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純情恋模様  作者: karinko
31/78

☆16話 やきもち☆詩織side

まだまだうだるような暑さが続いていますが…


とりあえず、9月になりました。


夏休みは終わりを迎え、新学期が始まっています。


事件(?)が起きたのは、新学期を迎えて1週間程がたったときのことでした。


私はいつものように響くんと一緒に帰っていました。


「それでですね、その人が私にぶつかったのに私その人に睨まれたんですよ!どう思います!?」


「まぁ、そんな奴ってよくいるからな…」


と、そんなふうに私達がたわいもない話をしていた時…


「詩織?」


ふと誰かに名前を呼ばれた。


どこか懐かしい声。


えっと…


誰でしたっけ??


声のした方を見てみるとそこには懐かしい姿があった。


「伊吹??」


伊吹は私を見て顔を輝かせた。


「やっぱり詩織だ!ひさしぶり!」


「ひさしぶりですね!」


私もひさしぶりに会えたことがうれしくって笑顔で答えた。


「小学校の時以来だよな?なんかすっげぇ変わってたから詩織かどうかわからなかったんだけど、声かけてみて良かったよ」


「私も一瞬誰かと思いましたよ…だって伊吹ったらすっごく背ものびてますし、顔も大人っぽくなってるんですもの」


本当にあのときは私よりも小さくて子供っぽかったのに…


いつの間にか私よりすごく背が高くなってますし…


もう『子供』じゃないって感じですね!


「望月、誰?」


響くんが怪訝そうな顔でそう聞いてきた。


あっ、そうでした…


響くんは伊吹のことを知らないんでしたね…


「えっと、この人は原田伊吹っていって私の幼なじみです」


「あっ、もしかして詩織の彼氏?」


伊吹は響くんを見て言った。


えっと…


私は心配しながら響くんを見た。


もし否定されたらどうしましょう…


だけど心配する必要はなかった。


「そうだけど」


響くんがきっぱりとそう言ってくれたから。


心臓の鼓動が少し強く鳴る。


私は思わず小さな笑顔をうかべた。


「ふーん。名前、なんていうの??」


「滝沢響」


響くんは短くそう答えた。


伊吹はにこっと響くんに笑いかける。


「そう。んじゃ滝沢!よろしくな!」


「………」


響くんはなぜか返事をせず、軽く伊吹を睨んだ。


…えっと、


何でしょうか?


この空気は…


「んじゃオレ急いでるし…あっ、詩織!とりあえずアドレス交換しようぜ!」


伊吹はそう言ってケータイをとりだした。


「は、はい!」


なんとなくこのまま伊吹といると響くんの機嫌が悪くなりそうなので私は急いでケータイをとりだした。


「…よし!それじゃぁな、詩織!!」


アドレスの交換が終わり、伊吹はそう言って笑顔で私に手をふった。


私も手を振り返す。


そして伊吹の姿が見えなくなった後…


「…仲、良かったのか?」


ふいに響くんがそう聞いてきた。


「あ、その…」


じ、実は…


伊吹は、私の初恋の相手だったんですけど…


そんなこと、響くんには絶対に言いたくありませんし…


えっと…


なんて言えばいいんでしょうか…??


私が戸惑っていると響くんはにこりと私に頬笑みかけた。


「別に気にしてないから。嫌なら答えなくていいぞ」


それを聞いて、私はほっと安堵の息をもらした。


そして同時になぜか小さな苛立ちを覚える。


響くんは…


私が他の男の子と仲が良かったなんて聞いても平気なんですか…??


「…伊吹は私の初恋の相手です」


私は正直にそう答えた。


…響くんはどんな反応をするんでしょうか?


私はほんの少し期待をした。


何を期待したのかは分からない。


だけど響くんの反応は私の期待とは大きくかけはなれたものだった。


「ふーん。意外だな」


響くんはそう言って笑った。


…なんでそんな風に笑えるんですか…!?


「そうですか??」


私はたしかな苛立ちを覚えながらも、にこりと笑った。


…なんで私もこんな風に笑っているんでしょうか…??


その日の帰り道、私の頭の中はもやもやとした気持ちでいっぱいだった。




そしてその日の夜。


プルルルル…


ケータイの着信音が鳴った。


響、くんでしょうか…??


そう思いながらメールを確認してみる。


それは伊吹からだった。


ほんの少しがっかりする。


そう思った自分に驚いた。


小学校のころは、伊吹からの電話が飛びあがるほどうれしかったのに…


私の心にはいつの間にか、本当に響くんしかいなくなったんですね。


そう思って小さな笑顔をうかべた。


そして伊吹からのメールをひらいてみる。


【明日、学校の前で待ってるから一緒に帰ろうぜ!】


えっ………??


メールの内容に、私は思わず目を見開いた。


一緒に帰ろうと言われましても…


私は響くんと一緒に帰りますし…


【すみません。私、響くんと一緒に帰るので…】


本文を打ち終わり、送信ボタンを押そうとして思いとどまった。


…もし、私が伊吹と一緒に帰ったなら…


響くんは、やきもちを焼いてくれるでしょうか…??


