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第二部「破滅を照らす者:魂を映す鏡」その1

目次


Prolog「旅の始まり」

第1章「立つ鳥、跡形を残さず」

第2章「First Blood」

あとがき


Prolog「旅の始まり」


美しい青空を、まだらに浮かぶ雲が流れて行く。

爽やかで心地よいそよ風が、私達の頬と髪を撫でる。

目の前に広がる森林が、明るい陽の光を受けて鮮やかに輝いている。

その森林がある山の頂上には、大きな古城がそびえ立っていた。

これから行うのは危険な作戦であると。

あの城は今や観光名所ではなく、文字通りに敵の根城になってしまっているということは分かっていた。

しかし、私は目の前に広がる光景に感動を覚えずには居られなかった。


挿絵(By みてみん)


「あれが…マーリンさんが言ってたお城かぁ…」

「美しいですね…」

「綺麗っす。」

「久しぶりに外の景色を拝めたな。」

「なんて言うか…やっと夢から目が覚めた感じっていうか…?」

「まぁ、日本と比べるとメルヘン過ぎるけどな。」

「あはは…確かにそうですね。」

「…で?俺達はどうすりゃ良いんだ?リーダーさんよ。」

「リーダー…?」

「そりゃあもちろんアイツに決まってんだろ。」

【彼はそう言うと、ジョゼフィーヌに指を指した。】

「あっ…確かに。あの…ジョゼフィーヌさん!そのぉ…本当に申し訳ないんですけど…リーダーになってくれると…」

「そっすね。」

「はい、了解致しました!状況的にも私が最も適していると思われますので、私がリーダーとして皆さんを導かせて頂きますね!」

「ありがとうございます!」

「では、最初の指示を出しますね!先ずは1列に並びましょう。」

「あんたの後ろについて行けば良いんだよな?」

「はい!そして順番は…先頭は私が務めるので、2番目に星次さん、3番目に流輝さん、そして最後尾に春喜さんの順で行きましょう!」

「なんでこの順なんすか?」

「それは歩きながら説明しますね!とりあえず、先程の順で並んで着いてきて頂けますか?」

【彼女がそう言うと、彼等はしっかりと指示通りに後を着いて進んだ。】

「この順番にした理由についてですが…簡潔に言うと、迎撃された際に私たちの生存確率を上げるためですね!先ず、戦闘や軍事的な知識のある私が先頭に立つことで、索敵やトラップへの対応をいち早く行えます。」

「それは何となーく分かります!」

「次に皆さんの順番ですが、これは主に瞬発力を重視して考えています。星次さんは、運動能力と情報処理の能力が優れていますので、状況への対応速度からしてこの位置がベストです。そして、星次さんには私の副官としての役割をお任せしたいのですが宜しいですか?」

「あぁ、OKだ。」

「次に、流輝さんは運動は苦手との事でしたが、体格的に大きな春喜さんよりも瞬発力が高いと思われるのでこの位置にしました。」

「なるほど…」

「僕は足遅い方かもしれないんでそれがいいっすね。」

「最後に、春喜さんですが、体格的に1番目につきやすく被弾率も高いので、銃撃等を受けにくい位置にしました。そして、最後尾は近接戦闘による奇襲のターゲットにされやすいので、近接戦闘で有利な春喜さんには後衛を務めて頂きたいのでこの位置にしたのですが…」

「良いっすよ。たぶん僕が1番頑丈なんで。」

「ありがとうございます!」

「た…短時間でこんなに色んなこと考えてたんですね…」

「いえ!大したことではありませんよ、これも皆さんを守る為ですので!」

「いや、凄ぇだろ…それにしても、山登るって聞いてたからちょいとキツそうだと思ってたんだが…意外と緩い山で助かったな。」

「あと夏なのにあんまり暑くないですよね!」

「ここは『ホーウェンヅォレイルン城』があるので、ドイツのシュヴァーベン地方になります。ドイツの夏の気温そのものがあまり高くないというのもありますが、シュヴァーベン地方の平均気温は最高で24℃、最低で12℃だったはずです!」

