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純情恋模様  作者: karinko
33/78

☆17話 文化祭☆詩織side

「それじゃ今から文化祭でする劇の登場人物を決めたいと思います」


学級委員長の蓮見サンはそう言って小さな紙をクラスのみんなに配り始めた。


そうです。


もうすぐ、文化祭が始まります。


私達の学校では各クラスごとに舞台の上で催し物をするらしく、私達のクラスは劇をすることになりました。


内容は『眠り姫』です。


ちなみに登場人物は喧嘩がないように投票で決めます。


今配られた紙に『眠り姫』の登場人物、【眠り姫】、【王子様】、【悪い魔法使い】に相応しい人を書いて、一番票が多かった人がその役になります。


他にも12人の魔法使いの役や、国王夫婦の役などその他もろもろの役もあるのですが…


さすがにそこまで投票するのは時間がかかるので、その役はやりたい人達がやることに決まりました。


私はできたら大道具や小道具など、目立たないことをしたいんですがね…


とりあえず、私はシャープペンシルをとった。


まず【眠り姫】の役ですね。


やっぱりお姫様と言えば…


笹川サンでしょうか??


あっ、笹川サンっていうのはこのクラスで一番の美少女のことです。


本当に美人でスタイルもよくて、この学校で一番きれいなんじゃないかと思ってしまうほど可愛らしい方です。


そんな人がお姫様の役をやったらきっとすごく似合うでしょうね!


私は【眠り姫】の隣に、『笹川美空』と書いた。


次は【王子様】の役ですね。


王子様といえばやっぱり…


無意識に、チラッと横を見る。


響くんはすでに紙を折りたたんでぼーっとしていた。


きれいな横顔。


…やっぱり、王子様と言えば響くんしか思いつきません。


そう思い、私は【王子様】の隣に『滝沢響』と書く。


最後は…


【悪い魔法使い】ですか。


悪い魔法使いと言われても…


別に思い当たる方はいないのですが…


私は頭をひねって思い当たりそうな人を考えてみた。


だけどやっぱりそんな人はでてこない。


…別に、ひとつくらい空欄があってもいいですよね。


そう思い、私はその紙を折りたたんだ。


「それでは、後ろから票を集めてください」


蓮見サンの指示で、各列の一番後ろの席の方が票を集めていく。


そして票が全部集まったところで開票が始まった。


「…よし、それじゃ結果を発表します」


しばらくしてから、副委員長の今泉サンが票を集計した紙を見ながら言った。


「【眠り姫】は、笹川美空サン」


教室中が歓喜の声でいっぱいになった。


笹川サンもうれしそうにとてもきれいな笑顔をうかべる。


「【王子様】は、滝沢響クン」


キャーッと、主に女の子が歓声をあげた。


「えっ…!?オレ??なんで??」


響くんは驚いたように言った。


なんでって…


それは響くんがとっても【王子様】役に相応しいからですよ!


「良かったですね!響くん!」


私がそう言って響くんに笑いかけると、響くんは困ったような表情をした。


「別にオレ、そんな役したくねぇんだけど……」


「それでも、投票で決まったんですからやらないとですよ!!」


私達がそんな風に話している間に、次の名前が読み上げられた。


「【悪い魔法使い】、…望月詩織サン」


……へっ??


私は耳を疑った。


「私、ですか…??」


くすくすと小さな笑い声が耳に入る。


私が…


悪い、魔法使いの役ですか??


そんな……


私そんな役、とてもできません……


自分が他のみんなにそんな風に思われていたのかと思うと、どっと悲しい気持ちが押し寄せてきた。


私がうつむいていると、響くんは怒ったように言った。


「おい、なんで望月がそんな役なんだよ??」


シン……


教室が静まり返った。


「そうよ!絶対詩織にそんな役なんか合ってないって!ねぇ?」


「うん、そうだよ!詩織ちゃんには絶対にできないと思う!」


優香ちゃんと楓ちゃんも大きな声でそう言う。


「でも、もう決まったんだからそれでいいじゃん」


1人の女の子がぽつりと言った。


響くんがガタッと大きな音を立てて、席を立つ。


「おまえ、自分がそんな役にされてもいいのか…??」


教室の空気がこおる。


私のせいでこんな風な空気になっている。


そう思うとたまらなくなった。


「響くん!座ってください!」


響くんは驚いたようにわたしを見る。


「でも、おまえ…」


「いいんです。みなさんに選ばれたんですから、喜んでやりませんとね」


私はそう言って響くんに微笑みかけた。


響くんは納得できないような顔をしながらも席に座る。


…ごめんなさい、響くん。


私、響くんが私をかばってくれたことはとてもうれしいです。


ですけど、結局誰かがこの役をしなければいけないんですよ?


それなら、私のわがままでこんな嫌な役を押し付けるくらいなら、


私がこころよく引き受けた方がいいんです。




休み時間。


「私って、そんなに性格が悪そうに見えるんでしょうか…??」


私は優香ちゃんと楓ちゃんに向かってぽつりと言った。


だって…


やっぱり、ちょっとショックですよー…


私、実は【悪い魔法使い】の役に向いているんでしょうか…??