私は元の文を消して、新しい文を打ちなおした。


【いいですよ】


そして送信ボタンを押す。


ケータイを閉じて、それを胸の前に当てる。


すいません、響くん…


だけど私、どうしても響くんにやきもちをやかれてみたいんです。


こんな勝手な私でごめんなさい…




そして次の日。


「すいません。私、今日は伊吹と帰る約束をしてしまったんです」


放課後、私は響くんにそう言って頭を下げた。


響くんはほんの少し目を見開き、小さな笑顔をつくった。


「ああ、分かった」


その反応にまた、小さな苛立ちを覚える。


響くんは私が他の男の子と帰るって言ってもやきもちをやいてくれないんですね…


やっぱり響くんはその程度しか私のことを思ってくれていないってことですか??


私は響くんにさようならと頭を下げると教室をでた。


そして外に出てみると、校門の前に伊吹が立っていた。


そして私を見て片手をあげる。


「よっ、詩織!」


「遅くなってもうしわけありません…」


私がそう言うと伊吹はにっこりと笑った。


「全然遅くなんかなってねぇよ??それじゃ、行こうか!」


私は伊吹と並んで歩きはじめた。


そして駅につくまで、私は伊吹と小学校のころの話に花を咲かせた。


「そういえば、おまえってオレのこと好きだったんだろ?」


ふいに伊吹がそう言った。


思わず心臓の鼓動が強く鳴る。


「え、ええ…そうですよ…??」


私がそう答えると、伊吹は照れたように笑った。


「実はオレも詩織のことが好きだったんだぜ?でも詩織と中学離れちまうし…あきらめてたんだ」


そして伊吹は急に真剣な顔で私を見た。


「…でも、また詩織と会えた。オレ思ったんだ。それって運命ってやつじゃないのかって」


「えっ…??」


伊吹は少し頬を染めた。


そしてまっすぐに私の目を見つめて言う。


「オレ、まだ詩織のことが好きなんだ」


ドキッ


心臓の鼓動が高鳴る。


ど、どうして今頃そんなこと言うんですか…??


「で、でも…私には響くんがいますし…」


「オレ、昨日見て思ったんだけど、詩織とあいつって合ってないと思うぞ?」


「………!!」


ズキッ


胸が締め付けられるように痛くなった。


たしかに…そうかもしれませんが…


そんなにはっきり言われると…


「だってあいつ目つき悪いし…なんか不良っぽいし…詩織には悪いけど、詩織とは合ってないと思う」


そうなんでしょうか…??


やっぱり私と響くんは合っていないんですか…??


…ですけど、


「だからって、私は響くんとお付き合いしてはいけないんですか?」


私は伊吹にそう尋ねてみた。


「いや…そういうわけじゃねぇけど…」


「なら、いいじゃないですか。私はたしかに響くんと合ってなんかいないかもしれませんが、それでも響くんが好きなんです」


伊吹は目を見開いて、そして悲しそうに笑った。


「…そうか。なんか悪いな、変なこと言って」


「…私こそ、すいません」


少しの沈黙が続く。


しばらくして、伊吹が沈黙を破った。


「…よし!んじゃオレ、おまえと滝沢を応援してやるよ!今、なんか悩み事とかねぇか??」


「え…??」


悩み事、ですか…??


……響くんが私にやきもちを焼いてくれないこと……


ふいにそんな考えが頭にうかんだ。


ですけど…


たった今、きっと私が傷つけてしまった伊吹にそんなことを言うのは気が引けます…


私が戸惑っていると伊吹はにっと笑って言った。


「オレのことなんか気にしなくていいからさ!なんでも言えよ!!」


……伊吹は優しいですね。


なんとなく、伊吹は少し響くんに似ている気がします。


そんな伊吹に…


私は甘えてしまってもいいのでしょうか…??


少し悩んで、私は口を開いた。


「響くんが、私にやきもちをやいてくれないんです」


「やきもち??」


私はこくりとうなずいた。


「響くん、私の初恋の人が伊吹だって言っても普段どおりなんですよ?それに今日だって…伊吹と一緒に帰るって言っても普段どおりでしたし…」


私が響くんの立場なら、絶対にやきもちをやいてしまうのに…


やっぱり、こんなにも響くんを好きなのは私だけで、響くんは私のことをそこまで好いてはくれていないということなんですか…??


「…んじゃ、オレが滝沢にやきもちをやかせる方法教えてやるよ」


伊吹はにやりと笑ってそういった。


「やきもちをやかせる方法…??」


伊吹はうなずいた。


そして私の耳元である言葉をささやく。


私は目を見開いた。


「そんなこと…とても言えませんよ…」


「でも、そう言ったら確実にあいつはやきもちをやくと思うぜ??」


そう言って伊吹はまたにやりと笑った。




次の日。


私は響くんと屋上で昼食をとっているときに、昨日伊吹に言われたことを実行してみることにした。


「あの、響くん…」


「何??」


響くんは焼きそばパンの袋を開けながら言った。


…本当に、こんなこと言っていいんでしょうか…??


