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純情恋模様  作者: karinko
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☆39話 複雑な気持ち☆詩織side

「滝沢サンのことが、好きです」


ラベンダーがいっぱい咲いている公園。


私は自分の思いを口にした。


大きく目を見開く滝沢サン。


私は思いを伝えたかっただけ。


お付き合いしたいとか…そんなものじゃなくて…


滝沢サンに好きって伝えること。


それで十分だった。


だけど……


「オレもおまえが好きなんだから」


滝沢サンが顔を真っ赤に染めて言った。


うれしくて、


すごくうれしくて、


幸せな気持ちで胸がいっぱいになった。




「…ん」


私はゆっくりと上半身をおこした。


…夢??


ぼーっと空を見つめる。


すごく…


幸せな夢……


私、こんな夢を見るほどまでに滝沢サンのことを……


少し頬が熱くなる。


ぼんやりとしながら時計を見た。


時刻はもう9時。


私は慌てて飛び起きた。


もうこんな時間!!


急いで支度しないと!!


私は昨日のうちに準備しておいた服に着替えて、軽い朝食をとり、急いで家をでた。


私が記憶をなくしてから、数日がたち、今は夏休み。


鈴さんや碧さんともすっかり仲良くなって、今日は鈴さんと碧さんと滝沢サンと私の4人で海に行く。


現地で10時半に待ち合わせ。


それで滝沢サンと私は9時半に駅で待ち合わせているんですが…


私はチラッと時計を見た。


時刻はすでに9時25分。


やばいです…


これ、絶対遅れますよー…


私は走る速度を少し早めた。




駅につくと、すでに滝沢サンが待っていた。


「すいません!遅れてしまいました!!」


私はついてすぐにぺこりと頭をさげた。


「オレも今きたばっかだから大丈夫だよ」


ほんの少し微笑む滝沢サンに胸が強く鳴る。


結局私のせいで、乗る予定だった電車を乗り過ごしてしまった。


そのせいで、海に着いたのはちょうど11時。


鈴さんと碧さんは時間より早くついたみたいで、かなり待たせてしまったらしい。


「遅い!どんだけ待たせるんや!!」


「ったく…オレらはちゃんと5分前行動したっちゅーのに……」


はぁっと大きなため息をつく碧さん。


「ごめんなさい…私のせいなんです……」


ぺこりと頭をさげる。


「いや、違うで、詩織。おまえも悪いがそこまで悪くない」


碧さんはぽんっと私の肩を叩いた。


えっ??


私はきょとんと碧さんを見る。


「ほんまに悪いんはあいつや!!」


碧さんはびしっと滝沢サンを指さした。


「は?オレ??」


滝沢サンは驚いたようにきょとんと自分を指差す。


「そや!普通、時間どおりに彼女の家まで迎えに行くのが男とちゃうんか?ん??」


碧さんがからかうように言う。


そんな碧さんを鈴さんが思いきり叩いた。


「何言うとんねん!おまえ、寝坊せんようにってウチに家まで迎えにこさせてたやん!!」


「いや…それは…」


思わずぷっと吹き出す。


滝沢サンもあきれ顔で笑っていた。


そんな風に話しながら浜辺におりる。


浜辺にはもう人がいっぱいいた。


まあ、夏休みですからねー……


でもこんな中、場所とりが大変そうです……


「おい!なにしとんねん!こっちやこっち!!」


ぼんやりとしていると、碧さんが怒鳴るように言った。


見ると、すでに碧さんと鈴さんがほんの少しのスペースにシートを敷いて陣取りをしている。


は…早いです…!!


