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純情恋模様  作者: karinko
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☆38話 転校生☆詩織side

「どうしましょう…すごく不安です…」


私は自分のクラスだったらしい教室の前でつぶやいた。


「大丈夫だって。おまえの友達もいるんだから」


隣で滝沢サンが私を励ましてくれる。


友達と言っても……


みんな忘れちゃってますよー……


私は昨日退院して、今学校に来ている。


お医者さんのお話では普段通りの生活をしているうちに記憶が戻る可能性があるからだそうですが…


やっぱり私にとっては全然知らない学校。


クラスの人も、友達も、みんな知らない人。


この学校に知り合いは滝沢サンしかいない。


その滝沢サンともクラスは違うようだし……


私は助けを求めるように滝沢サンをみた。


「大丈夫。休み時間になったらオレのとこにきたらいい」


滝沢サンはそういって私に微笑んだ。


とくん…


少し心臓が鳴る。


「はい…」


私は頬が染まるのを隠すように下を向き、教室のドアに手をかけた。


「それでは…またあとで」


「ん、じゃぁな」


滝沢サンは私に背を向けて自分のクラスの方に歩きだした。


私も勇気をだして教室のドアをあける。


「詩織!」


「詩織ちゃん!」


教室に入るのと同時に2人の女の子が私の方にかけよってきた。


「大丈夫??心配したんだよ!?」


ふんわりとした髪の女の子が心配そうな表情で言った。


「はい…大丈夫ですけど…」


「もう!心配させないでよね!でも大丈夫そうみたい。良かった」


大人っぽい顔の女の子はほっと溜息をついて笑った。


…ええと。


この人達は私の友達なんでしょうか…??


「あの…その、本当に申し訳ないんですけど……」


私は戸惑いながら言った。


2人はきょとんとして私を見る。


「その、私記憶喪失…らしいんです。だからその…お2人のことを覚えていないというか…」


「「え…!?」」


2人は同時に息をのんだ。


「そ、そうなんだ…記憶…喪失ね…」


「それは大変だね…あっ!分からないことあったら何でも私達に聞いてね!私達は詩織ちゃんの友達だから!!」


ふんわりとした髪の女の子がにっこりと笑ってそう言ってくれた。


「は、はい…!!」


良かった…


少し安心しました。


この人達は私の友達だったらしいですし…


少しだけ心強くなった気がします。


どうやらふんわりとした髪の女の子は中川楓ちゃん。


そして大人っぽい顔の女の子は鳥山優香ちゃんだそうです。


2人と話しているうちにチャイムが鳴って、私はとりあえず自分の席らしい席についた。


しばらくして見覚えのない先生が入ってくる。


先生は私を見るなり顔を輝かせた。


「おっ!望月!もう大丈夫なのか??」


「は、はい…」


私はとりあえずおずおずとうなずく。


先生は教室のみんなに私が記憶喪失だということを伝えて、コホンと咳をした。


「それじゃ別の話だ。このクラスに転入生が入ることになった」


クラスが少しざわめく。


先生は手を叩いてそれを制した。


「静かに。それじゃ、入れ」


教室のドアがあいて、女の子が入ってくる。


教室がまた少しざわめいた。


入ってきたのはショートカットの男の子みたいな女の子。


顔立ちもきりっとしてて、可愛いというよりかっこいい感じの女の子だった。


「えっと、それじゃ自己紹介してもらおうかな」


先生がそう言うと、女の子はうなずいてすぅっと大きく息を吸い込んだ。


そしてすごく大きな声を張り上げる。


「大阪からきた天音鈴や!!みんな、よろしくな!!」


こ、声でかすぎです…!!


女の子は呆然としている教室を見回すと頭をかきながら苦笑いした。


「ええと…なんかはずしてもうたみたいで…悪いな。まぁウチも緊張してるってことで許してな!」


鈴さんはケラケラと笑うと、先生の方に向き直った。


「んで!ウチの席はどこや??」


「あ、ああ。そうだな…じゃ、望月の後ろな」


えっ!?私の後ろですか!?


ま、まぁ…


別にいいんですけど…


鈴さんは私の方に近寄ってきてにっと私に笑いかけた。


「よろしくな!」


「は、はい…」


えっと…


すごく明るい人ですね…


まぁこういう人は嫌いではありませんけど。


そう思い、私はくすっと笑った。




「なぁ、あんた名前なんて言うん??」


休み時間、いきなり鈴さんが私に話しかけてきた。


「望月詩織です!よろしくお願いします!」


そう言って鈴さんに頭をさげる。


「よろしく!んで、聞いたで。詩織って今記憶喪失なってんやろ??」


鈴さんはそういうとまじまじと私を見た。


「ウチ…記憶喪失の人見たのって初めてや。どんな感じなん?」


「どんな感じ…ですか??」


そう聞かれてもですね……


私だって自分が記憶喪失だなんてまだ理解しきれていないんですから…


「そうですね…あえて言ったら、私の中ではまだ私は中学3年生なんですよ」


「中三??」


私はこくりとうなずいた。


「へー…そういうもんなんや。なんかすごいな…」


鈴さんは感心したように言うと突然にこっと笑った。


「んじゃ詩織もこの高校初めてって感じってことやんな!じゃウチと同じやん!」


「そう言えば…そうですね」


たしかに私も今転校生みたいなものですし…


「なんかうれしいわ!ウチ、詩織とは良い友達になれそうや!」


「ですね!よろしくです」


私達は顔を見合わせてにっこりと笑いあった。


そして昼休み。


私は鈴さんに誘われて一緒にお昼を食べていた。


本当は滝沢サンに一緒に食べていただくつもりだったんですけど…


だけど滝沢サンに頼ってばかりじゃ申し訳ありませんし、


私も早く新しいお友達を作らないといけないですからね!!