ですけど…


私、響くんにやきもちをやいて欲しいですし…


これでやきもちをやいてくれなかったら、響くんはそこまで私のことを好きじゃないってことですよね…??


「…私、昨日伊吹とホテルに言ったんです」


ピクッ


響くんの肩眉が動いた。


「…どういうこと?」


そしていつもよりも低い声で言う。


ビクッ


思わず私は体を震わせた。


「い、いや…そ、その…!?」


急に響くんに両手を押さえつけられた。


響くんはそのまま私をフェンスに押しつける。


「やっ…響、くん…??」


「おまえ、それであいつと何したんだ??」


響くんは低い声でそう言い、私を睨みつけた。


……!!


瞳に涙がたまる。


響くんが怖いと感じた。


「い、いや…その、さっきのは冗談です…すいません…」


そう言えば、優しい響くんは許してくれると思った。


だけど響くんは私を押さえつける手をはなそうとはしない。


「本当は冗談なんかじゃないんだろ?正直に言えよ」


響くんはそう言って私の首筋に乱暴にキスした。


「あっ…!」


驚いて、思わず高い声がでる。


「こういうこと、されたんじゃねぇの??」


そう言ってふっと笑う。


だけどその目はまったく笑っていなかった。


「ち、違います…!!伊吹とはそんなのじゃありませんっ!」


「あいつのこと、呼び捨てで呼ぶなよ!」


響くんはそう怒鳴った。


体がびくっと震える。


「ご、ごめんなさい…」


私が謝ると、響くんはにこっと笑った。


そして優しく私の髪を撫でる。


「別に、怒ってねぇよ…??」


響くんは優しくそう言ってくれた。


その声を聞いて、私は響くんが許してくれたんだと思った。


ほっとして安堵の息を漏らしたとき、


「その変わり、オレのことも呼び捨てで呼んでみろよ」


そう言われて、響くんはまだ全然私のことを許してくれていないことに気がついた。


「えっ…!?あっ!」


響くんは私の耳たぶを甘がみした。


そして耳元で囁く。


「響って呼んだら許してやるよ…」


甘い、甘い声に思わずくらっとしてしまう。


だけど、それは本当の響くんの声じゃなかった。


そして私は悟った。


私は…


たった一言で、響くんをこんなにおかしくなるくらいに傷つけてしまったんですね…


きっと響くんは私を困らせないように、無理して普通にしててくれたのに…


無理して笑っててくれたのに…


私…


最低です…


「もっとして欲しいから呼ばないのか?」


響くんはそう言って、私の首筋をなめあげた。


「あぁっ…!」


また高い声がでて、涙があふれる。


響くん…


私は、どうすれば許してもらえるんですか…??


どうすれば、もとの優しい響くんに戻ってくれるんですか…??


シュルッ


響くんが私の制服のリボンをはずした。


そして胸元のボタンをあける。


「い…や…」


私は震える声でそうつぶやいた。


そんな私を響くんはきっと睨む。


「おまえが悪いんだ」


そう一言言って、また作業を続ける。


いやです…


私…


こんな響くん、嫌です…!


「響くん…お願いです…」


頬に涙が伝った。


響くんの手がぴたりと止まる。


「元の…優しい響くんに戻ってください…」


響くんがほんの少し、目を見開いた。


そして驚いたように私を見る。


「もち…づき…??」


響くんの顔がだんだんと赤く染まっていった。


そして慌てて私を押さえつけていた手をはなす。


良かった…


いつもの、響くんです…


私は安心して、思わずそこに座り込んだ。


ぽろぽろと涙があふれ出てくる。


「響くん…ごめんなさい、ごめんなさい…私…」


どれだけ謝ったらいいのか分かりません。


私のせいで響くんがあんなふうになるほど傷つけてしまって…


響くんはそっと私の頭をなでた。


「オレも…急に変なことしてごめん…」


…どうして響くんが謝るんですか??


全部全部私が悪いのに…


響くんは全然悪くなんてないのに…


「私、ただ、響くんにやきもちを焼いて欲しくて…」


私がそう言うと、響くんは目を見開いた。


そして優しい笑顔を私に向ける。


「…なんだ、そんな理由か」


響くんは頬を染めると、少しの間を置いて小さな声で言った。


「……心配しなくても、やきもちなんてあいつがお前の名前を呼んだときからずっとやいてたよ」


私は驚いて、目を見開いた。


そしてほっと安堵する。


良かった…


やきもちをやいてくれるってことは響くんは私のことをちゃんと好きだってことですよね??


さっきは怖い思いしましたけど…


私、その気持ちを知ることができて、すごくうれしいです。

響が詩織に何にもしてくれないので、ちょっとこんな話にしてみました。

こんな風にでもしなくちゃ何もできなさそうなので…

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