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純情恋模様  作者: karinko
35/78

☆18話 帰り道☆詩織side

外もだんだんと寒くなってきました。


そんな11月の後半くらいのころ…


私には小さな悩みがありました。


「響くんって…本当に私のことが好きなんでしょうか…??」


「いきなりどうしたの??」


優香ちゃんが怪訝そうに言った。


「いえ…少し気になってしまって…」


そうなんです。


最近、響くんの気持ちが分からないんですよね……


「どうして?私的にはらぶらぶに見えるけど…何か不安なことでもあるの?」


楓ちゃんが大きな目をぱちくりとさせた。


「不安、というわけではないんですけど…響くんが恋人らしいことを何もしてくれないというか……」


だって…


ついまえまではもっと恋人らしかったと思うんです。


夏休みにもいろいろなことがありましたし…


私が伊吹と仲良くしていたときにはやきもちをやいてくれたりしましたし…


文化祭のときには抱きしめてくれたりしましたし…


それなのに最近はどこか冷めているというか…


私がまだ伊吹とメールしてると言っても、短い返事で終わらされますし、


抱きしめてくれたりとかも全然ありませんし、


なんとなく、ただ一緒にいるだけって感じがするんですよね…


「…それってさ、倦怠期っていうんじゃないの??」


優香ちゃんが首をかしげながら言った。


「倦怠期、ですか…??」


それって熟年の夫婦がお互いのことを飽きて嫌になるっていう、あの…??


「だって滝沢クンと詩織ってもう付き合って半年くらいたつでしょ?もうそんなころじゃない??」


え…??


そ、そうなんですか…??


ってことは…


やっぱり、響くんはもう私に飽きてしまったかもしれないということですか…!?


じわっ


瞳に温かいものがあふれた。


それを見て優香ちゃんは慌てたように付け加える。


「えっ!?い、いや!大丈夫だって!!倦怠期になったからって絶対に別れなきゃいけないってわけじゃないし!」


「そうだよ!っていうか…詩織ちゃんって滝沢クンとどこまでいったの??」


楓ちゃんが唐突にそう聞いてきた。


「へ…??」


どこまで、ですか??


「えっと…海まででしょうか?」


「いや、そういう意味じゃないんだけど…」


楓ちゃんは困ったように笑いながら言った。


「んー…それじゃ詩織って、滝沢クンと手つないだことある??」


手、ですか…??


「それは…ない、ですけど…」


優香ちゃんと楓ちゃんが同時に目を見開いた。


「えっ…??ないの…??」


「…??は、はい…」


え…??


それってそんなにおかしいことなんですか…?


しばらくの沈黙のあと、楓ちゃんがぽんっと私の肩をたたいた。


「それじゃ今日の帰り道、滝沢クンと手つないでみなよ!」


へ…!?


私が、ですか!?


「そんなのできませんよ!!」


私が慌ててそう言うと優香ちゃんはにやりと笑った。


「でもさ、ちょっとしたことで新鮮さってでるものだと思うよ??」


「そうそう!めざせ、倦怠期脱出ー!だよっ!!」


「は、はぁ…」


そ、それなら…


手をつなぐことで倦怠期というものを脱出できるのなら…


少し、がんばってみましょうか…??




その日の帰り道。


私はいつものように響くんの隣を歩く。


たわいのない会話。


なんだか恋人同士というより、友達同士といった感じです…


…でも、今日から変わるんです!


今日は響くんと手をつないで新鮮さをとりもどし、絶対に倦怠期というものを脱出してみせます!!


ですけど、口で手をつなぎましょうと言うのはやっぱり恥ずかしいですね…


これはやっぱり、何気なく手を握るっていうのが一番恥ずかしくないのでしょうか??


…私に、そんな器用なことができますか…??


……いえ!


やるしかないんです!


なんとしても倦怠期というものを脱出しませんと!


私はそっと響くんの右手に自分の左手を触れさせてみた。


すると響くんの手はさっと私の手から離れる。


…??


たまたまでしょうか…??


私はもう一度響くんの手に触れてみた。


やっぱり響くんの手は私の手から離れる。


…………なんとなく、悔しくなってきますね。


私はむきになって何度も響くんの手を握ろうとした。


だけどやっぱり響くんの手は手を触れるたびに私の手から離れてしまう。


しばらくそれが延々と続き、ふと響くんが言った。


「…何??」


「い、いえ。なんでもありませんよ??」


私は笑顔を作って言った。


ほんの少し、私が手をつなごうとしていることを察知してくれるかもしれないと期待してみる。


「そうか??」


だけど響くんはそう言ってその話を終わらせてしまった。


そしてまた、どうでもいいようなことを話し始める。


ぷちっ


私の中で何かが切れたような気がした。


「……響くんは………すか??」


「…??なんだよ?」


響くんはきょとんとしたような顔をする。


私はそんな響くんに向かって怒鳴った。


「響くんは私のこと、好きじゃないんですか!?」


「…!?」


響くんは驚いたように目を見開いた。


「どうして私が手をつなごうとしていることに気が付いてくれないんですか…!?」


せっかく私なりに勇気をだしたのに…


どうして響くんは私の気持ちに気がついてくれないんですか!?


ぽろぽろと涙があふれてくる。


「望月…??」


「名字でなんか呼ばないでくださいっ!!」


私はちゃんと名前で呼んでいるじゃないですか!!


私は響くんとの距離を少しでも縮めたくて名前で呼んでいるのに…


響くんは、そう思ったりしないんですか…??


「どうして、響くんは気持ちを言葉にしてくれないんですか…??どうして私に恋人らしいことを何もしてくれないんですか…??」


私、あの告白のとき以来、響くんに『好き』と言われたことなんてありませんよ…??


