表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純情恋模様  作者: karinko
76/78

★42話 病室で★響side

♪~♪~


ちょうどオレがいつもと違う和泉の言葉に納得させられていた時。


突然和泉のケータイが鳴った。


「あっ!ちょっとごめんな!」


和泉はいつものようにへらへらと笑いながら、ポケットからケータイをとりだした。


…一応学校内ではケータイきっとけよ。


そうつっこもうと口を開きかけたが、


「…!!」


和泉の顔から笑顔がきえ、戸惑ったような顔つきになったのを見てオレは口を閉じた。


「…どうしたんだよ??」


和泉はオレの問いを無視してすばやく電話に応じる。


「もしもし!」


必死の形相でケータイ電話に耳を押し付ける和泉。


「うん…うん…。……えっ……!」


和泉の顔から血の気がひいた。


手に力がなくなり、だらんと垂れさがる。


まだ通話中と表示されたケータイが音を立てて床におちた。


「おい!!どうしたんだよ!!」


オレはぼんやりと立ち尽くす和泉の肩を揺さぶった。


和泉は気がついたのかびくっと反応する。


「あ…いや、なんもない!」


和泉は笑顔で首を振った。


それはオレにもはっきりと分かるほどぎこちなくつくられた笑顔だった。


「…ごめん。オレもう帰るわ!!」


和泉はオレに背を向けると、慌ただしく教室をでていった。


「おい!和泉!」


思わず和泉のあとを追う。


別にあいつのことはどうでもいいけど…でも、どう考えてもあの様子は普通じゃなかった。


何があったんだ……!?




和泉は学校の近くの病院に入っていった。


これ以上ついていっていいのかと戸惑ったが、ここまでついてきておいて帰るわけにはいかない。


オレはそのまま和泉についていった。


和泉は病院の中であるにもかかわらず廊下をすごい速さで走る。


そして緊急治療室とかかれた部屋のドアを勢いよく開けた。


「奏!!」


病室にいた人たちの視線が和泉に集中する。


病室にはなんとなく天音ににた夫婦がいた。


そして真ん中のベッドの上には少女が医者に囲まれて横たわっていた。


「蒼…!鈴は?」


天音に似ている夫婦の夫の方が和泉に尋ねた。


和泉は首を振ってベッドの上の少女にかけよる。


部屋の雰囲気からどうやら少女の命が危ないらしいということがわかった。


場違いなオレは出ていくにも出ていかずにぼんやりと和泉を見守る。


「奏!奏!」


和泉が声をかけると少女はゆっくりと目を開いた。


天音にそっくりな顔。


天音の兄弟…??


「……蒼??」


少女の手がゆっくりとあがる。


和泉はその手を握りしめた。


「うん、そうやで!オレや!」


少女はにっこりと笑った。


そして何かを探すように目を動かす。


「……鈴は??」


「鈴は…まだ…」


「そっか…」


少女は視線を和泉に戻した。


「蒼、ウチ、もう無理らしいわ……」


和泉の目が大きく見開かれる。


「無理…??無理ってどういう意味…??」


「…もう、鈴と…蒼と、一緒におられへん……」


「なんで…??そんなことない!ずっと一緒におるって約束したやん!」


少女は首を振った。


「ごめんなぁ、蒼。ウチ、蒼と鈴と…今まで一緒におれてほんま良かった。」


「今までって何?これからもずっと一緒やろ??」


和泉の声が震える。


頬には涙が光っていた。


少女の手がそっと和泉の頬に触れる。


「蒼…笑って。ウチ、蒼の笑ってる顔が一番好きやねんから…」


和泉は笑った。


やっぱりぎこちない笑顔。


それを見て少女も笑った。


「そう。ずっとそうやって笑ってて。ウチがおらんくなっても、蒼はずっと明るいままでおってな??」


「…うん。」


「それで…鈴を…幸せにして…あげて……?」


少しずつ少女の声がかすれていく。


「うん……。」


「や…くそく…やで??」


「うん………!!」


少女の目から涙がこぼれおちた。


「あ…お……最後にあえて…良かった……す…き…やで…??」


「うん……!オレも……!!」


少女はこの上なく幸せそうに笑うと、そっと目を閉じた。


和泉の手から少女の手がぬけおちる。


ピー………


無機質な機械の音が鳴った。


「……残念ですが。」


医者が小さな声で言う。


少女の両親だったのだろう夫婦が声をあげて泣き始めた。


オレはどうしていいかわからず、和泉に声をかけるのもためらわれてとりあえず外にでようとした。


その瞬間、病室のドアが勢いよく開いた。


「奏!!」


息を切らした天音の声。


後ろにはオレと同じで、気になってついてきたのだろう、詩織の姿があった。


病室の雰囲気から少女の死を感じ取ったのか、天音の顔が蒼白する。


「え……か…なで…????」


和泉がゆっくりと振り返った。


「蒼……お父さん、お母さん…奏は……??」


少女の…天音の母親は泣きじゃくりながら言った。


「おまえ…くるの遅いわ……!!」


「えっ……??」


「…………死んだよ。」


和泉が感情のない声で言った。


「……!!」


天音の目が大きく見開かれ、同時に大粒の涙がこぼれる。


「…ウソや……ウソやろ…!?」


「鈴さん……」


詩織が天音に声をかけようとした。


そんな詩織を制止する。


今は、オレ達が入っちゃいけない。


目でそう伝えると、詩織は納得したようだ。


和泉がゆっくりと天音に近寄ってきた。


天音はびくっと震えて和泉を見る。


「あ…お…??」


「鈴、何泣いてんねん!」


和泉はにっといつものように明るく笑った。


天音は少し固まって、そして和泉を怒鳴りつける。


「おまえは何笑ってんねん!奏が死んでんぞ!何で笑ってなんか……!」


和泉の笑顔から何かを感じ取ったのか、天音は口を閉じた。


「…奏は、オレ達が悲しむことを望んでない。だから、泣いたらあかん。」


「で…でも……」


涙が止まらないらしい天音を見て和泉は小さなため息をついた。


そして天音を抱きしめる。


…よく人前で………


と、そんなことは言えない雰囲気。


「んじゃ、オレが奏から見えへんようにかくしといたる。だから、さっさと泣きやめ」


「う…うん………!!」


天音は泣きやむどころか、さらに激しく泣き始めた。


和泉はそんな天音を抱きしめながら、力のこもった目でどこか遠くを見て、唇をかみしめていた。


お久しぶりです!

ひさびさに更新しました!

…といっても、久しぶりすぎて話の内容がつかめませんでした。

ということで急展開。

突然の奏の死。

重たい内容でごめんなさい…

次の話は、蒼の過去編になります……



今回全く響と詩織が活躍してませんね(;一_一)

特に、響がなぜあの場所にいるんだ、という疑問はスル―でお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