☆35話 ケンカ☆詩織side
「響くん！テストの点数どうでしたか！？」
帰り道、私は自信満々で響くんに尋ねた。
ふふふ……
今回のテストは絶対に私が勝ってること間違いなしです！
どうしてですって？？
驚かないでくださいよ…？？
実は私！
今回のテスト、平均70をとったんです！！
それに加えて響くんは長い間授業にでていなかったわけなので……
さほど点数はとっていないはずだ、ということなんですよね！
あー！
なんだか響くんにテストで勝てるって気持ちいいですねー！！
「んー…いつもどおりだな」
…へ？？
いつも…どおりって…
「…もしかして、全部満点だとか……」
「そうだけど」
響くんはにっと笑って私に尋ねた。
「おまえは？？」
「………平均70です」
どーせ響くんには負けるに決まってますよ……
ああ、一瞬でも響くんに勝っただなんて妄想を抱いた私がバカみたいです……
私は大きなため息をついた。
「もう…どうして響くんは長い間学校にきていなかったのに普通に満点をとれるんですか？？」
授業の内容も分からないはずですのに…
満点をとれるなんておかしいですよー………
「だってオレ、頭良いから」
響くんは指で自分の頭を軽く叩いて言った。
カチンッ！
………今のはちょっと頭にきましたね。
たしかに響くんは頭が良いと思いますけど……
ですけどそれ、自分で言いますか？？
それにちゃんと授業をうけていたのに70点しかとれない私がバカみたいじゃないですか！
「…そうですよね。どうせ響くんは頭がよろしいんですもの。私みたいなバカがかなうわけないですよね！」
「いや…別におまえがバカってことじゃねぇけど……」
「いいえ！間接的にバカって言ってます！！」
だってさっき私に点数聞いたときだって、なんだか見下した感じだったじゃありませんか！！
ええ、どうせ私は満点なんかとれっこないですよ！
一教科でも満点をとれたら奇跡です！
「言ってねぇって！じゃぁなんて答えればいいんだよ！？カンニングしたとかなんとか答えればいいのか！？」
「そういうことじゃないですけど…でも！もっと他に言い方があるでしょう！？自慢とか聞いてる方は腹が立つだけです！」
もっとほら…
謙遜するとかはないんですか！？
「本当のこと言っただけだろ！？別に自慢じゃねぇし！大体おまえが点数とか聞いてくんのが悪いんだろ！？」
響くんはきっと強く私を睨みつけた。
……なんですか、こういうときだけ自分の顔が怖いの利用して……
でも私別に怖がったりしませんからね！
もう慣れました！
私はふんっと鼻で笑った。
「響くん、そうやって怖い顔してれば私が怖がるとでも思ってるんですか？？いっておきますけどもうその顔慣れましたから。もう怖くありませんから」
響くんは眉をピクリとあげた。
「は？別にそんなつもりじゃねぇけど」
そんなつもりじゃない？？
どう考えてもそんなつもりでしょう！？
「大体なんで響くんっていつも眉間にしわよせてるんですか？そんなのだから女の子にもてないんですよ？自分と一樹クンとの違い考えたことあります？？」
「はぁ！？なんでいきなりそんな話になんだよ！？別にもてなくてもいいし。じゃ言うけど、おまえなんでいつも敬語なんだよ？男受け狙ってんの？？」
！！
男受けって…！！
「そんなわけないでしょう！？これは小さいころからの癖です！」
響くんはしばらく黙るとため息をついた。
「あー、もうなんか気分悪い。オレ先帰るから」
「ええどうぞ！さっさと帰ってください！」
響くんは私をおいてスタスタと早歩きした。
私はその場に立ち止まる。
もう！
なんなんですか！？響くん！
まさかあんな人とは思いませんでした！
あー！！
腹が立ちます！！
私は響くんの姿が見えなくなるのを待ってから足を進めた。
次の日。
今日は祝日なので学校が休みです。
……なんにもすることがありませんねー。
ちょっと響くんに買い物にでも付き合っていただきましょうか？
そう思いなんとなくケータイを手にする。
そしてメールを打とうとしてピタリと手が止まった。
あ……
そういえば昨日私達ケンカしたんでした。
昨日の今日で誘うのはちょっとあれですねー……
……他の人を誘いましょう。
そう思ってアドレス帳を開こうとした時。
ピンポーン
突然インターホンが鳴った。
？？
宅配便か何かでしょうか？？
玄関のドアを開けてみると、家の前に笹川サンが立っていた。
「あ、詩織ちゃん！こんにちわー！」
「笹川サン？？どうしたんですか？？」
「んー…ちょっと相談があるんだ」
相談？？
休みの日に相談なんて…
よっぽど大きな悩みごとがあるんでしょうね…
「…まぁここではあれなので中に入ってください」
「うん、ありがとう。お邪魔します」
私は笹川サンをとりあえずリビングに案内した。
そしてお茶とお茶菓子をだす。
「それで…相談って何ですか？？」
私が尋ねると笹川サンは力なく笑った。
「…実は大河とケンカしちゃったんだ……」
「富岡サンと？？」
笹川サンと富岡サンがケンカなんて珍しいですね。
お二人はとても仲がよろしいのに……
「うん。私…大河が浮気してるとこ見ちゃって……」
「浮気ですか！？富岡サンが！？」
「うん…昨日大河の家の前に可愛い女の子がいて…大河とすっごく楽しそうにしゃべってたの」
笹川サンは少し目に涙をためた。
