★11話 変化★響side
7月になった。
6月はまだ涼しい風が吹いていた屋上にも今では生暖かい風が吹く。
「私、テスト大丈夫でしょうか…??」
隣にいた望月がぽつりと言った。
あぁ、そういえばもうすぐ期末か…
たしか中間のときはオレが教えたんだよな…
こいつもの覚え悪いから教える方も苦労したもんだ…
…そんなやつが1人で勉強して赤点をまぬがれることができるのか?
オレの頭の中ですぐに絶対できないという結論にたどりついた。
「…オレ、教えてやろうか??」
「えっ!?いいんですか!?」
望月の表情がぱぁぁっと輝く。
「だっておまえ、1人で勉強したら絶対赤点とるだろ?」
オレがちょっとした嫌味を言ってみると望月は少しむっとしたような表情をした。
「…そうですけど。私、中学の時は学年でも常に成績上位の方だったんですよ??」
へぇ…
あんなにももの覚えが悪い望月でも上位だったのか…
それはそれは結構低めな学校なんだろうな。
いや、でもここに合格できたってことは以外とかしこいのか?
まぁ、それでもギリギリ合格だろ。
「おまえの中学とこの高校は違うんだよ」
オレは鼻で笑ってそう言った。
望月がますますむっとした表情になる。
そしてふんっと首を横に振った。
「…わかりましたよ。教えてもらってあげます」
なんで上から目線なんだよ?
別にオレはおまえに勉強を教えたいわけじゃないんだぜ?
そんな風に言われてまで教えたくねーなー?
「別に教えて欲しくないなら教えなくてもいいんだけど」
オレが意地悪く笑ってそう言うと望月の表情が悲しそうな表情に変った。
「す、すいません!教えてください!」
そしてオレにぺこりと頭をさげる。
…本当にこいつだけは表情がころころと変わっておもしれーな。
「仕方ねぇなー。んじゃ、教えてやるよ」
オレはそう言って笑った。
「それじゃ今回はどこで勉強するんですか??」
「中間のときのとこでいいだろ」
また他のとこでやるってなったら決めるの面倒だしな。
ということでオレ達は今日の放課後から勉強会(?)をすることになった。
「満…席、ですか」
望月が呆然と言う。
今望月が言ったとおり、フレンドリーは満席状態だった。
どうやら何かの団体がきているらしい。
これではとても勉強できる状態じゃない。
「…どうします??」
望月が不安気な顔でオレを見る。
どうしますって言われてもな…
オレは少し首をひねった。
勉強できる静かなとこか…
オレがいつも勉強してる静かなとこといえば…
「そうだ、オレんち来る??」
オレの部屋なら静かに勉強できるから集中できるんじゃねぇか??
「え??」
望月は大きく目を見開いた。
「で、でもご両親の方がいるんじゃ…」
「大丈夫だよ。うちの母親、そういうの全然気にしないから」
そう言ってもまだ望月はとまどったような様子だ。
…??
なんだよ、まだなんか気に食わないことでもあるか??
そう思った時、望月がためらいがちに言った。
「でも…やっぱり若い男女が一つの部屋の中で2人きりというのは…」
…………??
少し頭を悩ませてからふと意味にその気がつく。
一気に顔が熱くなる。
こ、こいつ、何考えてんだよ!?
「な、何もしねぇよ!!だいたい親もいることはいるんだからな!?」
「そ、そうですよね!!それじゃそうしましょう!!」
ったく…
だいたいオレにそんな変なことする勇気なんかねぇって…
そう思いオレは軽いため息をついた。
オレ達はとりあえずオレの家にきていた。
「んじゃ、一応オレ母親に一言言ってくるから」
「は、はい…」
オレは望月がうなずくのを確認してから先に玄関に入る。
靴を脱ぐのも面倒なのでオレは玄関から大声で言った。
「おい、母さん!友達来るから静かにしてろよ!」
「はいはーい」
少し間があいて奥の部屋から返事が聞こえてくる。
もし母さんに望月を見られたら何言われるかわかんねぇからな…
まぁ静かにしとけっていっといたからとりあえずは一安心か。
オレはそう思い安堵の息をついたあと望月を呼んだ。
「望月、入っていいぞ」
「は、はい!」
望月はトコトコとこっちにくると、おずおずとドアをくぐった。
「お邪魔…します」
望月は小さな声でそう言うと玄関にあがる。
その時、
「まぁ!すごく可愛い子じゃない!」
奥から母さんがでてきた。
…げっ。
なんででてくるんだよ…!?
静かにしてろって言っただろ…??
「あ、あの…はじめまして。望月詩織といいます」
望月がぺこりと母さんに頭を下げる。
すると母さんは満足そうに笑った。
「あら、しかも礼儀正しいのね!響、いい彼女じゃない!」
なんで何も言ってねぇのにいきなり彼女になるんだよ??