「いや!全然向いてない!むしろ一番かけはなれてるって!」


優香ちゃんは怒ったように言った。


「ホント、なんで詩織がそんな役にされたか全然分かんないっ!」


「…あれじゃないかな?」


楓ちゃんがためらうようにぽつりと言った。


…??


「ほら、滝沢クンって最近すっごく女の子に人気あるでしょ?それで、みんなきっと詩織ちゃんに嫉妬してるんだよ」


「嫉妬…ですか??」


そんな……


私、女の子達にそんな気持ちを抱かれていたなんて…


「ああ、分かるかも…まぁ、別に気にしなくても大丈夫だからねっ!!」


優香ちゃんはそう言ってぽんっと肩を叩いてくれた。


「そうそう!もし詩織ちゃんが万が一いじめられちゃいそうになっても私達が絶対に守ってあげるから!」


「優香ちゃん…楓ちゃん…」


2人の優しさに、とても感激してしまう。


ありがとうございます。


2人にそう言ってもらえると、私元気がでてきました。


…よし!


【悪い魔法使い】の役、難しいと思いますががんばります!




そして放課後の練習時間。


文化祭まで時間がないので、いきなり劇の練習が始まった。


ちなみに監督は蓮見サンです。


「よし!それじゃ祝宴の途中、悪い魔法使いが入ってくるところから始めようか!」


蓮見サンが合図をだす。


私は慌てて台本を見た。


ええと…


『祝宴に呼ばれなかったことに怒りを感じている』


どんな表情をすればいいんでしょうか…??


とりあえず私は自分にできる精一杯の悪そうな怒りの表情を作ってみた。


そしてセリフをできるだけ意地悪く言う。


「お、王女は糸車の針に刺されて亡くなってしまうでしょう…!!」


「カーット!!」


蓮見サンが大声で言い、劇が止まる。


「なんで【悪い魔法使い】が敬語なんだよ!もう一回台本読み直してもう一回!」


へっ??


わ、私ですか…!?


私は慌てて台本を読み直した。


ええと…


正しくは、『王女は糸車の針に刺されて死ぬだろう』ですね…!!


よし、覚えましたよ!


「お、王女は糸車の針に刺されてお死にになるだろう…!!」


「だから違う!!」


そのあとも、私は蓮見サンに怒られながら何回もやり直しをさせられた。


そして15回目くらいでついにあきらめてしまったのか、大きなため息をついた。


「うん、まぁいいや。それじゃ次の場面行こう!」


私がでない場面はスムーズに進んでいく。


私はそれを見ながらため息をついた。


…私、みなさんに迷惑をかけているだけになってます。


やっぱり私には【悪い魔法使い】の役なんてできないのでしょうか…??


ぼーっとしているうちに、王子様が眠り姫に出会う場面になった。


…そういえば、響くんは王子様だったんですね。


ということは…


私は慌てて台本を読み直す。


キス…シーンがあります…


響くんが…


笹川サンと…??


……いや、いくらなんでも演技なんですから!


本当にキスなんてしませんよね!


………ですけど…


私はもう一度台本を読み直してみた。


眠り姫と王子様は、最後に結婚するんですよね……??


胸が、締め付けられるように痛くなる。


たとえそれが演技でも…


響くんの隣には、私じゃなくて、笹川サン。


胸の痛みがひどくなる。


…こんなことなら響くんが【王子様】の役になんか選ばれなかったらよかったのに。


私は思わずそう思ってしまった。




そして文化祭当日。


私は一応家でも学校でも一生懸命に練習しました。


今日はがんばって、精一杯その成果を出し切りたいと思います!


ちなみに私達のクラスの発表は4番目です。


他のクラスは合唱やバンドなど…


いろいろと楽しめる出し物をしていて、とても楽しむことができました。


そしてついに私達のクラスの番。


…すっごく緊張します。


私の出番は実はあまりないんですけど…


それでも大勢の人の前で何かをするっていうのはとても緊張しますね…


「望月、大丈夫か??」


本番前、響くんが声をかけてくれた。


「は、はい…それなりに練習はしてきたつもりですけど…」


ちゃんと、できるでしょうか…??


「そう。あとおまえ、その衣装全然似合ってないな」


響くんはそう言ってぷっと笑った。


「へっ…??そ、そうですか??」


そんなに笑ってしまうほど似合っていませんか!?


