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純情恋模様  作者: karinko
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☆29話 戸惑い☆詩織side

その日、私と一樹クンは何も話すことなく家路についた。


駅で別れるときに一樹クンは笑顔で手をふってくれましたけれど…


いつもの笑顔じゃない。


私に気をつかって作ってくれたような笑顔。


一樹クンをのせた電車が動き出した時にはもう、一樹クンの表情は険しくなっていた。


一樹クンも…


きっと響くんのことを考えているんでしょうね……


私はふと、窓ガラスにうつる自分の姿を見た。


響くんを忘れるためにきった髪。


一樹クンに、誰にも触れさせないって約束した。


だけど……


結局響くんに触れられてしまった。


そして…


私は結局、響くんを忘れることなんてできない。


きっと、私が響くんに抱きしめられているのを見たとき一樹クンは傷ついたんでしょうね。


それなのに……


一樹クンが傷ついていたというのに……


私はぎゅっと自分を抱きしめてみた。


響くんに抱きしめられた、あの感覚を思い出すように。


……私は響くんに抱きしめられて、正直うれしかったんですよ?


一樹クンが傷ついているそばで、私は喜んでいたんですよ??


こんな私が…


一樹クンのそばにいてもいいのでしょうか…??


やっぱり、一樹クンにはっきり伝えた方がいいのかもしれない……


私は響くんのことがまだ好きなんです、と。


もし、響くんが本当に私に飽きてしまっていたとしても……


私は響くんの力になりたい、と。


響くんのあの笑顔の理由が知りたいと………


ごめんなさい、一樹クン……


私、もうあなたのことを好きになることなんて無理です。


私はもう響くんのことしか考えられない……




次の日の昼休み。


昨日家で一晩悩み、私は自分の気持ちを一樹クンにはっきりと告げることにした。


「一樹クン、ちょっとお話があるんですけど…」


私が勇気を出して切り出すと、一樹クンはまるで昨日のことなど忘れたような笑顔を私に向ける。


「ん?何ですか?望月センパイ」


その笑顔に、一瞬ためらってしまう。


本当に言っていいのでしょうか……??


言ってしまえば…


一樹クンを、傷つけてしまうだけ……


だけど心の中で大きく首をふる。


いえ、違います。


私は一樹クンのことを心配しているようで、そんな自分の気持ちに甘えようとしているだけ。


私はきっと響くんに似た一樹クンをまだ利用していたいだけ。


そんな自分、捨ててしまわないといけない。


それに、どうせ私の気持ちは変わらないのだから……


早く言ってしまわないと一樹クンのショックが大きくなってしまうかもしれない……


「一樹クン、私…やっぱり一樹クンとお付き合いできません」


一樹クンは大きく目を見開いた。


「…どうしてですか??」


そして唖然としたふうに言う。


「私は…やっぱり響くんが好きなんです。そんな気持ちのまま、一樹クンとお付き合いすることはできません……」


私は正直な気持ちを一樹クンに伝えた。


一樹クンは驚いたようで、しばらく固まる。


そして突然ふっと笑った。


「なんだ、そんな理由ですか」


「…えっ??」


そんな理由って…


私にとったら大きな理由だと思うんですけど…


「そんなの…望月センパイがずっと兄ちゃんのことを好きだってことくらい分かってますよ」


一樹クンはそう言って、私の頬に触れた。


「そんなの、オレが望月センパイに告白したときから分かってた。望月センパイが兄ちゃんのことを忘れて、オレのことを好きになるわけなんかないって」


「一樹クン…??」


私は驚いて、ぼんやりと一樹クンの表情を見つめていた。


なんだか、一樹クンがとても恐ろしい物に感じる。


だって…


一樹クンの表情はまったくの無表情だったから。


「だけど望月センパイが兄ちゃんのこと忘れるって言うから、どうせ無理だろうと思いながらもあんたに無理させてた。もしかしたら本当にオレのこと好きになってくれるかもって」


一樹クンは無表情のまま、口角をあげて笑顔を作った。


「付き合えないって、そんなのオレが素直に聞くと思ってるのか??あんたはもう兄ちゃんの物じゃない。オレの物なんだ。あんたの意志なんて関係ない」


物…!?


意志なんて関係ないって…


一樹クンにとっての私って、ただの物だったんですか…!?


かっと頭に血がのぼり、私は思わず一樹クンの頬を思い切り叩いた。


一樹クンは驚いたように頬をおさえて私を見る。


私はそんな一樹クンを怒鳴りつけた。


「響くんは、私のことを【物】だなんて言いません!!!」


響くんは…


私のことを、ただの持ち物みたいに言ったことなんてないです……!!!


響くんは、少なくともほんの少し前までは私のことを本気で思ってくれていた…!