…まぁ、実際そうだけど。
「…望月、オレの部屋上だから」
オレはとりあえず無視して階段を指差した。
「もー、本当に愛想がないんだから!詩織ちゃん、こんな子だけどよろしくね?」
母さんが腕組みをしてそう言う。
「は、はい…」
望月は苦笑いでそう返事した。
このまま母さんにからまれているのも面倒なのでオレは先に階段をのぼりかけた。
すると望月が慌ててついてくる。
「入って」
そうオレの部屋に望月をうながすと、望月はおずおずと部屋の中に入った。
「わぁ…きれいですね」
望月は部屋に入るなりそう言った。
「そうか?あっ、適当に座ってていいから」
オレはそう言い、机に向かった。
オレの部屋で机ってここしかないからな。
一応勉強しやすい状態にしておこう。
そう思い、参考書などをだして机の端においておく。
望月が快適に勉強できるだろうという状態にしてからオレは望月を呼んだ。
「望月、もういいぞ」
けど返事は返ってこない。
…??
どうしたんだ??
振り返ってみると望月はオレのベッドに座ってぼんやりとしていた。
「おい、望月」
名前を呼んでもまったく反応しない。
ったく、こいつはどれだけぼーっとしてんだよ…??
そう思いオレは望月の目の前までいって名前を呼んでみた。
「望月!」
望月はやっと我に帰ったようではっとしたような表情をする。
「は…」
「何ぼーっとしてんだよ」
望月はなぜか顔を赤くした。
「た、滝沢サ…!!」
そしていきなり体を後ろに傾かせる。
何かにつかまろうとしたのか、望月はオレの手を掴んだ。
オレはそのままひっぱられてまきこまれた。
反射的にベッドに手をつく。
望月はもろに背中を打ったようだ。
けど、もうふあるから大丈夫だろ。
思ったとおりのようで望月はすぐに体をおこした。
「す、すいません。滝…」
その拍子に望月の顔がオレのすぐ鼻先による。
「へ……??」
望月が大きく目を見開いた。
あまりにも近くてまつ毛があたりそうになる。
黒くて長いおさげがオレの頬に触れた。
「な……」
顔がだんだんと熱くなっていく。
心臓がドクドクと強く、早く脈打つ。
な、なんだよ、これ!?
オレは慌てて望月から離れた。
「………」
「………」
しばらくの沈黙が続く。
び、びっくりした…
なんであんなことになるんだよ…??
望月があんな近くにいて…
すげぇ焦った…
「あ、あの…すいません…」
望月が小さな声で沈黙を破った。
オレは横目で望月を見る。
けど望月を見ると余計に顔の熱があがるような気がして、目をそらす。
「別に…それより、準備できたぞ」
オレはとりあえずこの変な状況を打破しようともともとの用件を言った。
望月は一瞬分からないといったような表情をして、はっとした表情に変わった。
「は、はい!」
そして勉強机に座り、シャーペンや教科書を取り出し始めた。
「んじゃ、一応テスト範囲確認するけど…」
そう言って望月が出した教科書を見ようと望月のそばによった。
それだけで心臓の鼓動が速くなる。
…落ち着け、落ち着けオレ。
今日の目的は望月に勉強を教えることだ。
さっきのアクシデントのことなんか考えるな。
それでもやっぱり顔の熱はひかない。
…まぁ、望月がオレの方を見るなんてことはないだろうから大丈夫だろ。
そう思い、オレはなぜか緊張したままいろいろと説明をした。
そしてそんなうちに今日は終わり…
次の日。
急に望月からもう教えてもらわなくてもいいと言われた。
1人で勉強したら絶対赤点とるぞといっても望月は聞かなかった。
まぁオレはいいけど…
あいつ、点数どうなるんだろな…??
なんとなく不安になる。
しかし望月の点数は以外なものだった。
「平均…75です!」
自身満々にオレに点数を見せつけてくる望月。
ちなみに学年平均は62。
「おまえ…カンニングしたのか…??」
オレは半分本気で言った。
だってあの望月がこんな点数をとれるなんて…
以外だ…以外すぎる。
「そんなことするわけないでしょう!?実力です!実力!!」
望月は怒った表情で声を荒げていった。
…なんかこいつが怒るとおもしろいな。
そう思い、オレはくっくっと笑う。
まぁ望月がカンニングなんかするわけないか。
多分こいつなりに頑張って勉強したんだろうな。
「分かってるって。頑張ったな」
オレはそう言ってから、少し驚いた。
オレ、今かなり素直に『頑張ったな』って言ったよな…??
前のオレならもうちょっと言葉を濁して言ってのに…
…まぁ、オレも変わったのかもな。
そしてふと望月を見る。
こいつも…
はじめはもっとおとなしくてオレと話すのさえもびくびくしてたのに…
今はオレに向かって声をあらげたりもできるようになっている。
こいつも少し変った気がする。
よくわかんねぇけど…
もしかしてオレのおかげか?
そう思ってオレは小さく笑った。
最後どう締めくくるかかなり考えました。
考えた結果わけがわからなくなった(-_-;)