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純情恋模様  作者: karinko
28/78

★14話 夏祭り★響side

太陽が沈みかけ、薄暗くなってきた夕方。


オレは神社の鳥居の前にいた。


なんでオレがこんな時間にこんなところにいるかというと…


「滝沢サン!」


可愛らしい声がオレの名前を呼んだ。


声のした方を見ると、そこには浴衣姿の望月がいる。


オレは望月に笑いかけた。


今日は夏祭り。


オレはここで望月を待っていたんだ。


望月はとことこと走ってオレのそばにきた。


「遅れてすいません…浴衣を着るのに少し手間取ってしまって…」


そして申し訳なさそうに言う。


「ああ、別に。全然待ってないから」


オレはそう言って軽く笑った。


まぁ10分くらい待ったけど…


心の中でそうつぶやく。


そしてあらためて望月を見た。


さっきもいったとおり望月は浴衣姿。


シンプルで清楚な浴衣が望月にぴったりで、余計に可愛らしくみえる。


ま、これが見れたんだから10分くらいどうだっていいか。


「それじゃ、行きましょうか」


オレ達は鳥居をくぐった。


神社の中は人であふれかえっていた。


なんとなく知り合いがいそうな雰囲気だ。


というか…


絶対にいるだろうな…


そう思い、オレは軽いため息をついた。


「あっ!滝沢サン、あれやりましょうよ!」


望月が屋台を見回したかと思うと、すぐに金魚すくいの屋台を指差してそういってきた。


「金魚すくい??いいけど…」


普通金魚すくいって盛り上がってきたころにやるもんじゃないか??


