★16話 やきもち★響side
夏休みが終わり、新学期が始まった。
そして新学期が始まって一週間くらいがたった。
「それでですね、その人が私にぶつかったのに私その人に睨まれたんですよ!どう思います!?」
「まぁ、そんな奴ってよくいるからな…」
オレはいつものように望月とどうでもいいような話をしながら帰っていた。
いつもどおりの帰り道。
だけど、今日は少し違うことがおきた。
「詩織?」
望月の名前を呼ぶ、男の声。
初めは近くに望月と同じ名前のやつがいるのかと思った。
だけど望月は声のした方を見て、目を見開いた。
「伊吹??」
そして知らない名前を呼ぶ。
そこにいたのはオレ達と同い年くらいのどこにでもいそうな普通の男。
伊吹と呼ばれたその男は望月を見て顔を輝かせた。
「やっぱり詩織だ!ひさしぶり!」
「ひさしぶりですね!」
望月もうれしそうに笑う。
望月がオレ以外の男に笑顔を見せたことに、ほんの少しの苛立ちを覚えた。
「小学校の時以来だよな?なんかすっげぇ変わってたから詩織かどうかわからなかったんだけど、声かけてみて良かったよ」
「私も一瞬誰かと思いましたよ…だって伊吹ったらすっごく背ものびてますし、顔も大人っぽくなってるんですもの」
オレのことはおかまいなしで、2人は楽しそうに話し出した。
望月…
オレがいること忘れてねぇか…??
大体こいつ誰だよ。
望月の知り合いなのか??
「望月、誰?」
そう尋ねてみると、望月ははっとしたように言った。
「えっと、この人は原田伊吹っていって私の幼なじみです」
「あっ、もしかして詩織の彼氏?」
原田はオレを見て、少し驚いたようにそう言った。
「そうだけど」
オレはきっぱりとそう言った。
だから望月に気安く話しかけるな。
そう言ってしまいたかった。
だけどその言葉をぐっとのみこむ。
「ふーん。名前、なんていうの??」
「滝沢響」
原田はじーっとオレを見て、急ににっと笑った。
「そう。んじゃ滝沢!よろしくな!」
「………」
オレは何も答えずに、軽く原田を睨む。
オレはなんとなく望月と親しかったそうなこの男に敵意を覚えていた。
ほんの少し、気まずい空気になる。
原田はそれにたえられなくなったのか、ふと望月に言った。
「んじゃオレ急いでるし…あっ、詩織!とりあえずアドレス交換しようぜ!」
そして鞄からケータイを取り出す。
「は、はい!」
望月も慌てたようにケータイをとりだした。
オレは2人がアドレスを交換する様子を、止めるわけでもなくただ眺めていた。
「…よし!それじゃぁな、詩織!!」
アドレスの交換が終わり、原田はにっと笑って望月に手をふる。
望月も手を振り返した。
その様子を見て、なぜか苛立ちが大きくなる。
…なんであいつ、望月のこと名前で、しかも呼び捨てで呼んでるんだよ…
しかも望月もあいつのことを名前で、しかも呼び捨てで呼んでるし…
こいつら、どういう関係だったんだ?
そのことがたまらなく気になった。
「…仲、良かったのか?」
原田の姿が見えなくなったあと、望月にそう尋ねてみる。
「あ、その…」
望月は返事にとまどった。
なんだよ…
オレに言えないような関係だったのか…??
嫌な感情が頭の中を渦巻く。
オレはなんとかそれを振り払った。
…いや、別に望月とあいつがどんな関係だったかんてどうだっていいだろ?
今、望月はオレのことを好いてくれているんだから。
オレはなんとか顔に笑顔をはりつけた。
「別に気にしてないから。嫌なら答えなくていいぞ」
望月はほんの少し目を見開き、少しの間をおいて小さな声でつぶやいた。
「…伊吹は私の初恋の相手です」
ズキッ
なぜか胸に突き刺さるような痛みが走った。
初恋…の、相手??
また、もやもやとした感情が頭の中を渦巻く。
いや…、それって昔の話だろ??
