に「エスコートしてもよろしいですか?」「エスコートしていただけませんか?」という形でお誘いをかけることもできる。
舞踏会はいわば「学校公認の婚活パーティー」でもあるのです!
まだ婚約するつもりがない場合は、友人同士、兄弟同士でエスコートすることも可能だそうなのですが……。
ボクの場合、兄弟同士というのは無理そうです。
というのも、お兄様は「婚約解消前提」だと仰ってはおりますが、一応は婚約者がおります。しかも皇太子殿下ですし、アイク様のエスコートで参加されることになるでしょう。
とりあえず、ウエイン様とか、ティムくんあたりに声をかけてみようと思っております。
婚約者探しとか興味無さそうですしね。
リオはね、兄弟で参加するのですって。
校内案内で少しは兄弟仲が改善されたのでしょうか?良かったね、リオ!
衣装は制服でもいいのだけれど、ほとんどの生徒が自分で用意した衣装で参加するそうです。
少しでもカッコよく、可愛くなりたいですものね。分かります
ボクの衣装はお兄様が用意してくださいました。
兄弟なのでお揃いです。
ボクの衣装は瞳の色である水色を基調に、お兄様の色である銀糸のツタの刺繍が入ったもの。胸のおリボンは濃紺です。
お兄様の衣装はお兄様の瞳の色である濃紺を基調にボクの髪の色である金糸でツタの刺繍が入っております。おリボンではなく水色のクラバット。
お兄様が身に着けると水色もとってもクールに見えます。素敵!
婚約者でもないのにお揃いでいいのかな、とちょっと気になったのですが、兄弟だから問題ないのですって。
えへへ。嬉しいな。
「エスコートを頼むのであれば、ティムが良いと思うぞ。彼ならば私も安心だ。当日の急な変更にも対応してくれそうだしな。私から彼に話をしておこう」
「ボク、自分で頼めますよ?」
「いや。可愛いクリスのことだからな。兄として私が頼みたいのだ」
こうしてボクの初めての武闘会(こちらは応援参加です)と、舞踏会の準備は着々と進んだのでした。
そんなこんなで、当日です。
お父様とお母様、そしてずらりと並んだ使用人さんたちに送り出してくれました。
「ジル、お前ならきっと勝利するだろう。だが、怪我の無いよう気を付けるのだぞ?」
「そうね。無理はしないでね?勝利はもちろん嬉しいし応援しているわ。
でも、名誉よりなにより、無事に帰ってくれること。それが一番なのですからね。
クリス、お兄様をよろしくね?舞踏会でも、お兄様かお相手の方から離れないようになさい。分かった?」
「はい!任せてください!しっかりと応援しますし、お兄様のお怪我がないようお祈りします!」
「ご心配なさらずとも大丈夫ですよ。最善を尽くしてまいります。
クリスのこともしっかりと守りますのでご安心を。
行ってまいります」
「さあ、行こうか」
「はい!では、行ってきます!」
当事者であるお兄様はいつも通りの落ち着いた様子。
応援人のボクの方が全く落ち着けません。
だって、お兄様の試合用に誂えたアーマーを見るのは今日が初めてなのです(当日のお楽しみ、と見せて頂けませんでした)
ちなみにアーマーはそれぞれが特性に合わせて特注したものを使用します。
動きやすさ重視の軽量型もあれば、打撃を防ぐことの身に特化したガッチガチの鎧タイプもあるそうで、それを見るだけでも十分楽しいのだそうです。
人によっては模様を彫りこむなどの装飾を施したり、宝石を埋め込んで家門の権力を誇示したり。
逆にほぼ胸当てくらいの軽装で「そのようなものは必要ない」と自分の武力を誇示することもあるのですって。
アーマー選びの段階から、心理戦が始まっているのですね。
ああ、お兄様が選ばれたのは、どんなアーマーなのでしょう?
軽量タイプでしょうか?胸当てだけでも、お兄様の身から溢れ出る高貴な輝きはどんな豪奢なアーマーにも勝ることでしょう。
絶対に絶対に絶対にカッコいいに決まっています!
そのお姿を想像しただけで……!もう、じっとしてなんていられないのです!
こそりとお兄様を見て、によによ。
またチラリと見てはによによ。
妄想が止まりません。
「く…っ」
口元を押さえてお兄様が吹き出します。
「クリス、私の顔が珍しいか?もっと近くで見ても良いのだぞ?」
バレていました!なんてこと!
「ほら、おいで?」
ひょいっと抱えあげられ、お膝の上に乗せられてしまいました。
「初めての舞踏会で緊張しているのか?ティムのエスコートであっても、すぐに私と合流すればよい」
「い、いえ!あの、合流は嬉しいのですが、あの、それで落ち着かないのではなく、えっと……試合に出るお兄様の素晴らしきお姿やご活躍を想像してしまって……。
どのようなアーマーなのかとっても楽しみです!色は何色?全身を覆うタイプですか?それとも軽量型?
ああ、どんなアーマーでもとても凛々しいのでしょうね!お兄様がまるで舞うように優雅に戦われるお姿が目に浮かびます!
あ!でも、でも、怪我だけはなさらないでくださいね!どんな英雄であれ不測の事態というものはございますし。その場合は負けてもしかたがありませんので!
いえ、もちろん勝利を確信しているのですが、それでも万が一ということもありますし。お身体の安全を優先に!!
最終的にはウエイン様との勝負になるのでしょうか?お兄様なら絶対に勝てます!だってお兄様はとっても努力家ですしお強いので!
ああ!とってもカッコいいに違いありません!みんなお兄様のファンになってしまいますね。
ふふふ」
ご拝読頂きありがとうございます♡
イイネやコメントなどのリアクションを頂ければとってもとっても嬉しいです!
お優しいお言葉ですと作者のモチベーションが爆上がりして踊り狂います。




