☆24話 新しいクラス☆詩織side
4月です。
私がこの高校に入学してから、早いものでもう一年が過ぎました。
というわけで、学年が1つあがります。
学年が1つあがるということは…
当然ですが、クラス替えがあります。
私はドキドキする鼓動をおさえながら、すぅっと深く息をすった。
どうか…
響くんと同じクラスでありますように……!!
私は勇気を出して目をあけた。
そしてA組から順番に自分の名前を探す。
望月詩織…望月詩織…
あ、ありました。
ええと…
私はB組ですね。
さて、響くんは…
「……C組か」
不意に隣から響くんの声が聞こえた。
「えっ…??響くん?」
響くんは私に気が付いていなかったようで、私を見て少しだけ目を見開いた。
「ああ、詩織。いたのか」
「は、はい…」
いたのかって…
仮にも私は響くんの彼女なのに…
そんな言い方ひどいですよ…
…って、そうじゃなくて!
「響くん、C組なんですか!?」
私は驚いて言った。
「ああ、ほら、見てみろよ」
…あ、たしかに…
C組の所に、たしかに『滝沢響』と名前が書いてあります…
そして私は…
……やっぱり、B組の所に名前が書いていますね…
私ははぁっと大きなため息をついた。
「クラス…離れちゃいましたね…」
ああ…
これからはいつでも響くんと顔を合わせることはできなくなるんですね……
残念です……
私は悲しくなってうつむいた。
そんな私の頭を、響くんがぽんっと叩く。
「そんな落ち込まなくても……別に、休み時間も、昼も、放課後も会えるだろ?」
そう言って優しく私に微笑みかけてくれる響くん。
「で、ですけど…」
私は授業中だってずっとずっと響くんといたいのに…
それに私がいない間に、響くんが他の女の子と仲良くしてないかとか、心配になりますよ……
「響くん、あんまり私以外の女の子と話さないでくださいね?」
私は少しわがままを言ってみた。
響くんは少し驚いたような表情をして、にっとはにかんだ笑顔をうかべた。
「オレは大丈夫だよ。…でも、おまえもあまり他の男と仲良くしたりするなよ?」
「そ、それは当然ですよ!!」
私は慌てて言った。
「そうか?でもおまえ、結構前例あるからな…」
響くんは真顔で言った。
た、たしかにそういえばそうですけど…
「でも!私は響くんだけですから!!」
カァァァっと顔が熱くなった。
響くんは少し頬を染めて、きれいな笑顔を私に向ける。
「そう。ならいいけど」
とくん…
心臓が少し強く鳴る。
そういえば…
私と響くんが出会って、もう1年がたったんですね…
はじめ、響くんを見た時はすごく怖いと思ったのに…
今では、愛しくてたまらない。
あの時は響くんのこんな笑顔、想像もできなかったです…。
本当に私…
響くんに出会えて良かった。
私はあらためて響くんと出会えた奇跡がうれしく思い、にっこりと響くんに微笑みかけた。
「よっ!2人ともらぶらぶだなぁ!!」
突然誰かにとんっと肩を叩かれた。
あれ?
この声って…
「一樹……」
響くんが振り返って、怒ったように言った。
振り返ってみると、私達を見てにやにやと笑う一樹クンがいた。
「ええと…どうして一樹クンがいるんですか??」
「どうしてって…オレ、今日からここの新1年ですから」
一樹クンはそう言ってにっこりと笑った。
「ったく…なんでオレと同じ高校なんか来るんだよ…」
響くんはしかめ面で言った。
「可愛い弟に向かってそんな言い方ないだろ?…まっ、そういうことで、よろしくお願いしまっす!望月センパイ!」
「は、はい…」
私は苦笑いして答えた。
そうでした…
今年から新しい1年生も入学してきたんですね。
これから、一樹クンも一緒に生活することになるんですね!
なんだか楽しくなりそうです♪
「詩織!また同じクラスだね!」
「またよろしくー♪」
優香ちゃんと楓ちゃんが私に声をかけてきてくれた。
「そうですね!またよろしくお願いします!」
響くんとは離れてしまいましたが、この2人とは同じクラスだったんですね!
良かったです…
もしクラスに友達がいなかったらって心配だったんですよねー…
「でも私、中島クンとクラス離れちゃった…」
優香ちゃんはそう言って大きなため息をついた。
ああ…
そういえば、優香ちゃんは中島サンとお付き合いしてたんでしたね…
「私も…響くんとクラス、離れちゃいました…」
「あららー。2人とも残念だねー…」
楓ちゃんは苦笑いしてそう言った。
「うん…。あっ、それよりもさ!うちの学年に転入生が来るらしいよ!」
「転入生…ですか??」
「ああ、私もそれ知ってる!なんでもすっごくお金持ちの財閥のお嬢様らしいよー」
財閥の…お嬢様ですか…??
へぇー…
今の世の中にもそんな人がいたんですねー…
一体どんな子なんでしょうか……??
そしてその日の帰り道。
「響くん!遅くなってすいません!」
私は急いで校門前で私を待ってくれている響くんにかけよった。
「ん。じゃ、行くか」
響くんはそう言って微笑む。
歩きだした響くんの隣に並ぼうとした時、不意に視界の端に一樹クンの姿が映った。
一樹クンは数人の女の子達に囲まれて、楽しそうに話している。
「一樹クン、もてもてですねー…」
私は苦笑いしてつぶやいた。
響くんは足を止めて、一樹クンの方を見る。
「…ああ、いつもあんな感じだよ。言っただろ?あいつ女好きだから」
お、女好きだからって入学して早々、あんなにも女の子の友達が増えるものなのでしょうか…??
いや、あの人達が全員友達かどうかっていうのも少し怪しいです…
私は歩きだしている響くんの隣に慌てて並んだ。
そしてちらっと響くんの方を見てみる。
いつも思ってるんですが、本当に響くんってきれいですよねー…
響くんも一樹クンみたいな性格だったら、きっとあんな風にもてもてなんでしょうね。
…いや、今でもすごくおもてになっているんですけど……
響くんったら全然相手にもしてませんし…
…まぁ、響くんが一樹クン見たいな性格じゃなくて良かったです。
響くんはちゃんと、私だけを見てくれていますものね。
そう思い、うれしくなって私は響くんに微笑みかけた。
「何??」
響くんは怪訝な顔で私を見る。
「いえ。響くんって本当にきれいだなって思って」
響くんは驚いたような表情をして、顔を赤く染めた。
「いきなり…なんだそれ…」
そんな響くんを見てくすっと笑う。
この照れ屋な所も、すごく好きです。
「ねぇ、響くん。私、響くんが大好きですよ?」
響くんの顔がさらに赤くなった。
「…オレも」
小さな声でそう言って、うつむく響くん。
その小さな一言がうれしくて、思わず笑顔になる。
本当に、本当に大好きです。響くん。
クラス、離れてしまいましたけど…
こうして少しでも、毎日あなたと同じ時間を過ごせるのならそれだけで幸せです。
こんないつもの帰り道だって、あなたと一緒なら輝いて見える。
私にとって、あなたと過ごせるありふれた日常が、たまらなく幸せで、大切な時間。
そんな日常が…
これから少しづつ、崩れていくなんて……
私はこのとき、夢にも思いませんでした。
いきなり2年生になりました。
そして結構短くなってしまいました…(-_-;)
でも響sideは少し長くなるかも…??