☆6話 雨の中☆詩織side
中間テストが終わって3週間ほどがたちました。
すっかり梅雨の季節です。
「毎日毎日雨って憂鬱だよねー…」
優香ちゃんが頬づえをつきながら言った。
そう、ここ最近は雨ばかり。
なんだか気分がすかっとしません。
「こんな日はもう何もしたくないよー!」
楓ちゃんがそう言いながら優香ちゃんの机をぽんぽんと叩いた。
「で、でも雨だって風情があるじゃないですか!それに梅雨の季節は一年に一度しかないんですからもっと楽しみましょうよ!」
「楽しむってどうやって??」
…えっと、
そう聞かれると言葉に詰まってしまいます…
そうしている間にチャイムが鳴って、学活の時間。
「今日は今度の合宿の班を決めようか」
澤田先生が教室に入ってくるなりそう言った。
合宿というのはさ来週にせまった学年合宿のこと。
一年生は愛知県の名古屋市に行くんだそうです。
「それじゃとりあえず5、6人の班を組んでみろ」
その一言で教室はガヤガヤと騒がしくなる。
「詩織ー!一緒に組もー!」
「あ、はい!」
私は優香ちゃんと楓ちゃんに声をかけられて一緒に組ませていただくことになりました。
「あと、誰誘うんですか??」
「うーん…やっぱり女子は3人集まったから次は男子だよねー…」
優香ちゃんは首をひねる。
「とりあえず詩織は滝沢クン誘ってきなよ」
「は、はい…」
優香ちゃんに指示されて私は滝沢サンに声をかけた。
「滝沢サン、一緒に組みませんか??」
「ん、いいけど…」
滝沢サンは短くそう返事する。
滝沢サンを連れて優香ちゃんと楓ちゃんのところに戻るとすでにあと2人のメンバーがそろっていた。
「連れてきましたよ!」
「こっちもそろったよー!」
そう言って優香ちゃんと楓ちゃんがにこっと笑う。
「よっ、望月!よろしくー!」
そう言った短髪の男の子はたしか…
えっと、中島サンだったと思います。
「あんましゃべったことねぇけどよろしくなー!」
このちょっと茶色が入った髪の人は…
多分、橋本サンです。
「えっと…よろしくおねがいします」
私はぺこりと頭を下げた。
優香ちゃんと楓ちゃんがそれぞれ誘ってきたそうですが…
2人とも全然かかわりのない人なので少し緊張してしまいます…
「それにしても滝沢と同じ班になるとは少しびっくりだよな!」
「滝沢クンは詩織ちゃんと仲いいんだよー!」
楓ちゃんがにこにこしながら橋本サンに言う。
いや…
仲良いとか言われちゃったら少し照れちゃいますね。
私はふと前に屋上で滝沢サンに言われた言葉を思い出した。
思わず笑顔になる。
まぁ、私は滝沢サンの一番のお友達ですからね!
(意図はわかりませんでしたが、私はとりあえずそう片づけておきました)
滝沢サンはどんな顔しているんでしょう??
そう思って滝沢サンの顔を見てみると…
……………
私は何もみなかったふりをして前を見た。
と、とても言葉にできない…
恐ろしい表情でした…
そ、そんなに嫌なんですか…??
とりあえずそんな感じで班決めは終了しました。
そしていつの間にかその日1日は終わり…
帰宅しようとすると…
「滝沢サン??」
生徒玄関の前で滝沢サンが雨を見ながらぼんやりと立ちつくしていた。
「どうしたんですか??」
声をかけてみると滝沢サンは私の方に振り返った。
「ああ、望月か。…なんか傘なくしちまって…濡れて帰ろうか迷ってたんだ」
そう言うとまた雨を見つめる。
私もつられて雨を見た。
雨はザーザーと音を立てて激しく降り続いている。
「…これくらいなら大丈夫だよな??」
滝沢サンがぽつりと言った。
い、いやいや!
全然大丈夫じゃないですよ!!
「ダメですよっ!濡れて帰ったら風邪ひいちゃいます!!」
「…でも傘ないんだから仕方ないだろ?」
そ、そうですけど…
風邪ひいちゃったらダメです…
うーん。
どうすればいいんでしょう…??
