表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純情恋模様  作者: karinko
59/78

☆32話 救出☆詩織side

一樹クンと別れてから、私は何もできないまま1週間がすぎた。


私は響くんのことをあきらめないって決めましたけど…


だけど、一体どうすればいいのかわからない。


私が今、響くんのためにできることってなんでしょうか…??


響くんが桜井サンの所にいるってことは知っているんですけど…


と、窓の外の景色を見ながらぼんやりと悩んでいる時…


「詩織、隣のクラスの子が呼んでるわよ??」


優香ちゃんがぽんっと私の肩を叩いた。


へ??


隣のクラス…ですか??


もしかして笹川サンでしょうか…??


そう思いながら振り返る。


だけど、教室のドアの前にいたのは予想外の人物だった。


「桜井…サン…??」


どうして…


あなたが私を呼び出したりなんか…


桜井サンはにっこりと私に笑いかけた。


思わずびくっと体が震える。


怖い……


今度、何をされるかわからない……


だけど……


私はぎゅっと拳を握りしめた。


もしかしたら、響くんのことかもしれない。


少しでも響くんのことを知るためなら…


「桜井サン、どうしたんですか??」


私は桜井サンのそばに歩み寄った。


「ちょっとね。…今日、私の家にきません?」


驚いて思わず目を見開く。


え…??


どうしていきなりそんなこと…


まさか、今度は私にもっとひどいことをするつもりだとか…


「どうしてですか…??」


桜井サンはにっと笑って私の耳元で囁いた。


「滝沢クンに会わせてあげる」


「……!!」


響、くんに…??


桜井サンは私に手をふると私に背を向けて自分のクラスに帰っていた。


私はぼんやりとその場に立ち尽くす。


響くんに…会わせてくれる…??


なんで……??


桜井サンの意図がわからない。


もしかしたら、からかわれているだけで、会わせてなんかもらえないかもしれない…


だけど…


もしかしたら…


もしかしたら、会わせてもらえるかもしれない…


それって、十分に行ってみる価値はありますよね…??




「ダメですよ!望月センパイ!そんなの、罠かなんかにきまってます!」


一樹クンにそのこと報告すると、大声で猛反対された。


「で、ですけど…もしかしたら、本当かもしれませんし…」


「いえ、絶対に嘘にきまってます!」


一樹クンはきっぱりと言った。


「だってあんなやつですよ!?信頼なんかできません!」


「でも!このままじゃ私達、なんにもできないままです!」


一樹クンはピタリと口をつぐんだ。


そしてしばらくの沈黙のあと、きっと私を見る。


「それじゃ、オレに行かせてください。オレが会って無理やりにでも連れ戻してきます」


その真剣な目が少し怖いと思った。


だけど首を横に振る。


そしてじっと一樹クンの目を見て言った。


「…嫌です。私、ちゃんと響くんに会って話したいんです」


「でも、オレは望月センパイが心配で…!!」


一樹クンはぎゅっと拳を握りしめて目を伏せた。


そんな一樹クンににっこりとほほ笑みかける。


「私は大丈夫ですよ。いざとなったら逃げますから。私、意外と走るの早いんですよ?」


「え…??いや、そういう問題じゃ…」


一樹クンは困ったように言って、そして大きなため息をついた。


そしてにっと私に笑いかける。


「…まぁ、それじゃ気をつけてくださいね」


「はい」


私も笑顔でうなずく。


…待っていてください、一樹クン。


私、きっと響くんを説得して、できることなら一緒に帰ってきます。


桜井サンの家に行くのは少し怖いですけれど…


私、がんばりますから。




放課後。


私は桜井サンの車に乗って、桜井サンの家に行った。


そして広いリビングに案内される。


…本当に、広いです。


さすがお金持ちの家ですよねー…


さっきみた庭もテニスコートが作れるくらい広かったですし…


世の中にこんなお金持ちがいたなんて少しびっくりです…


って、いやいや!!


感心している場合じゃないです!!


早く響くんに会わせていただかないと!!


「望月サン、お茶でもどう??クッキーもありますのよ?」


桜井サンはにっこりと笑って言った。


私は首を横にふる。


「…いえ、結構です。それより、早く響くんに会わせてください」


少しクッキーは魅力的ですが…


今はそんなことよりも、響くんに会わせていただくことが先決です…!


