★22話 風邪★響side
体がだるい。
頭がくらくらとする。
「兄ちゃん、37度だってさ」
一樹が体温計を見て言った。
37度…
完璧風邪引いたな…
「大丈夫か?今日母さんも父さんもいないけど…」
「大丈夫だよ。とりあえず学校休む…」
「分かった。んじゃオレは行ってくるな!」
一樹はそう言ってオレの部屋を出ていった。
最悪だ…
風邪なんかひさしぶりにひいたぞ…
まぁ…
とりあえず今日は家でおとなしく寝てるか。
たまには学校休むってのもいいもんだな。
オレはそう思い、のんびりとベッドに横になった。
どうせすぐ治るだろうし、治ったら好きなことするか…
と、朝はそう思っていたんだが…
夕方、そうはいかなくなった。
一樹が帰ってきて、また熱をはかってみる。
「ああ、兄ちゃん。熱あがったな。38度だ」
たしかに…
朝よりだるいし、頭がぼんやりとする。
なんでだ?
「あ、兄ちゃん、勉強してただろ!なんで風邪ひいてんのに勉強するんだよ!?」
一樹がオレの机を見て言った。
「いや…学校一日休んだし…勉強遅れるだろ??」
しかも昼はちょっと元気だったんだよ…
一樹ははぁと大きなため息をついた。
「まぁ、しんどいのはオレじゃないから別にいいけどな!ま、おとなしくしてろよ!」
「ああ…」
くっそ…
一樹に命令されるなんてなんか嫌だな…
ま、とりあえずまた寝るか。
そう思い目を閉じた時。
下でインターホンが鳴る音が聞こえた。
誰か来たのか…??
ぼんやりと思い、オレは眠ろうとした。
ガチャ
下でドアが開く音がする。
ん?
家にいれるのか??
一樹の彼女…??
ったく…
人が風邪ひいてるってときによく彼女なんか家にいれられるな…
まったくあいつだけは…
そう思いため息をついたとき、
なぜかオレの部屋のドアがあいた。
「兄ちゃん!望月サンがきたぞ!」
…はっ??
オレは驚いて上半身をおこした。
「詩織!?なんで…」
「そ、その…先生からプリントを預かってきましたので…」
あ、ああ…
でもそんなのわざわざこなくても一樹に渡せばいいのに…
「それじゃ望月サン!オレ隣の部屋にいるから帰るときまた言ってよ!オレ、送るからさ!」
一樹はそう言って詩織に笑いかけると部屋をでていった。
詩織はそんな一樹を呆然と見て言った。
「えっと…すごく性格の違う弟サンですね…」
たしかに…
それはよく言われるよ…
「ああ、一樹っていうんだ…あいつは女好きだから気つけろよ」
そう言った時、不意に咳がでた。
そんなオレを見て、詩織はあたふたと言った。
「あっ!無理しないで寝ていてください!」
「ん…いや、大丈夫だよ」
オレはなんとか笑顔を作った。
「大丈夫じゃないです!寝ていてください!」
だけど詩織は怒ったように言った。
「じゃ…悪いけどそうする…」
たしかに上半身おこしてるのも結構辛い…
ここは詩織に甘えとくか…
オレはそう思い、ベッドに横になった。
詩織はオレのそばにひざまずくと、オレの額に手を触れさせた。
そして驚いたように少し目を見開く。
「響くん…大丈夫なんですか!?すごい熱ですよ!?」
すごい熱って…
たかだか38度程度だぞ??
「大丈夫だって…大げさだな」
オレはそう言って詩織に笑いかけた。
だけど詩織は泣き出しそうな顔でオレを見ている。
なんでそんな顔するんだよ…
オレ、風邪ひいただけだし…
本当に心配症だな。
「あの…失礼ですが、お母様は…??」
「ああ、今母親も父親も出張してていないから」
「え?出張ですか!?」
詩織は驚いたように目を見開いた。
そして悩むように首をかしげてから言った。
「響くん、今日私、泊ってもいいですか?」
思わず目を見開く。
「はぁ…??何言ってんだよ…無理だよ。オレ多分起きられないし、つまんないだけだぞ?」
「いいんです!今日は私が響くんの看病をしてあげます!決めました!」
詩織はオレに反論する暇を与えず、家に電話をかけ始めた。
おいおい…
泊るって…
明日も学校あるんだぞ??
しかもオレの風邪うつるかもしれねぇのに…
詩織は電話をかけ終えてふぅっと息をついた。
「おい…おまえ、勝手に…」
「いいから寝ていてください!」
望月にぴしゃりと言われて、オレは顔をしかめた。
…まぁ、いいか。
もう反論する元気もないしな……
「ん……」
眠っていたオレは、不意に視線を感じて目を覚ました。
重たい瞼をあけると、心配そうにオレを見つめる詩織の姿がうつる。
「詩織…??」
なんでここにいるんだ…??