私と同じくぼんやりとしていた響くんもそれを見て唖然としている。


私達は顔を見合わせて笑いあった。





「よっしゃー!海や海!!泳ぐでー!!」


「何が『泳ぐでー!』や!おまえ泳がれへんやろ!?」


「細かいことは気にせーへんねん!」


鈴さんと碧さんは言い合いをしながら海の方に走っていった。


その様子を見ながら、滝沢サンはシートに腰を下ろす。


「滝沢サンは泳がないんですか??」


私が尋ねると滝沢サンは少し目を見開いた。


だけどすぐに目を細める。


その目が少し悲しそうに見えた。


「ん、まぁ…な。泳ぐのは苦手なんだ」


「そうですか…」


滝沢サンを1人でおいておくのも悪い気がしたので、私は滝沢サンの隣に座りこんだ。


「泳いできていいんだぞ?」


「え…でも……」


私がとまどっていると、滝沢サンは小さく微笑んだ。


「オレに気を使わなくてもいいから。行ってこいよ」


「そうですか…??じゃぁ…」


無理に気を使うと余計に滝沢サンに気を使わせてしまいそうで、私は鈴さん達の方へ向かった。


「あれ?響は泳がへんの??」


鈴さんが滝沢サンの方を見て不思議そうに言う。


「ええ、泳ぐの苦手らしいんです」


「アホやなー。泳がれへんくてもきたらいいのに。めっちゃ気持ちええのになぁ!」


碧さんはうきわでプカプカと浮きながら笑った。


そうですよね……


滝沢サンもうきわとかを使って入ればいいのに……


でも無理に進めるのもあれですし……


「あっ!それやったら、泳ぐのやめてビーチボールする??せっかくみんなできたんやしみんなで楽しみたいやん!!」


鈴さんがぽんっと手を叩いて言った。


「それもそうやな…よっしゃ!そうしよか!」


ということで、私達はビーチボールをすることにした。


滝沢サンはあんまり乗り気じゃなかったけど、しぶしぶとうなずいてくれた。


2対2で、グーパーでチームを決めた。


結果、


私と碧さん、鈴さんと滝沢サンチームになった。


なんだか以外なチームですが……


でもおもしろそうです!


私達がきていた海には、たまたま100円くらいで借りれるビーチボール用のネットがはってある場所があって、私達はそこを借りることにした。


「よっしゃ!じゃオレからいくで!」


碧さんがパシンッとボールを打つ。


ボールには結構勢いがついて、ネットをすれすれで飛び越えた。


碧さんうまいです!


これはいきなり1点とれるんじゃ…


けどそううまくは行かなくて、鈴さんがレシーブで簡単にそれを受け止めてしまった。


ボールがこっちに戻ってくる。


って…


私の方に向かってきてるじゃないですかー!!!


私は慌ててかまえた。


と、とりあえずレシーブですよね!!


ボールが私の手に当たる。


私はその手を思い切り振り上げた。


ボールは当然のように後ろに飛んでいく。


「…へ??」


みんなが唖然として私を見ていた。


「詩織…めっちゃヘタやん……」


碧さんがあきれたようにつぶやいた。


うう……


そんなにはっきりと言われると少し悲しくなります……


私が落ち込んでいると、碧さんはにかっと笑った。


「まぁええわ!オレにまかせとけ!」


「ごめんなさい…ありがとうございます……」


本当に申し訳ないです……


けど!


もし次私にボールがきたら今度こそ迷惑をかけません!