「んー…まぁ、いいですけど。じゃぁついてきてください」


桜井サンにうながされて、私は桜井サンの後についていった。


階段を下りて、地下らしきところに行く。


普通の家に地下があるなんて…


さすがお金持ち…じゃなくて!


だから今は感心している場合じゃないんです!


ですけれど…


地下といったら暗いイメージがありますが…


別に、さっきの1階の様子と変わりませんね。


やっぱり感心しながらまわりを見回しているうちに、桜井サンはある部屋の前で止まった。


「…ここに、いるんですか??」


桜井サンは首を縦に振った。


私はこくっと唾を飲み込んで、ドアノブに手をかける。


少し、会うのが怖かった。


だけど、一樹クンに言ってもらった言葉を思い出す。


『兄ちゃんはまだ望月センパイのことが好きなんだと思います』


一樹クンはそう言っていた。


それなら…


私が行っても、迷惑なんかじゃありませんよね…??


私は目を閉じて、扉を開いた。


そこは窓もない、真っ暗で小さな部屋。


そして、その奥に響くんの姿が見えた。


「響くん…!!」


本当に…


会わせてくれた…!!


私はたまらなくなって響くんにかけよった。


そして、はっと息をのむ。


様子が…おかしいです…


部屋が暗かったのでさっきはわからなかったけど、響くんは両手足を縛られていた。


そして両腕や足にはっきりとは分からないけど切り傷が見える。


「響…くん…??」


私が名前を呼ぶと、空を見つめていた響くんの目が私をとらえた。


そして怯えたようにカタカタと震える。


「くる…な…」


響くんはかすれる声で言った。


え…??


くるなって…


どうして…


私は響くんの頬に触れた。


響くんはびくっと体を震わせる。


「…やめろ!触るな!!」


そして大声で怒鳴られた。


驚いて慌てて手を引っ込める。


響くん…??


どうしたん…ですか…??


どうしてそんなに震えているんですか…??


どうしてそんな怯えた目で私を見るんですか……??


「滝沢クン、壊れちゃった。だから、もういりませんの。あなたに返してあげます」


後ろで桜井サンが言った。


壊れ…た…??


返して…あげる…??


何それ…


「なんですか…それ…。響くんをまるで物みたいに…」


桜井サンはふんっと鼻で笑った。


「だってそうでしょう??滝沢クンはただの私の玩具よ??」


……!!


怒りで頭が真っ白になる。


瞳にたまった涙がこぼれおちた。


響くんは玩具なんかじゃないのに…


響くんは何もしていないのに…


どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないんですか…??


どうして…??


どうして…!?


私はきっと桜井サンを睨んだ。


「桜井サン…私はあなたを絶対に許しません…!!」


桜井サンはにっと笑った。


「うん。それもおもしろそう。あなたが私に何をしてくれるのか期待してる。じゃぁね」


桜井サンは一言言って部屋をでていった。


「…響くん」


私は響くんに向き直った。


本当に怯えきった顔。


響くんは…


こんなに弱くない…


桜井サン、あなたはいったい何をしたんですか…??


いったい何をすれば響くんがこんな風になるんですか…??


私は響くんの両手足を縛っていたひもを解いた。


そしてぎゅっと響くんを抱きしめる。


「やめろ…」


響くんが怯えた声でつぶやいた。


私はそんな響くんを強く抱きしめた。


「…大丈夫です。響くん。私です。詩織です」


「しお…り…??」


響くんは私の名前を繰り返した。


私はうなずく。


「そうです。だから…安心してください…私がいますから…」


響くんの震えが止まった。


響くんの体の力がぬけて、響くんの体重が私にかかってくる。


「し…おり…。ごめん…」


響くんはそうつぶやくとぐったりと私の肩にもたれかかった。


そして小さな寝息を立て始める。


…どうして、響くんが謝るんですか??


悪いのは全部桜井サンでしょう??


大丈夫。


あなたは何にも悪くないです。


私はそっと響くんの髪をなでた。


ごめんなさい…


私、もっとはやくくればよかったですよね…??


そうすればここまであなたは傷つかずにすんだかもしれないのに…


だけど、もう大丈夫ですから…


安心して、ゆっくりと眠ってください。


あなたをここまで傷つけた桜井サンは…


私が絶対に許しませんから。


私はどんなことがあっても、絶対に桜井サンを許さない。

結構ひっぱったわりにはわりとあっけなかったですね。

このあとどうやって詩織と響が自分の家に帰ったかはご想像におまかせします。

次は響sideで今までの全部説明します(^^♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