響くんの気持ちは何も分からないのに…


私ばっかり響くんのことが好きみたいで…


そんなの、馬鹿みたいじゃないですか…


「私…不安なんです。響くんと一緒にいて、すごく不安になるです」


私は本当に響くんの隣にいていいのかって…


すごく…


すごく、不安になるんです。


私はいたたまれなくなって、その場から逃げだした。


こんなとき、いつも後ろから私を呼ぶ響くんの声が今は聞こえない。


…やっぱり、響くんの気持ちは変わってしまったんですか…??


私達の関係は、もう終わってしまうんでしょうか…??


そう思うと、涙が止まらなかった。




次の日の放課後。


その日、私は響くんと一言も話さなかった。


響くんも、私と話そうとはしなかった。


私達はいつもあまり他の人の目につかないように、校門で待ち合わせて一緒に帰る。


もし…


響くんがずっとそこで私のことを待っていてくれたとしたら…


まるで少女漫画のような展開。


だけど、きっとそんなことありえない。


でも、ほんの少しの淡い期待を抱いた。


少しだけ、遅れて帰りましょうか…


私は鞄から勉強道具を取り出した。


そして今日の復習をしようと教科書を開いた。


だけどどうしても勉強する気がおこらない。


私は小さなため息をついて、机に顔を伏せた。


そして眠ろうと目を閉じたとき…


ガラッ


教室の扉が開く音がした。


誰でしょうか…??


「望月…!?」


驚いたようにそう言った声は、響くんのものだった。


ドキッ


心臓が強く鳴る。


なんとなく顔を合わせ辛くて、私はそのまま寝た振りを決め込んだ。


どうしたんでしょうか…??


もしかして、私を探しに…??


ですけど、あの反応は…


ガサッ


隣で机をあさる音がした。


しばらくして、何かを見つけたようで鞄の開く音がする。


……なんだ。


忘れ物を取りにきただけですか…


そうですよね。


私を探しにきてくれたなんて…


そんなわけ、ありませんよね。


そのまま響くんの足音は教室の扉の方に向かっていった。


ガラッ


扉をあける音が聞こえ、不意に足音が止まる。


そして、なぜか足音がこっちに向かってきた。


…え??


まだ、忘れ物があったのでしょうか…??


足音は私のすぐそばでぴたりと止まった。


ふわっ……


不意に響くんが優しく私の髪に触れる。


そして小さな声で私の名前を呼んだ。


「詩織」


とくん…


心臓の音が少し強く鳴った。


え…??


今、私のこと……


「…なんて、呼べたらいいんだけどな」


響くんはそう言って大きなため息をついた。


どうやら、私が寝たふりをしていることに気が付いていないらしい。


どうしよう…


目を開けた方がいいんでしょうか…??


…だけど、


なんとなく、このまま寝た振りをしていれば、響くんの気持ちが聞ける気がする…


そう思い、私は寝た振りを続けた。


「…おまえ、オレが気持ちを言葉にしてくれないとか、オレが恋人らしいこと何もしないとか言ってたけど…オレ的には結構がんばってる方なんだけど」


しばらくの沈黙が続く。


どうしたんでしょうか…??


少し気になって、私は気付かれない程度に薄目をあけてみた。


響くんはしゃがみこんで、じっと私を見ている。


心臓の鼓動が速くなって、まともに響くんを見ていると気付かれるくらい顔が赤くなりそうで、私はまた瞼を閉じた。


「本当に、可愛いよな…」


響くんはそう言ってまた私の髪をなでた。


普段の響くんなら絶対に言わないような言葉。


それだけで、私の心臓は破裂しそうなくらいにバクバクと強く鳴り響いた。


「オレさ……」


響くんは何かを言いかけて、口をつぐんだ。


ほんの少しの沈黙のあと、響くんの声が私の耳に届く。


「おまえのこと、すっげぇ好きだから」


ドクンッ!


もう、寝た振りなんてできなかった。


響くんがたまらなく愛おしくなって、私はすぐそばにいる響くんに抱きついた。


「はっ!?望月っ!?」


響くんが驚いたような声をだす。


私はかまわずに、響くんを強く抱きしめた。


「私も…私も、響くんのことが大好きです……!!」


今まで分からなかった響くんの気持ち。


それを知れたことがたまらなくうれしかった。




それから私達は一緒に校門をでた。


そして、いつものように私は響くんの隣を歩く。


昨日と同じ。


だけど、全然違う。


昨日は響くんの気持ちが分からなくて、すごく不安だった。


だけど、今は響くんの気持ちがちゃんと分かっている。


ちゃんと、響くんも私のことが好きだって分かってる。


「手、寒くないか…??」


不意に響くんが言った。


「え…??別に寒くないですけど…」


「…じゃ、いいよ」


響くんはそう言ってふいっと顔をそむけた。


…??


なんでしょうか??


別に11月といっても、まだ手袋は必要ない季節ですよね…??


不思議に思い、そしてふと気がついた。


…ああ、そういうことですか。


自然と頬が緩む。


「…やっぱり、少し寒いです」


響くんは私の方を見て、頬を少し染めて微笑んだ。


「そう」


響くんの右手が私の左手を包んだ。


私よりも、ずっとずっと大きな手。


心臓の鼓動が速くなって、顔が熱くなった。


恥ずかしくて何も話せない。


ヒュゥっと冷たい風が私達をすり抜けた。


思わず、体を震わせる。


だけど、響くんとつないだ手と、赤くなった頬は暖かくて…


とても、とても幸せだった。


きっと今、響くんも同じことを考えてくれているんでしょうね。


そう思う私は少し自惚れすぎていますか??


だけど響くんの気持ちを知った今なら…


私はそう、確信することができるんです。

実はずっと前から書きたかった話…なんですが…

少し内容が適当になってしまったかもです(-_-;)

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