そう誓うも、やっぱりその後も私はミスばかり。


だけど碧さんはものすごくうまくて、ほとんど1人で2人の相手をしていた。


私はぼんやりとその様子を眺める。


私の目は自然と滝沢サンの方に向かっていた。


滝沢サン…


すごくうまいですね……


鈴さんもすごくうまいですが、ほとんど滝沢サンがとってるみたいな感じです……


「響!」


鈴さんが滝沢サンにトスをあげる。


「ん」


滝沢サンはポンっとそれを軽く打った。


…軽く打ったように見えた。


だけどボールはすごい早さで私達のコートに突っ込んできて、碧さんが反応する間もなく地面についた。


「響!ナイスや!」


鈴さんが笑顔でぽんっと滝沢サンの肩を叩く。


滝沢サンは鈴さんに向けてにっと笑った。


ムッ……


小さな怒りを覚える。


そして同時にほんの少しのことでも嫉妬してしまう自分が嫌になった。




ビーチボールを終えると、あたりはすっかり暗くなっていた。


「どうしましょう?もう帰りますか??」


「いや、まだや。まだオレ達にはやらなあかんことがある」


碧さんが腕組みをして言った。


私達は首をかしげる。


「まだ花火してへん」


だけど碧さんの一言で唖然とする。


「おまえバカだろ?もう帰らねぇと……」


滝沢サンはため息をつきながら言った。


「いや、でもしようや!夏休みくらい帰んの遅くなってもええやろ!?ウチら高校生やし!」


鈴さんが目をキラキラとさせる。


「いや、でもな…」


滝沢サンは同意を求めるように私を見た。


うーん……


たしかにそろそろ帰らなければいけませんが…


「大丈夫ですよ!やりましょう!」


怒られることなんかよりももっと遊びたい気持ちの方が強かった。


「おまえもかよ……」


滝沢サンはあきれ顔になる。


「まぁええやん!ここは空気読もな!んじゃオレ近くのコンビニで花火買ってくるわ!」


「あっ!ウチも行くー!!」


そう言って鈴さんと碧さんはさっさと花火を買いに行ってしまった。


私と滝沢さんだけが2人浜辺に取り残される。


「あー…もういいや。あとで一樹に何言われるか……」


滝沢サンはぶつぶつ言いながらその場に座り込んだ。


私もその隣に座りこむ。


「まぁいいじゃないですか!1日くらい大丈夫ですよ!」


「そうか??」


滝沢さんは苦笑いする。


私達はしばらくぼんやりと海を見つめていた。


すごく幸せな時間。


だけどその時間を私は自ら壊してしまう。


「あ、そういえば!私、今日変な夢みたんですよー」


「変な夢?」


私は今日見た夢を滝沢サンに話した。


滝沢サンは驚いたように私を見る。


や、やっぱり、勝手にそんな妄想みたいな夢を見られて嫌だったでしょうか!?


私は慌てて弁解しようとした。


「いや!その!けどこれは夢であって…私はべ…!!」


突然滝沢サンが私を抱きしめた。


驚いて、思わず言葉を飲み込む。


心臓がドキドキと早鐘のように鳴り響いた。


「それ…夢じゃねぇよ……」


「へ…??」


夢じゃないって……??


滝沢サンの私を抱きしめる手が強くなった。


「記憶…戻ってきてんだな……!!」


うれしそうな声。


私を抱きしめる強さ。


それで私は悟った。


そうなんですね…


きっと…


今日私が見た夢は……


私の…なくした記憶……


良かった。


私は記憶をとりもどしてきているってことですよね。


いいこと…そのはずなのに……


どうしてこんなに悲しいんでしょうか……??


それはきっと、記憶が戻るのが怖いから。


記憶が戻ってしまうと、私の知らない私が、今の私をかき消してしまいそうで……


私はその気持ちをまぎらわせたくて、滝沢サンの目を見た。


「キス…してください……」


滝沢さんの目が一瞬見開かれた。


私は驚く滝沢サンを無視して目を閉じる。


唇に温かい物が触れた。


私はそれに自分の唇をおしつける。


自然と滝沢サンの背中に手をまわしていた。


「詩織……」


息継ぎの合間に滝沢サンが私の名前を呼ぶ。


だけど滝沢サンが呼んでいるのは私じゃない。


滝沢サンが呼んでいるのは私の知らない私。


私じゃ……ない。


記憶が戻れば私はちゃんと滝沢サンに愛してもらえるんでしょうか??


……きっと前の私も滝沢サンのことが大好きだったんでしょうね。


だけど…


絶対に今の私の方が滝沢サンを想う気持ちは大きいに決まってる。


記憶が戻ったら…


この気持ちまで、かき消されてしまうんでしょうか……??


どうしてもそんな考えが頭を支配する。


私はそんな考えを必死に振り払おうと、滝沢サンの唇に自分のそれを強く強くおしつけた。


切なくて…悲しいキス。


だけど今の私はそれに夢中になるしかなかった。


「詩織ー!響ー!花火買ってきたでー!!」


突然碧さんの元気な声が聞こえて、私達は思わずビクッと体を震わせた。


滝沢サンがすばやく私から離れる。


「あれ?もしかして今キスしてた??」


私達の方にかけよってきた鈴さんがにやにやとしながら聞いていた。


「してねぇよ!」


滝沢サンが頬を染めながら否定する。


「嘘や!絶対してたわ!」


碧さんもにやにやと言った。


「だからしてないって!なぁっ!?」


滝沢サンは同意を求めて私を見た。


私も首を縦にふる。


「もう~!照れんでもええのに~!」


「ホンマらぶらぶやんなぁ~!」


2人にからかわれて、私はなんとか苦笑いした。


その後の花火。


打ち上げ花火やネズミ花火などで盛り上がったあと、4人で線香花火をした。


「誰が一番長くもつか勝負や!」


碧さんの提案で、真剣に線香花火の火を見つめる。


シーンと静まりかえる中、私は線香花火の火を見つめながら思った。


線香花火って…


すごくはかないですよね……


すぐに消え落ちてしまう………


私もこの線香花火と同じ。


記憶が戻れば、私は消えてしまう。


滝沢サンへの想いもぬりかえられてしまう……


それだけは嫌なのに…


私にはどうすることもできない……

サブタイトルなんだかな~。

まぁ響sideでも同じサブタイトルになるのでいいものを思いつきませんでした…

前半と後半の温度差が激しい…

鈴と碧はあいかわらず明るいですけど(^_^;)

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