少し考えてみると、ふと名案がうかんだ。
「あっ、そうだ!滝沢サン、私の傘使います??」
私はそう言って傘を差し出した。
「いや、おまえが濡れるだろ??」
「私はいいんです!ほら、バカは風邪ひかないって言うじゃないですか!」
だから私は大丈夫ですけど、滝沢サンはすごくかしこいのできっとすぐに風邪をひいてしまいます…
滝沢サンは少し悩むような素振りを見せたあと、小さな声で言った。
「…んじゃ、おまえ、はいれよ」
そして外にでて傘を開く。
え…??
「いいん…ですか??」
「もともとこの傘、おまえのだろ!?」
滝沢サンは怒ったようにそう言う。
そ、そうですけど…
「で、でも…」
「いいから!」
滝沢サンにそう言われて私はおずおずと傘の下に入った。
ザーザー…
地面を打つ雨の音が響く。
私達は無言で歩いていた。
心臓がドキドキと鼓動を打つ。
肩が滝沢サンに触れる。
心臓がはねあがる。
慌てて離れると頭に雨の雫がおちた。
「ひゃっ!」
いきなりのひんやりとした感触に驚いてしまう。
「…大丈夫か?」
「は、はい…平気です」
傘が少し私の方による。
滝沢サンが私が濡れないようにしてくれた。
小さな優しさがとてつもなくうれしかった。
でもそれじゃ滝沢サンが濡れてしまうので私は少し滝沢サンの方によった。
滝沢サンに触れた部分が熱くなる。
それから駅まで、やっぱり私は何も話せなかった。
だけどとっても幸せな時間だった。
このままずっとこの時間が続けばいいのに、と思った。
駅についた私達は方向が同じなので自然と同じ電車に乗り込んだ。
…たしか、前にも滝沢サンと同じ電車にのってたことがありましたよね。
そのときは滝沢サンは私から逃げようとしていましたけど…
今は、電車がガラガラにすいているのに私の隣にいてくれている。
それだけのことがうれしくって、私は笑顔になった。
「傘、ありがとな」
ふいに滝沢サンが言った。
「い、いえ…私もありがとうございます」
何に対してありがとうと言っているのかわからなかった。
けど、何を言っていいのか分からなかったのでとりあえずそう言っていた。
そういえば…
ふと、今日気になっていたことを思い出した。
「あの…滝沢サン…」
「何??」
「合宿の班…嫌、でしたか??」
滝沢サンの目がほんの少し見開かれた。
「別に…なんで??」
「だって…滝沢サン、すごく嫌そうな顔をしていましたから…」
もう眉間のしわがすごく深くなっていて…
顔全体で嫌という気持ちを表しているような顔をしていました…
「別にそんな顔してたつもりはなかったけど…」
「で、でも…」
もしかしたら滝沢サンに気を使わせているかもしれないと思うと…
「嫌なら嫌とはっきりいってくださってもいいんですよ…??」
「だから嫌なんかじゃねぇよ…!」
滝沢サンはそう言ってくださいましたが…
やっぱり私は滝沢サンが気を使っているような気がして仕方がなかった。
話しているうちにいつの間にか私が降りる駅についていた。
「あ、それではまた明日…」
私はそう言って電車をおりる。
滝沢サンは何も言わずに目だけで私を追った。
こころなしか何かを言いたそうに見えた。
プシューと音を立ててドアがしまりかけたとき、
「お、オレはおまえに誘われてうれしかった!」
慌てたようにそう言った滝沢サンの声が耳に入った。
ドキッ
心臓が強く鼓動を打つ。
…本当、ですか??
うれしくて、私は滝沢サンに笑顔を向けた。
滝沢サンを乗せた電車が私の目の前を過ぎていく。
明日また会えると分かっているのに、なんだか名残惜しい気がした。
電車を見送ったあと、駅をでた私は家路につきながらさっきまでの出来事を思い返していた。
それだけで、顔が熱くなる。
もしかして滝沢サンも私のことを好きなんじゃないでしょうか…??
一瞬そう思ってすぐに首をふる。
…そんなわけないですよね。
そんな都合のいいことがあるわけありませんから…
…友達。
それでいいんです。
私は滝沢サンの一番の友達でいられれば…
それだけで、いいんです。
おひさしぶりです;
水、木、金は塾で更新できませんでした(;一_一)
これからもそうだと思うのでよろしくお願いします。
あと今小説の中では6月くらいです。
実は私も少しわからなくなっていたのであらためて考えてみました。
ちなみに私、高校の行事やテストの時期などは全くわからないのでそこだけ中学設定です。
おかしくても見逃してください<m(__)m>