「えっ!温度に12℃も差があるんですか!?」

「寒暖差が激しいので、なるべく早くキャンプ場を制圧したい所ですね…」

「本当に物知りっすね。」

私は野宿に慣れてはいるが、彼等はそうでは無い。

寒い中、安心できない場所で夜を明かすのは彼等にとっては過酷でしかないだろう。

「じゃあ急いだ方が良さそうだな。」

「では、少しペースを上げましょうか!ここからは、皆さんは私から少し離れて着いてきてください。そして、皆さんも前の方から人が1人分入るくらいのスペースを開けて着いてきてください。」

「これも何か意味が?」

「後退して逃げやすくするためですね!それでは、疲れたら声をかけて下さいね。その時は休憩しましょう!」


第1章「立つ鳥、跡形を残さず」


「まぁまぁ…山登ったと…思うんですけど…」

「そうですね…もう少しで着くと思いますので、ペースを落としましょう!」

現在時刻は午後1時。

山を登り始めてから約1時間半が経過した。

ここに来るまで何ともなかったが…キャンプ場への距離が縮まった今、接敵の可能性やトラップへの警戒を更に高める必要がある。

「ここに来るまでにジョゼさんが話してくれた事って本当すか?」

「はい、マーリンさんから直接的に魔法で頂いた信頼できる情報ですので!ですが…試すのは止めた方がよろしいかと思われます。失敗する可能性もありますので…」


『先程は話せなかったが、作戦中に休憩の時間があるだろう。これから伝えることはその時にでも話してくれ。』

『それは良いのですが…なぜ私が…?』

『君たちが迷い込んだ禁域、新たに得た祝福、その他にも不明瞭な点が多いはずだ。だから…いち早く、君達に真相を明かしてやりたいと思っている。それに…この戦いが終わった時、そこに私達が全員で立っているかは分からないだろう…?』

『分かりました…その意志を尊重し、マーリンさんの記憶を受け取ります。』

『では、必要な知識や私が話したかった事を君に流し込ませてもらう。さぁ、目を閉じてくれ…あぁ、そうだ、その前に一つだけ。祝福についての情報は彼等に早く開示してやって欲しい。』

『それはどのような情報なのですか?』

『祝福というのは簡潔に言えば、その人間の精神や魂を具現化したものだ。つまり、言い換えれば、祝福は自分の精神でもあり魂でもあるということだ。』

『なるほど…ですが、それ自体に一体なんの意味が…』

『祝福が自分の精神であり、魂であるなら。それらは自分の思い通りにある程度はコントロール出来るということだ。だが、本質を変えるようなことはできない。』

『例えば…私のこの大鎌を剣に変えたりすることは出来ないといった所でしょうか?』

『あぁ、そうだ。だが…相手を殺したくないと思うのなら、その刃が命を刈り取ることは無いだろう。』


「で…でも…これで人を殺さないで済むなら…」

「そうかもしれねぇが…相手によるな。」

「はい…皆さんの気持ちは理解できます。なので…私もなるべく殺害は控え、無力化するようにしますが…それが叶わない場合があると思います。その時がきたならば…私は躊躇うことなく命を摘み取ります。」