「それを大河に言ったら…大河、あの子はいとこだって言い張って…だけど私、それが信じられなくて…」
「それは…信じられませんよね……」
いとこって…
富岡サンももうちょっとうまい言いわけを考えるべきです！
笹川サン…
かわいそうです……
「でも、私家に帰って…そういえば大河に同年代の女の子のいとこがいたことを思い出して…」
「えっ！？本当にいたんですか！？」
笹川サンは小さくうなずいた。
「だから…私、大河に謝りたいんだけど…昨日ひどいことたくさん言っちゃって…謝るに謝れないの…」
「…そうですか」
……そういえば、
私も昨日、響くんにひどいこと言ってしまいましたね……
で、でも！
あれは元はと言えば響くんが自慢してくるから悪いんですから！！
……だけど、
あれくらいで怒る私も悪いですよね……
私も…
響くんに謝りたいです……
「ねぇ、詩織ちゃん。大河に謝るの協力してくれない？？」
笹川サンは涙をぐっとぬぐって言った。
「…はい、いいですよ！」
笹川サンが富岡サンに謝るのを見届けたら……
私も響くんに謝りに行きましょう。
私はそう誓い、ケータイで富岡サンに電話をかけた。
「とりあえず話があるので駅まできていただけるようにお願いしましたよ」
「本当！？ありがとう、詩織ちゃん…！」
しばらくしてから駅に向かうと、すでに富岡サンらしき人影がいた。
「どうしよ…もし許してくれなかったら…」
「大丈夫ですよ！富岡サンならきっと許してくれます」
だって富岡サンは本当は優しい人ですものね！
そして……
響くんも優しい人だから…
きっと謝れば許していただけますよね…？？
「大河！！」
笹川サンは富岡サンの方に走っていった。
富岡サンは笹川サンをみとめて、驚いたような表情をする。
「美空！？なんでおまえ…」
私も少し小走りでかけよる。
そして富岡サンのそばにいた人を見て思わず大きく目を見開いた。
「響くん！？」
どうして響くんが富岡サンと一緒に…？？
響くんは一度じっと私を見ると、ふんっとそっぽを向いた。
や、やっぱりすごく怒ってますよね……？？
私、本当に謝って許していただけるんでしょうか…？？
不安に思っていると、隣で笹川サンの大きな声がした。
「あの…昨日は疑ったりしてごめんなさい！私ったら大河に女の子のいとこがいたこと忘れてたの！」
隣を見ると、笹川サンが富岡サンに大きく頭を下げている。
「………」
富岡は何も言わずじっと笹川サンを見ていた。
そして小さな声で口を開く。
「オレも…ごめん」
「えっ？？」
笹川サンは驚いたように頭をあげる。
富岡サンは苦笑いして頭をかいた。
「そりゃいとこでもオレが他の女の子といるの見たら嫌だよな！しかもオレ、昨日結構嫌なこと言ったし」
「大河……！！」
うれしそうに富岡サンを見る笹川サン。
どうやら一件落着みたいですね！
なんとなくすごく簡単に片付いた気がしますけど…
でも、どちらも謝りたかったってことですよね？
本当に良かったです！
…それで、
私達も一件落着できるんでしょうか…？？
「詩織」
突然響くんに声をかけられた。
ビクッと思わず体が震える。
ど、どうしましょう！？
まだ落ち着いて話せるかどうか…！！
「な、何か用ですか！？」
ああ！
少しとげのある言い方で言ってしまいました！！
反応は……
「…………」
えっと…
すごく複雑そうな顔というか…
なんだか怒りを必死にこらえてるみたいというか……
「えっと…昨日、なんか悪かったな」
…え？？
まさか、響くんから謝ってくれるなんて……
響くんはそっぽを向きながら言った。
「オレ、本当に自慢とかそういうつもりじゃねぇし…冗談のつもりで言ったんだけど……」
冗談……
そういえば…
お友達とお話するとき、そんな冗談言ったりしますよね。
なんだ、そうだったんですか。
響くんって本当に頭良いから…
冗談って思えなくて……
「あの…私の方こそ…ちょっとしたことで怒ってすいません……」
響くんが冗談で言ったことで怒っちゃって……
あ、そういえば！
怒って響くんにひどいことを！！
「えっと！その…大丈夫です！響くんはちゃんと女の子にもてますから！」
響くんは驚いたように顔を赤くさせた。
「い、いや、別にそれはどうでもいいけど…」
「え？でも少しは気にしていたでしょう？？」
私がからかうような気持ちで聞いてみると響くんはさらに顔を赤くさせて答えた。
「別にオレはおまえが…！！」
最後の言葉はあまりにも小さくて聞こえませんでしたけど……
なんとなく、私は響くんが何を言いたかったのか分かった気がした。
うれしくて思わず顔がほころびる。
「私、敬語を使うことで男の人の気をひこうだなんて思ってません。私も響くんにだけ思っていただけたらいいですから！」
私は別に他の男の人に好かれたいなんて思ってません。
私には響くんがいればそれでいいですから！
響くんは頬を染めたままにっと笑った。
私も笑顔を返す。
…たまにはケンカすることも必要なのかもしれませんが……
私はやっぱり響くんの怒った顔よりも笑った顔を見る方が好きです。
響くんもきっと…
そう思ってくれていますよね？？
ひさしぶりに普通の甘めの話をかきたかったんですけど…
なぜかケンカに…(-_-;)
でも言いあいしているところをかくのが結構楽しかったです♪