…まぁ、望月がやりたいんならなんでもいいけど。


オレ達は金魚すくいの屋台の前にいった。


そして金を払い(200円ってちょっと高くねぇか…?)、ボールとポイをもらう。


望月はボールとポイを手にするときょろきょろと水槽を見回して、一番金魚が多そうな水槽の前にしゃがみこんだ。


オレも望月の隣にしゃがみこむ。


「さぁ、たくさんすくいますよー!」


望月は意気揚揚と言い、金魚が集まっているところにポイをいれた。


当然だが金魚はそこから逃げていく。


望月は不思議そうな顔をしてまた金魚が集まっているところにポイを動かした。


やっぱり金魚はそこからはなれていく。


望月はそれでむきになったようで1匹の金魚を追い、無理やりすくいあげた


あーあ…


それって一番失敗するすくい方だろ…


思ったとおり、望月がすくいあげた金魚はポイの上で暴れ、紙はすぐに破れた。


望月があからさまにショックな顔をする。


「おまえもう破れたのかよ…」


オレがあきれてそう言うと、望月はしゅんとした声で言った。


「だってこれ、すぐにやぶけてしまうんですもの…」


それはお前のすくい方が悪いからだよ。


「普通そんなにすぐやぶれねぇよ」


オレはそう言って、望月と同じように金魚がたくさん集まっているところにポイをいれた。


そしてその中の1匹を水槽の端に追い込んでそのそばにボールをもってくる。


そのままオレは金魚をすばやくボールの中にいれた。


「わー…滝沢サン、うまいですね…」


望月は関心したように言った。


「いや、これくらい簡単だろ」


金魚端っこに追い込んだらいいだけだし。


まぁそれにもちょっとしたコツがいるけどな。


オレは少し得意気になり、そのあと破れるまでに全部で6匹の金魚をすくった。


店の人がオレがすくった金魚を袋にいれてオレに手渡す。


…金魚なんかもらってもいらねぇんだけどな。


オレは望月を見た。


望月は金魚を見て、いかにも欲しそうな顔をしている。


…わかりやすいやつだな。


オレは望月の前に金魚の袋をつきつけた。


「やるよ」


オレがそう言うと望月は戸惑うように言った。


「え…??いいんですか?」


オレはうなずいた。


良いも何もオレはもらってくれた方がうれしいし。


だって家に持って帰ってもどうせ殺しちまうだけだしな…


「ありがとうございます!」


望月は金魚をうけとるとにっこりと笑ってそう言った。


その輝くような笑顔に、思わずオレも笑顔になる。


「ああ、それじゃ次どこの店行く?」


「そうですね…やっぱり次は食べ物屋さんでしょうか?」


そうだな。


夏祭りといえばやっぱ食べ物屋だよなー…


「食べ物屋か…食べ物屋といったらやっぱり…」


夜店には定番のあれだろ。


「リンゴ飴ですよね!」


「ベビーカステラだよな」


望月とオレは同時に言った。


そして驚いて顔を見合わせる。


「やっぱり、リンゴ飴ですよね?」


望月は確認するようにそういってきた。


「いや、ベビーカステラだろ」


だって夜店って聞いたらつい買ってしまうだろ?


リンゴ飴なんてたしかに周りの飴はおいしいかもしれねぇが中のリンゴはぱさぱさしててまずいだけじゃねぇか。


「絶対リンゴ飴です!!」


望月がなぜか怒ったように言ってくる。


それで思わずオレもむきになって言い返した。


「いや、絶対ベビーカステラだろ!!」


望月がきっとオレを睨んできた。


負けじとオレも睨み返す。


しばらく睨みあった後、望月は不意にオレに背を向けた。


「もういいですよ!滝沢サンなんて1人でベビーカステラでもなんでも食べてればいいんです!」


そしてそう怒鳴る。


「はぁ!?なんだよ、それ!」


望月はオレを無視してオレから離れるように歩いて言った。


何怒ってんだよ、あいつ!!


「望月!」


名前を呼んでも望月はオレを無視して早足でオレから離れていく。


あとを追おうとしても、人ごみに邪魔されて思うように進めない。


そしてあっという間に望月の姿は人ごみにのまれてしまった。


…なんであんなどうでもいいことでこんな風になるんだよ。


やっぱあいつわけわかんねぇ…


でも…


オレはさっき望月と睨みあったときのことを思い出した。


望月がオレに背を向ける前、望月がちょっとおびえたような表情をした気がする…


…そうだ。


オレ、なんかむきになって本気で睨んじまった…


望月ははじめオレのことを怖がってたんだ…


あんな風に睨んだら、おびえるのは当然なのに…


オレがあんなどうでもいいことにむきになったから悪いんだ…


別にベビーカステラなんてどうだっていいじゃないか。


オレは望月が喜ぶ顔を見れたらそれでいいんじゃなかったのか??


オレはあたりを見回して、リンゴ飴の屋台を探した。


それはすぐに見つかり、オレはそこでリンゴ飴を2つ買った。


望月、これで許してくれるだろうか…??


でも、もし許してくれなくても望月がこれで少しでも喜んでくれたらいいか。


そう思い、望月の姿を探す。


だけどどこを探しても望月の姿は見つからなかった。


もしかして…


もう帰っちまったのか…??


そう思ってあきらめかけたとき、


「あっ、滝沢クンじゃない!」


誰かがオレの方にかけよってきた。


「今から詩織ちゃんの所に行く途中??」


それは中川と鳥山だった。


やっぱり知り合いがいたか…


いや、そんなこと思っている場合じゃない。


「おまえら、望月見なかったか?」


こいつらなら望月の居場所を知っているかと思い、そう尋ねてみた。


中川と鳥山はきょとんと顔を見合わせる。


「えっと…詩織ならさっきそこの木陰で滝沢クンを待ってるって言ってたけど…」


そう言って鳥山がはずれの方を指差す。


あいつ…


そんなところにいたのか!!


「ありがとう」


オレは一言そう言って鳥山が指さした方に早足で向かった。


はずれの方に行ってみるとそこに望月らしき姿が見えた。


だがその姿は3人の男に囲まれている。


あいつ…!!