「ウチ、ここきてホンマびっくりしてん……だってしゃべり方とか全然ちゃうねんもん!標準語ってなんかウチうけつけへんわ…」


「そうですか??私的にはこれが普通ですよ??」


「なんでや!ウチ、こんなに標準語ばっかの学校初めてやわ。ここは珍しい学校やなぁ」


鈴さんはしみじみとした風に言った。


いや、まず私は関西弁の方が何か珍しいような気がしますが……


まぁ、やっぱりそれは地方によって違うものなんですね。


と、そんな風に鈴さんとのおしゃべりに盛り上がっていたとき、


「おい、詩織!」


突然声をかけられた。


「滝沢サン??」


気がつくと滝沢サンがすぐそばに立っていた。


ふいに目に入った姿に、少しだけ心臓が強く鳴る。


滝沢サンはじっと私を見て、小さな息をついた。


「なんだ。別に普通だな」


??


なんで突然そんなことを言うんでしょうか…??


私が首をかしげていると、鈴さんが目を輝かせた。


「うわっ!この人めっちゃかっこええやん!誰!?もしかして詩織の彼氏!?」


「いや、その…」


彼氏というか……


いや、そうなんですけど…


私は返答に困って滝沢サンの方を見た。


滝沢サンはあらかさまに嫌そうな顔。


そ、そうですね…


滝沢サン、鈴さんみたいなタイプ、苦手な感じですもんね……


「おっ!鈴!おまえ、このクラスやったんか!!」


なんだか変な空気になっているなか、突然明るい声がした。


鈴さんが顔を輝かせる。


「碧!」


鈴さんの視線の先には迷彩模様のバンダナを頭にまいた金髪の男の子がいた。


その男の子はつり目で整った顔立ちの、明るそうな風貌をしていた。


…えっと、


鈴さんの知り合いでしょうか…??


というか…


この人も、関西弁……??


「和泉……」


滝沢サンは男の子の方を見て、鈴さんの時よりももっと嫌そうな顔をした。


「なんや!鈴のとこいくんやったら声かけてや!オレら友達やろ??」


その人…ええと、和泉…碧さん?…は、滝沢サンの肩をぽんぽんと叩いた。


滝沢サンは更に顔をゆがませる。


「えっ!?碧、詩織の彼氏と友達なったん!?」


鈴さんが驚いたように言った。


なんだか勝手に彼氏ってことになってます…


…まぁ、私はそれの方がうれしいんですけど。


というか、もともとは彼氏だったんですから、記憶がなくなったからって関係が変わるってことはないですよね…??


私は少し心配して滝沢サンの方を見た。


だけど滝沢サンは特に否定するつもりはないようだ。


私はほっとして、小さく微笑んだ。


…良かった。


記憶がなくても、私は滝沢サンの彼女で良いってことですよね……??


「え?この子、響の彼女!?めっちゃ可愛いやん!ってか、なんかすごい偶然やな!お互い同じカップルの友達なるとかな!!」


「やんなぁ!それめっちゃ思ったわぁ!!」


鈴さんと碧さんは2人で盛り上がり始めた。


う、うーん…


ちょっと、私このノリにはついていけないというか……


「詩織、あいつと友達なのか…??」


響くんは鈴さんを見て、私にこそっと言った。


「え、ええ。まぁ……」


私は苦笑いで答える。


ちょっと明るすぎるところもありますが……


鈴さんは良い人そうですし……


「あっ!そういやオレ、響の彼女に自己紹介してへんかったよな??」


碧さんは私の方に向き直ってにっと笑った。


「鈴と一緒に転校してきた和泉碧や!!よろしくな!!」


「は、はい。よろしくおねがいします」


私は一応軽く頭を下げた。


そして小さな疑問をぶつける。


「…というか、鈴さんと碧さんはどちらも大阪からきたんですよね??もしかして双子ですか??」


だって偶然友達どうしが同じ所に転校してくるのって考えにくいですし…


でも、あんまり似てはいないようですが……


「双子…双子、とちゃうよ」


一瞬、碧さんの顔がくもった気がした。


だけどすぐに明るい表情に変わる。


「ただの幼馴染や!両親が仲良くてなぁ!オレのオトンが転勤なって、んで鈴んとこのオトンがさびしいゆうてな、ついてきよったんや!」


「はぁ!?違うで!!おまえのオトンがさびしいからついてこいゆうたんや!!」


すかさず鈴さんが訂正する。


碧さんはケラケラと笑いながら言った。


「まぁどっちでもええやん!とりあえず鈴の友達はオレの友達や!ええと……」


碧さんはうかがうように私を見た。


「望月詩織です」


「そうか!じゃ、詩織!仲良くしてな!」


碧さんはそう言ってにっと私に笑いかけた。


「はい!」


私もにっこりと笑顔を返す。


記憶をなくしてからの、初めての学校。


だけどすぐに私と同じような友達ができた。


とりあえず、この先の学校生活…


不安も多いですが、がんばっていけそうです。


私はそう感じて、小さく微笑んだ。

また新しいキャラ登場させました!

関西弁キャラですね!特徴は無駄に明るいことです!

実はこの2人にはいろいろ深い設定があるんですが……

それはじみちに書いていこうと思うので……

ちなみに「碧」は「みどり」じゃなくて「あお」と読みます。

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