「俺もそのつもりだ。」

「なので…皆さんにもその時に備えて覚悟をしておいて欲しいのです…皆さんは生き残る事を考えて下さい、皆さんが手を汚す事はありませんよ!これも私の仕事ですので!」

「いや、それだけは絶対に無しです!全部を全部押し付けるのは申し訳ないですし…でも、ありがとうございます。俺たちのことを考えてくれて…」

「その時が来てもジョゼさんはジョゼさんっすよ。僕達は態度変えないっすよ。」

「そりゃ当たり前だ…ってかあんた…たまに雰囲気変わるよな。」

「そっすか?」

【彼らが話していると突然、後方の茂みから音が聞こえた。】

「なっ!?後ろになんか居るぞッ!」

「いえ、待って下さい。あれは…」

「あっ…かわいい…」

「小鳥ですね!」

「あっ、飛んで行っちゃった…」

【彼らが見つめていた小鳥は、ぴょんぴょんと飛び跳ねると、そのまま羽ばたいて彼らの頭上を飛んで行った。】

「あの小鳥も私たちの進行方向と同じ場所に飛んで行きましたね。もしかするとまた…」

【彼女が小鳥を目で追いながら話をしていると、あるものに気づいた。】

あれはッ!

「後ろに下がって伏せて下さいッ!!」

【そう言い終わると同時に、小鳥が空中で何かに引っかかった。すると、金属同士の摩擦によるキンッという甲高い音が聞こえた。】

「マジかよッ!」

「えっ!?」

「口を開けて耳をッ…!!」

【彼女が全てを言い切る前に、金属音が鳴った場所から眩い光が放たれ、轟音が鳴り響いた。】


第2章「First Blood」


うぅ…

耳が…キーンって鳴ってる…!

今のはもしかしなくても…爆弾だったのか!?

身体は動くし…特に痛くないけど…

あっ!ジョゼフィーヌさん!

良かった…大丈夫そうだ!

「皆さ…!大…………か!?私の声が………ま…か!?」

ダメだ!全部は聞こえない!聞こえないけど…

本を読み続けてきた陰キャの国語力を舐めるなよッ!

多分ジョゼフィーヌさんは『大丈夫ですか?私の声が聞こえますか?』って言ってるんだ!

「は…!でも…鳴り……いです!」

自分の声も聞こえない!

ちゃんと喋れてるか不安だ!

「失…しま…ね…鼓膜は大丈夫………」

ちょッ!

近い近い!

でも鼓膜は大丈夫そう?

鼓動は大丈夫じゃないけど!

「あんたは………か!?」

あっ!星次さん!

「僕は大丈……すよ。」

「皆さん!怪我は…りません…?」

「良かった!耳鳴…が少しづつ落ち着いてき…!」

「あぁ、俺もだ。」

「僕は1番後ろなんで助かったっすね。」

良し!耳鳴りは消えた!

けど…

「うっ…」

「どうした?」

「足首が…さっき急いで後ろに飛び込んだ時にやっちゃったみたいで…」

「皆さん!今すぐに隠れて下さい!!」

「敵っすか?」

「今の爆発音を聞きつけてやってくるはずです!構えて下さい!」

うっ…どうしよう!

「流輝さんは私が…!」

「いや!俺がなんとかする!あんたらは隠れてくれ!」

「…はい!春喜さん!」

「OKっす。」

「えっ?何するんですか?」

「その場で目ぇとじて仰向けに倒れとけ!良いか?俺の演技に合わせろよ?」

「えっ…?あっ…はい!」

え…演技!?

演技ってことはもしかして…

「おーい!誰かいるのかー?」

だ…誰の声だ?

も…ももも…もしかして…

「おーい!…あれは…」

て…敵さんですかぁ!?

「…マイク、聞こえるか?どっかのバカがブービートラップでぶっ飛んだっぽいが…生きてそうだ……いや、へカーティア様には報告しないでいい。お前も一応見張っとけ。」

出た…!

『ロキの化身』の1人…『へカーティア』の名前!

…って事はやっぱり敵じゃないですかぁ〜!

「これから接触する。」


あとがき


ここまで読んで頂きありがとうございました!


とうとう第二部「破滅を照らす者:魂を映す鏡」の投稿が始まりました!


これからはバトル要素もしっかり出てくるのでお楽しみに!


予定としては、1~2日おきに投稿する予定です!


コメント・感想もお待ちしております!

それでは、次回をお楽しみに…

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