……でもオレの初恋は望月だ。
別にいいじゃないか。
さっきも思った通り、今の望月が好きなのはきっとオレなんだ。
……だけど、望月にはたしかに原田のことが好きだったころがあったんだ。
……もしかしたら、またそうなるかもしれない。
…………なんで、あんな普通のやつが『初恋の相手』なんだよ…………
思わずそう思ってしまった自分に嫌気がさした。
そしてそんな気持ちを望月に悟られないようにできるだけ普通を装った。
「ふーん。意外だな」
そう言って無理に笑顔を作る。
「そうですか??」
望月はそう言ってにこりと笑った。
その後の帰り道、オレ達の間にはなぜか気まずい空気が流れていた。
次の日の放課後。
「すいません。私、今日は伊吹と帰る約束をしてしまったんです」
帰ろうとした時に、急に望月にそうきりだされた。
原田…と…??
一緒に帰るって…
なんでだよ……??
もしかして昨日、オレが知らない間にあいつと望月との間に何か会ったのか…??
もしかして…
望月はまた、原田のことを………??
そんな考えがふと頭にうかんだ。
そしてすぐにその考えを振り払う。
…いや、きっと望月は原田と小さい頃の話とかをしたいだけなんだ。
一日くらい…
いいじゃないか…
「ああ、分かった」
オレはそうって笑顔をつくった。
ここで怒ったような素振りを見せたら望月を困らせてしまうだけだ。
もし、これから先ずっと原田と帰るとかいいだすようなら止めればいい。
オレはそこまで望月を縛りつけようとは思わない………
望月はオレにさようならと頭を下げると、教室を出ていった。
その後ろ姿を見送りながら、ふと思う。
……本当に??
本当は、望月をオレだけのものにしてしまいたいんじゃないのか…??
オレから離れられないように縛りつけてしまいたいんじゃないのか…??
だってオレは、望月が他の男と話しているだけでいらいらするんだ。
望月が他の男に笑顔を向けているのをみると、その男が殺したいほど憎いと思ってしまうんだ。
…………いや、
男だけじゃ、ないかもしれない…
本当は、他の誰に対しても……
そう思った自分に驚き、オレは頭をかかえた。
「…オレ、何考えてんだよ…??」
今まで気付きもしなかった自分の強い独占欲に、強い嫌悪感を覚えた。
次の日の昼休み。
オレは望月と屋上で昼飯を食べていた。
「あの、響くん…」
今までなぜか黙り込んでいた望月が急に口を開く。
「何??」
もしかして…
原田のことが好きになったから、別れてくれとかいいだすんじゃねぇだろな…??
オレは焦る気持ちをおさえて、なんとか平静を装いながら言った。
「…私、昨日伊吹とホテルに言ったんです」
………!!!!
ホ、テル……??
望月…
もしかして、昨日原田と………
プチッ
オレの中で何かが切れる音がした。
同時に自分でも嫌悪してしまうほどの強い独占欲をおさえられなくなる。
「…どういうこと?」
望月がビクッと体を震わせた。
「い、いや…そ、その…!?」
戸惑う望月の両手をおさえつけ、そのまま望月をフェンスに押しつける。
「やっ…響、くん…??」
怯えた声。
怯えた表情。
いつものオレなら、こんな望月の表情を見るだけで罪悪感を感じる。
だけど、今オレの頭の中にはひとつの言葉だけが渦巻いていた。
……オレは望月を信じていたのに、望月はオレを裏切った……
「おまえ、それであいつと何したんだ??」
オレはそう言って望月を睨んだ。
望月の瞳に涙がたまる。
「い、いや…その、さっきのは冗談です…すいません…」
望月は小さな声でそう言った。
だけど、オレは望月をおさえる手をはなそうとはしなかった。
本当に冗談なのか??
もし冗談だとしても、そんな冗談言っていいと思っているのか??
