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純情恋模様  作者: karinko
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★3話 本音★響side

オレの家は学校から結構離れている。


なのでいつも電車を使っている。


そういうわけで今日もオレは人でこみあった電車の中にいた。


ったく…


なんで毎日毎日こんなしんどい目にあわなきゃいけねぇんだ…


こんな思いまでして学校行きたいわけでもねぇんだけど…


そう思いため息をついたとき、


ドンッ!


誰かの(多分)鞄が背中にあたった。


「あっ、すいません!」


「ああ、大丈夫で…」


振り返りながら言ったオレの言葉は途中でとまった。


目の前の見なれた姿。


こ、こいつは…


「た、滝沢サンっ!!」


望月は驚いたように目を見開いて言った。


オレは一刻もはやくここから立ち去ろうと一歩後ずさった。


けど、あふれかえっている電車で動くのは困難だった。


仕方なくその場にとどまる。


「「………」」


望月が気まずそうな顔でオレを見た。


オレだって気まずいよ…


もし電車がすいてたらすぐにはなれてやるのに…


「…えっと、滝沢サンも同じ電車にのっていたのですねー…!」


望月が無理やりに話をふってきた。


「………」


答えるのも面倒なので何も言わない。


大体こいつの『怖くても話さなくては』みたいな感じ、嫌いなんだよな…


話たくないなら話さなくていいじゃねぇか。


なのになんでこいつは無理やりに話そうとするんだ…??


沈黙のまま、いつのまにか駅についた。


「「…………」」


駅をでてすぐに学校へと足を進めるが、目的地は同じなので自然と望月がオレの後をついてくる形になる。


冗談じゃない。


これ以上こいつと一緒にいるのは嫌だ。


そう思ってオレは歩く速さを速めた。


そろそろ大丈夫か…??


後ろを振り返ってみるとすでに望月の姿はなかった。


よし、うまくまけた!


ほっと息をつき、オレは歩く速さを元に戻した。




その日、オレは1人でぼんやりとすることができなかった。


なぜなら望月が休み時間のたびにわざわざオレに話しかけにきたからだ。


面倒くさいのでオレの方は何も答えないがそれでも望月は1人でしゃべりだす。


そしてなぜか昼飯まで無理やりに一緒に食べにきた。


…こいつ、本当にわかんねぇ。


どう考えても絶対オレのこと怖がってんのに…


なんでこんなにオレにかまってくるんだ??


怖いなら普通話かけにきたりしねぇだろ…??


一体こいつ、何が目的なんだ…??


それから毎日望月は休み時間のたびにオレに話しかけてきた。


そしてある日。


「滝沢サン!」


いつものように望月が話かけてきた。


いい加減うんざりしていたオレは望月を睨んでみる。


「あ、あの…」


望月はビクッと体を震わせたが少し震える声で続けた。


なんでそんなに怖がってんのにまだしゃべろうとしてんの…??


オレは大きなため息をついた。


「…なぁ、おまえってさ」


じっと望月を見てみる。


望月はおびえたような表情で一歩後ずさりした。


…やっぱり、すっげぇ怖がってるし…


オレはまたため息をつく。


「…オレのこと、怖いんだろ??」


望月は目を見開き、小さな子供が何か隠しごとがばれたときに見せるような表情を見せた。


…まぁ、気づいてたけどな。


「なのになんでそんなにオレにかまうの?」


「それは…」


またじっと望月を見る。


望月はまたおびえたような表情を見せて、ぽつりと言った。


「滝沢サンがいつも1人だから…」


………!!


ズキッ


胸に刺すような痛みが走る。


…なんだよ、その理由…!


オレは怒りにまかせて思いきり机を叩いて立ちあがった。


クラス中の視線がオレに向けられる。


だが、そんなことは気にしなかった。


「もうオレにかまうなっ!!」


望月に向かって思い切り怒鳴ると、オレは逃げるように教室をでた。


なんだよ…!


あいつはただオレのことをかわいそうなやつだとか思って無理やりオレにかまってたのかよ…!!


どうせあいつは自分の気持ちを曲げてまでオレと話してる自分がえらいとでも思ってたんだ…


そんな慰めみたいなのなんていらねぇんだよ…!!


いつの間にかオレは屋上にきていた。


フェンスにもたれかかり、そのまま地面に座り込む。


春の暖かくて心地よい風が頬をなでた。


…なんでオレ、こんなに怒ってるんだ…??


別にそんなに怒ることでもないだろ…??


多分中学の頃のオレじゃ、ここまで怒ってなかっただろ…


風を浴びながらぼんやりと考えていると答えに思い当たった。


けど、それは気づきたくなかった答えだった。


……本当は、望月が必至にオレと話そうとしてくれてたのがうれしかっただなんて…


オレらしくない。


そう思った。




下校時間。


オレは用意をすませると、望月を見ないように教室をでた。


そして外にでたとき、


「滝沢サン!待ってくださいっ!」


後ろから望月の声がした。


けどオレは振り返らずにそのまま足を進める。


「滝沢サンっ!待って…きゃっ!!」


どうしたんだろうと後ろを振り返ってみる。


ドンッ!


大きな音がして望月が派手に地面に突っ伏した。


こけ方があまりにおもしろくて思わず笑いそうになったが、なんとかこらえた。


そして鳩が望月の上を飛び去ってポトリと糞をおとしていった。


ちょうどそれが望月の頬の上におちる。


「ぷっ…」


こらえきれなくて思わず噴き出した。


「お、おまえ、なんだよそれ…!!」


どうやったらそんな漫画みたいなことになるんだよ…!


「へっ??」


望月はマヌケな顔をしてオレを見上げる。


そのドジっぷりに思いきり笑いそうになるが本人に悪いのでなんとかこらえた。


望月の顔が沸騰したように赤くなる。


望月は立ち上がるとハンカチで頬をぬぐった。


「い、いえ!こ、これは、そこに大きな石が!!」


望月の足元には他の石よりほんの少し大きな石があった。


…普通、あれにつまずくか…??


「あ、あの…」


望月は小さな声で言った。


そして少し間をあけて、


「さっきはひどいこと言ってすいませんでしたっ!」


そう言って大きく頭をさげた。


「………」


「私、本当に、滝沢サンの力になりたかっただけなんです…」


力になるって…


だからそんな慰めみたいなことはいらねぇし…


「…別に、そんなのおせっかいなんだよ」


望月があからさまに落ち込んでうつむく。


…そんな落ち込まれても…


やっぱこいつ苦手だ…


「…でも、」


言うつもりはなかった。


なのに落ち込む望月を見ていたら自然と口に出た。


「ちょっとは…うれしかった」


望月が驚いたように顔をあげる。


「ほんと…ですか…??」


顔が熱くなった。


何言ってんだ…!?オレ…


オレは望月を見ないように横をむいた。


「ほんのちょっとだよ!大体オレ1人の方が好きだし!」


そ、そう!


さっきのは望月を気遣っただけだし!


別に本音言ったわけじゃないんだからなっ!!


でもなんか恥ずかしくてオレは望月に背を向け、逃げるように走った。


「明日もまた、お話してください!!」


背後から望月の声が聞こえた。


オレは一瞬足を止めて小さくうなずいた。


オレ、ホント何してんだ…??


わけわかんねぇこと言って…


でもオレは、


『ちょっとは…うれしかった』


そう言ったことに、なぜか後悔はしていなかったんだ。

この人すっごい純情ですね…

そしてなぜか響sideが詩織sideより短くなるのはなぜでしょう…??

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