それより…
体が熱い…
オレはぴたりと詩織の頬に手を触れさせた。
ひんやりとした冷たさが手に伝わってくる。
「気持ちいい…」
あー…
なんかぼんやりする…
「あ、あの!おかゆ持ってきたんですけど!!」
詩織は慌てたように言った。
「おかゆ…??ああ…」
だんだんと意識がはっきりしてきた。
そういえば詩織、泊るとか言ってたよな…
それでおかゆ持ってきてくれたのか。
オレはとりあえず上半身をおこした。
「悪いな。ありがとう」
なんとなくすげぇ詩織に迷惑かけている気がする。
本当に詩織っていいやつだよな…
なんか弱ってるときって人の優しさが身にしみるもんだ…
「いえ、それじゃ口あけてください」
詩織はおかゆをスプーンにすくって言った。
…は??
それって…
熱くなっている顔がさらに熱くなる。
「いや、オレ自分で食べれるから…」
「ダメですよ!こぼしちゃったらどうするんですか!?弱ってるときくらい甘えてください!」
う゛……
そ、そう言われると……
…はぁ、ダメだ。
ここはおとなしく詩織に従ってた方がいいような気がする。
そう思い、オレはしぶしぶと口をあけた。
詩織はオレの口にスプーンを運ぶ。
あー……
こんなんじゃオレ、子供みたいじゃねぇか……
「どうですか??」
「ん、うまい…でも、やっぱ自分で食べる」
オレは詩織からおかゆとスプーンをとりあげた。
やっぱ自分で食べた方が絶対楽だ。
詩織はそんなオレを恨めしそうに見つめ、そして不意に立ち上がった。
「それじゃぁ、響くんが食べ終わったころにまたきますね」
「え…??あ、ああ…」
もう、行くのか…
なんとなくすごく心細かった。
思わず、オレから離れようとする詩織の腕をつかむ。
「…??響くん?」
詩織は驚いたように振り返った。
…え??
オレ、何してるんだ…!?
オレは慌てて詩織から手を離した。
「あ…いや、なんでもない」
なんでもないけど…
でも、行って欲しくないというか…
詩織ははぁとため息をついて、オレに笑いかけた。
「大丈夫ですよ。そばにいますから」
ドキッ…
その笑顔があまりにも優しくて、心臓が高鳴った。
なんでだろう…??
詩織がそばにいると…
安心する…
オレはおかゆを食べ終えるとまた横になった。
「ごめん…オレ、また寝るけど…」
「ええ、いいですよ」
望月はそう言ってオレの手を握った。
冷たさが手に伝わってくる。
オレは安心して目を閉じた。
気持ちいい…
詩織が熱を奪ってくれてるみたいだ…
オレは風邪をひいていたことも忘れて、ぐっすりと眠ることができた。
目を覚ますと、熱は完全にひいていた。
オレ…
治ったみたいだな。
不意に、規則正しい寝息が聞こえた。
…詩織??
詩織はオレの手を握ったまま、すやすやと眠っている。
オレはしばらくぼんやりと詩織を見つめてふっと笑った。
そしてそっと詩織の髪をなでる。
ずっとオレのそばにいてくれてたんだな。
多分、オレおまえのおかげでこんなにはやく治ったんだ。
おまえがいてくれたから安心して眠れた。
「…ありがとな、詩織」
…そういえば、明日詩織は学校どうするんだろう?
オレはこの調子だったら余裕でいけるけど…
こいつ、明日の用意とか何も持ってないんじゃないか??
………
オレは時計を見た。
…9時か。
オレんちから詩織の家まで電車使って1時間くらい。
10時に行くとか、絶対迷惑だよな…
……まぁ、オレが謝ればすむと思うし…
今から行くか。
オレはベッドからおりて、代わりに詩織をベッドに寝かせた。
そして上着を羽織って家をでる。
詩織の母親は別に怒るわけでもなく、笑顔で詩織の明日の用意を手渡してくれた。
さすが詩織の母親だな。
そう思いながらうちに帰る。
家につくと、時刻は11時半をまわっていた。
うわ…
結構遅くなったな…
まぁ今までずっと寝てたからあんま眠たくないけど。
それにちょっとしたことだけど、詩織に礼っぽいことができたからいいか。
オレは部屋に戻り、詩織の額にそっと口付けた。
少し顔が熱くなる。
「…おやすみ」
オレは詩織にそう笑いかけて、ベッドのそばに座りこみ、目を閉じた。
えらく中途半端に終わっています(-_-;)
すいません<m(__)m>