「望月!」


オレは望月の名前を呼んだ。


望月と、望月を囲んでいる男達が同時にオレを見る。


オレは望月を囲んでいる男達を睨んだ。


おまえら…


人の女に何やってんだよ…!?


よく見ると男の一人が望月の手をつかんでいる。


あんなやつが望月の手に触れていると思うと怒りがこみあげてきた。


「おまえら…何やってんだよ…」


オレは低い声で言った。


男達は少し後ずさりしたが負けじと睨み返してくる。


なんだ?


こいつらオレに対抗しようっていうのか?


ふん、できるものならしてみろよ。


オレはさらに強く男達を睨み返した。


すると男達はあきらめたらしくちっと軽く舌打ちして望月から離れていった。


「滝沢サン…」


残された望月がオレの名前を呼ぶ。


オレはそんな望月を睨んだ。


「おまえ、何やってんだよ!?」


そして思わずそう怒鳴る。


望月がびくっと体を震わせた。


「す、すいません…」


そう泣きそうな声で謝る。


オレは望月の前にしゃがみこんだ。


望月はまたびくっと震える。


オレはそんな望月の髪を撫でた。


「もしオレがこなかったらどうなってたか分かってんのか…??」


おまえ、襲われてたんだぞ…??


もしそんなことになったらオレ……


望月の頬に涙が伝った。


「ごめんなさい…」


そしてもう一度オレに謝る。


…えっと、


オレ、怖がらせちまったか?


オレは望月の頬に伝った涙をぬぐった。


「泣くなよ。別に怒ってねぇから」


そういうと望月は余計に涙を流した。


弱ったな…


自分で泣かせておいてあれだけど…


こんなときどうすりゃいいんだろ?


そう思いふと気がついた。


そうだ。


オレたしかリンゴ飴買ってきてたんだった。


それで少しは元気だしてくれるか?


オレは鞄の中からリンゴ飴をとりだした。


そして望月にそれをさしだす。


「ほら、これでも食べて元気だせ」


望月は軽く目を見開いた。


「えっ…これ…」


「おまえさっき食べ物屋って言ったらリンゴ飴って言ってただろ?」


オレは望月がそれを受け取ってから、鞄からもう一つをとりだした。


そしてその封をあけ、リンゴ飴をかじってみた。


飴の甘い味とリンゴの酸味が口の中で混じる。


…ふーん。


以外といけるもんだな。


「これ、以外とうまいな」


そう言ってオレは望月に笑いかけた。


望月は泣きやみ、リンゴ飴の封をあけた。


そして小さな口でリンゴ飴をかじる。


「ありがとうございます……響、くん」


不意に呼ばれた名前に驚いて思わず目を見開く。


顔が熱くなった。


やばい…


絶対にオレ、赤くなってる…


でも、今暗いし気付かれてないよな…??


「おまえ、なんだよ…その呼び方」


なんでいきなり名前呼びなんだよ??


今すっげぇ焦ったぞ…??


望月は恥ずかしそうに目をふせて言った。


「すいません…でも、名前で呼んでみたかったんです。…これからもそう呼んでいいですか?」


これからもって…


オレ、今呼ばれただけでも顔赤くなっちまったのに…


そんなんで大丈夫なのか…??


でも…


せっかく望月がそう言ってくれてるんだ…


「…別にいいけど」


望月は目を見開いて、そしてうれしそうに笑った。


暗がりでも分かる可愛らしい笑顔に思わずみとれてしまう。


…まぁ、望月が喜んでくれるならなんでもいいか。


オレは望月のことを名前でなんか呼べそうにもないけど…


望月がオレに名前で呼ばれることを望むのならそう呼ぶ。


オレは望月のこの笑顔を見られるんなら…


きっと、どんな願いでも叶えられる。

最後、途中から名前の話になってます(-_-;)

詩織に頼まれるの待たずに自分から名前で呼べ!って感じですね(ーー;)

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