なんだか…


ほんの少しショックです…


響くんは…


私はあらためて響くんの姿を見た。


そして心臓が高鳴る。


響くんの衣装は、青い、豪華そうに見えるけど、シンプルな服。


それがあまりにも響くんに似合っていて、本当に王子様みたいだった。


「響くんは…」


「滝沢クン!詩織ちゃん!」


私の言葉をさえぎるように、笹川サンが私達の名前を呼んだ。


そしてこっちにかけよってくる。


「今日はがんばりましょうね!」


笹川サンそう言ってにこっと私達に笑いかけた。


私までドキッとしてしまうほど、きれいな笑顔。


眠り姫の衣装も、笹川サンには驚くほど似合っていた。


響くんと笹川サンが並んで立つと、2人のあまりのきれいさに心が奪われてしまう。


それほど響くんと笹川サンはお似合いだった。


私なんかよりも、ずっと………


笹川サンの方が、響くんに似合っている。


それなのにずうずうしくも響くんの隣にいる自分がとても恥ずかしいと思った。


ついに、劇が始まる。


私の出番はあっという間に終わり、響くんと笹川サンの出番になった。


王子様ひびきくん眠り姫ささがわサンが眠るお城へとたどりつく。


王子様ひびきくん眠り姫ささがわサンを見つけ、そっと眠り姫ささがわサンの髪をなでた。


「“なんて、美しい人なんだろう…”」


ズキッ…


ただのセリフだと、ただの演技だと分かっているのに、胸が痛くなった。


勝手な嫉妬心を抱いてしまう。


私はそんな気持ちを振り払った。


ついに王子様ひびきくん眠り姫ささがわサンにキスする。


予定では、寸前で止めるはずだった。


それなのに…


響くんが笹川サンの唇の前で寸止めをしたとき、


笹川サンがほんの少し首をあげた。


響くんと笹川サンの唇が重なる。


「………!!」


ショックで、わけがわからなくなった。


瞳に温かい物があふれる。


「い…や…」


響くんと笹川サンがキスした。


その言葉だけが頭の中を巡る。


いたたまれなくなって、私はその場から逃げるように走った。


「詩織!?」


後ろから優香ちゃんの声が私を呼ぶ声がした。


それでも私は夢中で走った。


衣装を着替えることも忘れていた。


文化祭を見にきていた人が、走る私を不審げな目で見る。


でもそんなこと、まったく気にならなかった。


瞳からは涙がとめどなく流れ落ちる。


私は逃げ込むように屋上に行った。


そして壁を背にして座りこむ。


「あ…ひ、響くん…」


分かってる。


響くんもそんなことするつもりはなかった。


ですけど…


響くんが他の女の子とキスした。


その現実が、胸をしめつける。


私が、私が初めにしたかったのに…!!


どうして…


どうして笹川サンが……??


どうしてですか…??


たしかに響くんと笹川サンはお似合いかもしれません。


それでも…


それでも、響くんは私だけの響くんなのに………!!!!


私はしばらくそこで泣き続けた。


たくさん、たくさん泣いて、涙も枯れかけてきたころ…


「望月…!?」


聞きなれた低い声と一緒に、屋上の扉が勢いよく開いた。


「ひ、響くん……??」


そこには、息を切らした響くんがいた。


枯れかけていた涙が、またあふれだす。


「ど、どうして…」


「どうしてって…こっちが聞きたいよ。おまえ、いきなりこんなとこきて一体どうしたんだ??結構探したんだぞ??」


響くんは泣いてる私を不思議そうに見ながら言った。


もしかして…


響くんは、分かってないんですか…??


「だって…響くんが、笹川サンと…!初めては…私が…!」


気持ちを伝えたいのに、涙のせいでうまく言葉にならなかった。


だけど響くんには大体意味が伝わったらしい。


私を見て、ほんの少し目を見開いた。


「おまえ…そんなこと気にしてたのか…??」


そんなことって…


私にとっては、すごく重要なことなんですよ…??


響くんはぽんっと私の頭を軽く叩いた。


「あんなの事故だよ。事故。だから気にしなくていいって」


響くんになだめられて、だんだんと涙が止まっていく。


やっと普通に話せるようになってから、私は口を開いた。


「…でも、事故だったとしても、響くんは笹川サンとキスしたじゃないですか…」


そのことは、消せない事実なんですよ??


響くんのファーストキスは、笹川サンに取られてしまったんですよ…??


「私…響くんの初めての相手になりたかったのに…」


つぶやくようにそう言うと、響くんは驚いたように頬を赤く染めた。


そして、私の体が何かに包まれる。


「…えっ??」


響くんに、抱きしめられていた。


驚いて、体中の血が顔に集中する。


心臓が早鐘のように早く鳴り響いた。


どうなっているんですか…??


どうして私は響くんに…


抱きしめられているんですか…??


「…オレ、こんなことしたのって初めてだ」


響くんは小さな声でぽつりと言った。


「……??」


響くんはほんの少し、口を閉ざす。


そしてためらうように言った。


「…だから、オレの他の初めては全部おまえだから…さっきのことなんて、気にすんな」


一瞬、響くんの言葉の意味を考えて、すぐにそれを理解する。


同時にとても幸せな気持ちになった。


「はい…!」


私は笑顔でそう言って、響くんの背中に手をまわした。


響くんがほんのすぐそばにいる。


響くんの香りを感じる。


響くんの吐息を感じる。


私は今、響くんに包まれている。


とても幸せで、ずっとずっとこうしていたいと思った。

文化祭の話が書きたかったんですが…

ちょっと中途半端になってしまいました…(-_-;)

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