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14私にはもったいない

「それっていったい……」


「連れて来たよー。あれ、何か話の途中だった?」


 私が弟に質問の意味を問いかけようとしたが、アリアさんが玄関から戻ってきたことで中断された。アリアさんの後ろには、アリアさんが助っ人して呼んだ【私に紹介したい男性】が立っていた。


「紹介したい男性って……。ルリさん、だったんですか」


 アリアさんが呼んだのは、弟と同様の超人気モデルのルリだった。弟のダイヤは、私とよく似た中性的な容姿を売りにしていたが、ルリは身長が183cmと高く、すらりとした体躯に適度な筋肉がついていて、セクシーさを売りにしていた。弟とは違う路線で人気となっている。 


 弟のダイヤは私と同じ吊り目できつい印象を受けがちだが、ルリは切れ長の瞳を細めた柔らかい笑みで読者を魅了している。右目の下のほくろも相まって、大人の印象を与え、そこが魅力の一つとなっていた。


「良かった。お姉さんも知っていて助かりました。もし、知らないなんて言われたらどうしようかと思ってました。ルリ、自己紹介よろしく。今回の件で重要なのは、あんたの演技力なんだから」


「いきなりすぎるだろ。まず、真珠さんが俺と一緒に行動するのが嫌だったらどうする?そもそも、仮とはいえ、俺と恋人の振りをするなんて俺は反対だ」


「姉さんじゃあ、不満ってわけか?お前今、フリーだったよな?」


「そうだけど、それとこれとは話が別だ」


 何やら、ルリさんと弟たちの雰囲気がよろしくない。ルリさんは丁寧な言葉遣いをしている印象があったので、砕けた話し方をしているルリさんは意外だった。


 それにしても、アリアさんは既に私の離婚の問題をルリさんに話していたようだ。ルリさんは私の心配をしているみたいだが、心配するのはご自身の方ではないか。


「あ、あの。さすがに超人気モデルのルリさんを恋人役にするのは」


 ファンの人にご迷惑が。


「ルリじゃダメでした?真珠さんと釣り合う人間を探すにあたり、身近なところから連れてきたんですけど。確かに容姿は完ぺきだけど、性格が少しナヨナヨしているところがあるかもしれないですね」


「現状、ルリより良い男となると、僕、くらいしか思いつかないし、もっと姉さんにふさわしい奴を探すにしても時間が」


「真珠さん、すみません。僕なんかが恋人役は、やはり不満ですよね?」


 なぜ、私が彼を振ったみたいな感じになっているのか。私はただ、超人気モデルのルリが私の仮とはいえ、恋人関係になるのは分不相応だと言いたいだけなのに。モデルなら、彼のファンの女性たちもきっと多いはずだ。そんな彼女たちのお眼鏡にかなうような恋人が彼の隣にふさわしい。


 そもそも、今回の助っ人というのもおかしな話だ。赤の他人のルリさんを巻き込んでしまうのはさすがに心苦しい。


(ルリさんの隣には、私みたいな人間より、自信に満ち溢れた人がいい)


「まあ、せっかく来てくれたし、今夜は泊っていくでしょ?このまま帰らせるのはさすがに申し訳ないし」


「そうだな。ちょうど、僕が作った肉じゃが大量に余っているし。明日、みんなで食べよう」


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」


 ルリは謙虚な性格のようだ。しっかりと頭を下げる。心なしか、弟のダイヤの「肉じゃが」という言葉に嬉しそうな顔を見せた気がした。



「ルリ、その性格、悪くはないけど、もっとワイルドになりなよ。その容姿で謙虚で律儀な性格はギャップ萌えでいいけどさ。事務所にも言われているんじゃないの?」


「別にいいだろ。僕は今のルリだから、こうして家に呼ぶまでの関係になったんだから」


 リビングのソファに私とダイヤ、その正面にアリアさんとルリさんが座る。アリアさんが気を利かせて、温かいルイボスティーを出してくれた。


 3人はかなり親しい関係のようだ。超人気モデルのダイヤとルリ。彼らに臆することなく、楽しそうに会話するアリアさん。この中で場違いな存在はただ一人。会話に参加できずにただ、淹れてくれたお茶を飲む。


「ねえ、ダイヤ。やっぱり、今日は泊りはなしで。家を掃除していないから、掃除しないと。彼は汚い部屋が嫌いだから」


 これ以上、この場に居てもむなしいだけだ。そもそも、私たち恋人同士の問題に弟を巻き込んだ私がおかしい。彼がいる家に戻りたくはないが、この場の空気間には耐えられない。私は弟の家を出るために、席を立とうと立ち上がった。

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