「本当は冗談なんかじゃないんだろ?正直に言えよ」
オレはそう言って望月の首筋にキスした。
「あっ…!」
望月の体がびくっと震え、いつもと違う高い声をだす。
その声が魅力的で、そしてそれを、いや、それ以上の声を原田が聞いたのかもしれないと思うと、嫌な感情で頭がいっぱいになる。
「こういうこと、されたんじゃねぇの??」
オレは小さく笑いながら言った。
望月は慌てて言いかえす。
「ち、違います…!!伊吹とはそんなのじゃありませんっ!」
望月が原田の名前を呼び捨てにしたことに強い怒りを感じた。
「あいつのこと、呼び捨てで呼ぶなよ!」
そう望月を怒鳴りつける。
「ご、ごめんなさい…」
望月は体を震わせて、小さな声で謝った。
…謝れば、許してもらえるとでも思っているのか??
オレは笑顔をつくった。
そして望月の髪をなでる。
「別に、怒ってねぇよ…??」
怒っているわけじゃない。
ただ、おまえがオレだけのものだっていう自覚がないから…
気付かせてやろうとしているだけだよ。
「その変わり、オレのことも呼び捨てで呼んでみろよ」
望月は小さく目を見開いた。
「えっ…!?あっ!」
オレが望月の耳たぶを甘がみすると、また望月は高い声をだす。
「響って呼んだら許してやるよ…」
耳元でそう囁いてみると、望月の表情が魅力な表情に変わる。
だけど望月はオレの名前を呼ぼうとはしなかった。
なんだよ…
おまえはオレの彼女なんだろ?
それなら別に名前くらい呼び捨てで呼べるだろ…??
………ああ、そうか。
「もっとして欲しいから呼ばないのか?」
オレは望月の首筋をなめあげた。
「あぁっ…!」
オレは望月の声に夢中になった。
もっともっと、その声が聞きたくなる。
オレは望月の制服のリボンをはずした。
そして望月の胸元のボタンに手をかける。
「い…や…」
望月は震える声で、そうつぶやいた。
オレはそんな望月を強く睨む。
「おまえが悪いんだ」
おまえが変なこと言うから…
おまえがオレの気持ちも知らずにあんな奴と親し気にするから…
オレは、気付きたくもない感情に気がついちまったんだよ。
全部全部、おまえのせいだ。
オレは作業を続けた。
望月の胸元が少しずつ露わになってく。
「響くん…お願いです…」
望月はうったえるように言った。
その頬に涙が伝う。
思わず、オレは手を止めた。
「元の…優しい響くんに戻ってください…」
望月のその言葉が、頭の中に響いた。
…………オレ、何やってるんだ??
「もち…づき…??」
オレは自分がしていたことに驚き、望月を見た。
望月は顔を赤く染めて、頬に涙を伝わせている。
そしてオレの手で、少し開かれた胸元。
顔が、沸騰するほどに熱くなった。
慌てて望月を解放する。
望月は崩れ落ちるようにそこに座りこんだ。
「響くん…ごめんなさい、ごめんなさい…私…」
そして涙をぽろぽろと流しながら謝罪の言葉を繰り返す。
なんで…
なんでおまえが謝るんだよ……??
オレは泣きながら謝る望月の頭をなでた。
「オレも…急に変なことしてごめん…」
でも、止められなかったんだ。
いつもなら絶対あんなことできないのに…
望月がオレ以外のやつと寝たかもしれないと思うと、嫉妬心を止められなかったんだ。
オレって…
本当に最低なやつだよな……
「私、ただ、響くんにやきもちを焼いて欲しくて…」
望月は涙声でそう言った。
驚いて、思わず目を見開く。
それじゃ…
原田と一緒に帰ったのも、さっきあんなこと言ったのも…
オレは安心して、望月に笑いかけた。
「…なんだ、そんな理由か」
そんな余計なことしなくても…
「……心配しなくても、やきもちなんてあいつがお前の名前を呼んだときからずっとやいてたよ」
あいつが、おまえの名前を呼び捨てで呼んだ時から。
おまえが、あいつに笑いかけた時から。
望月は目を見開いて、そして安心したように笑った。
その笑顔を見て、オレは思った。
…もう、絶対に望月にこんなことしない。
絶対に望月を傷つけるようなまねはしない。
そしてそれを必ず守りとおそう。
それを心に誓った。
………自分で読み返してみて、まったく意味がわかりませんでした。