「……すいません」


一樹クンは少し目を伏せてぼそっと言った。


そしてじっと地面を見つめる。


「でも…オレ、どうしても望月センパイと別れたくなくて……」


少し震えた声。


まるで親に怒られた子供みたいに、じっと固まって動かない。


私は小さなため息をついて一樹クンの頭をなでた。


「…大丈夫ですよ。怒ってはいませんから」


慰めるようにつぶやく。


一樹クンはおそるおそるといった風に顔をあげた。


そしてじっと私を見て言う。


「…望月センパイはオレの初恋なんです」


「え…??」


突然の予想もしていなかった言葉に私は驚いてポカンと一樹クンを見る。


あれ…??


一樹クンって、前にも彼女いたみたいですよね…??


よく女の子と一緒にいましたし…


それなのに…


初、恋…??


一樹クンは自嘲するように笑った。


「おかしいですか?でも、そうなんです」


一樹クンは視線を少し下におとした。


そして小さな声で話しだす。


「オレのまわりに集まってくる女なんて、みんなオレの顔目当ての奴ばっかりなんですよ。だから、オレも適当に顔で選んで遊んでた。オレもそれはそれなりで楽しかった。だからそんな女と付き合おうとしない兄ちゃんがずっとおかしいと思ってたんです」


私は無意識に一樹クンの顔を見た。


響くんと同じで、きれいな顔。


たしかに…


このきれいな顔を目当ての女の子はたくさんいるでしょうね…


そして響くんにも……


「だけど、兄ちゃんは高校に入って彼女ができた」


一樹クンはじっと私を見た。


「…私??」


一樹クンは小さくうなずく。


「あの兄ちゃんが付き合うなんてどんな女だろう、きっと相当良い女なんだろうなって思ってた。…それで、兄ちゃんの彼女は予想通りの良い女だった」


「そ、そんなことないですよ…」


一樹クンの言い方がなんとなく恥ずかしくて私は首を横に振った。


そんな私を見て、一樹クンはクッと笑う。


「良い女ですよ。そしてあなたが本気で兄ちゃんに恋してるのを見て驚いた。…ああ、こんな女もいるんだなって。その時からオレは望月センパイのことが気になり始めていたんです」


一樹クンは私に向かって微笑んだ。


「初め、望月センパイに付き合おうって言った時は別にそれほど好きだったわけじゃなかったんですよ?ただこんな女を自分の物にできたら楽しいだろなって思っただけ。…でも、いつの間にかオレはあなたのことが好きになっていた」


一樹クンは突然私に抱きついた。


そして震えながら強く私を抱きしめる。


「…オレ、本当に望月センパイのことが好きなんです…!別れたくなんてありません…!!」


「一樹クン…」


ぎゅっと強く私を抱きしめる一樹クン。


それが、なんとなく響くんにふられたときの私に重なった。


こんなに一樹クンにすがられて…


それでも、お付き合いできないなんて…


私には、とても言えない…


私はそっと一樹クンの背中に手をまわした。


そして左手で一樹クンの髪をなでる。


「…ごめんなさい。やっぱり、お付き合いできないなんて言いません…」


「…え??」


一樹クンは驚いたような声をだした。


「それじゃぁ…!!」


一樹クンの声が明るくなる。


私はにっこりと笑った。


「これからも、よろしくおねがいします」


「…ありがとうございます…!!」


本当にうれしそうな一樹クンの声。


その声を聞いて、少し感じる罪悪感。


…これで、いいんですか??


さっき一樹クンを傷つけないためにも一樹クンと別れないといけないと決めたばかりじゃないんですか??


私は響くんが好きなのに…


そんなままで一樹クンとお付き合いを続けるなんて……


だけど…


一樹クンはしがみつくように強く私を抱きしめる。


一樹クンの気持ちが伝わってくる。


私はやっぱり一樹クンをほおっておけない…


私は一樹クンを強く抱きしめ返しながら空を見上げた。


……響くん。


…こんなはっきりできない私でごめんなさい。


あなたは今頃どうしているんでしょうか??


やっぱり桜井サンと一緒にいるんですか??


そこで、あなたは笑っているんですか??


…理由はわからないけれど…


もし、あなたが辛い思いをしているのだとしたら…


きっと、私が助けてあげます。


もしあなたが戻ってきても私には一樹クンがいるから……


もう、前のような関係には戻れないかもしれません。


そう思うと悲しいですけれど…


でも私は友達という関係でもいい。


それでもあなたといたいです。


だから…


お願いですから、1人で無理はしないでください……


私は目を閉じて、心の中で強く祈った。

なぜか途中から一樹が語りだしてます。

どうしてでしょうか…??

なんとなく全体的に謎(=意味不明)な話になってしまいました(-_-;)

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