4いりません
「真珠さんのおかげでよい買い物ができました。真珠さんは何か買いたいものはありませんか?」
「いえ、私は特に」
「これとかどうですか?真珠さん」
「どうと言われても、私は、アクセサリー類はつけないので別にいらな」
「そう言わないで、着けてみてください。真珠さんにお似合いだと思いますよ。ねえ、店員さん」
「お連れ様のおっしゃる通り、よくお似合いだと思います。こちらのネックレスはただいまセール中でして、お安くなっていますよ」
服屋を出た私たちは、ショッピングモール内を散策していた。私は特に買うものはなかったので、彼の欲しいものを見て回る感じだと思っていたが、違ったらしい。彼は私をアクセサリーショップに案内した。そして、私に似合うアクセサリーを選んでくれるようだ。
「じゃあ、こちらのネックレスを購入でお願いし」
「ま、待ってください!」
彼に話した通り、私は基本的にアクセサリーを身に着ける習慣がない。モデル時代も、撮影の時に着ける程度で、普段の私服では一切着けることがなった。今更、そのスタイルを変えろと言われても、困ってしまう。私の意思を聞かずに勝手に購入を決めようとしている彼に、慌てて待ったをかける。
「どうしました?お金の心配なら、大丈夫だと先ほど言ったはずですけど」
「いえ、お金の問題ではなく、そもそも、私はアクセサリーをつけないので、いりません」
「どうしてですか?真珠さんがお金を払う訳ではなく、僕が真珠さんに買ってあげたいと思っているのですが」
「だから、着けないと」
「買っていただけるというのなら、素直に頂いたらよろしいかと」
私たちの会話を聞いていた女性店員が、ニコニコしながら、ネックレスの購入を勧めてくる。
「正直に言うと、私はこので、デザインが好きではありません。どうせ買ってくれるのなら、こ、こちらの方がうれしいです」
こうなったら、やけくそである。そもそも、彼が選んだネックレスが私は好みではなかった。ネックレスのヘッドにウサギがついているのだが、どうにも子供じみていた。私の顔に似合わない。値段も買ってもらうにしては高すぎる。
彼にいらない理由を言っても、あきらめてくれないだろう。だからこそ、私は妥協案として、店のショーケースに並ぶネックレスの中から、自分の好きなデザインを提示した。ヘッドが蝶をモチーフにしていて、普段見かけたことがなく新鮮だった。これなら、普段使いしてもオシャレに使えるだろう。
「こちらも当店でかなり人気の商品になりますね。試着してみますか?」
「いえ、大丈夫で」
「先ほどのネックレスはキャンセルで、こちらの購入に変更でも構いませんか?彼女が迷惑を言ってすみません」
「かしこまりました。こちらの蝶のモチーフのネックレスですね。税込み15,400円となります」
「カードの一括でお願いします」
「かしこまりました」
結局、私がとっさに選んだネックレスを彼は私の為に購入してくれた。とはいえ、私が欲しいと言ったわけではない。しかし、この状況を見たら、私が欲しがったように見えるだろう。私の給料は低い方だが、他人にすがるほどお金に困っているわけではない。
「ネックレス、ありがとうございました」
「一緒に買物に付き合ってくれたお礼です。気にしないでください」
アクセサリーショップを出ると、ちょうど予約していた夕食の時間まで1時間ほどとなっていた。確か、予約した店はここから電車で30分程かかるはずだ。そろそろモールを出て店に向かった方がいいだろう。
「そろそろ、予約したお店に行きましょう」
「ソウデスネ」
彼も同じことを考えていたらしい。私たちはモールを出て店に向かうため、再び電車に乗ることにした。