表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

3.目覚め、そして逃亡


 ぱきり、と何かが割れる音と共に、暗闇だった世界に光が差す。

 ピキ、ピキ、ピキと俺を包んでいた物が壊れ、周りの光景が見える。

 俺、誕生!

 まずは頭上。Oh……太陽さん2つ浮いてる。地球じゃない。ほんとに転生したんだな。

 ……森か?てかここ木の上じゃね?


 立ち上がってみると、確かにここは木の上、そこに組まれた巣の中らしい。とりあえず大きく伸びと深呼吸をして、覚悟を決めて自分の現実を受け入れる。


 自分の腕を見下ろす。あー、まぁはいそうですよね。木の上、かつ巣の中と言ったらもうそうだよな。うーん、腕って言うか見事な翼だな。てかもう羽が生え揃っている。魔物だからか?黒、紺、藍、明るい所だと瑠璃色かな?うーむ、鳥かぁ……どう見ても鳥だよなぁ……。さっき割れたの卵の殻だろ?この巣の中にもまだいくつか卵がある。


 受け止めたくねぇー!よりにもよって鳥!?なに?セイレーンとかハーピーでも目指せってか??俺男だけどいけちゃう?鳥脚から脱却できるのかこれ……。

 

 黒谷さんと合流前にステータスを見ておくか。魔法適正とか実はちょっと楽しみだし。どうすればいいんだ?念じるのか?

 むむむむむ……開けステータス!ステータス表示!ステータスオープン!

 すると、ステータスオープンが鍵だったのか、半透明の板が目の前に出現した。

 

―――――――――――――――――――――――――――

名称:未設定

種族:ベビーバード

Lv:1/5

HP:10/10

MP:15/15

SP:20/20

攻撃力:2

防御力:3

魔法力:5

抵抗力:5

素早さ:10

ランク:G


パッシブスキル

《飛行Lv1》《鷹の目Lv1》《言語理解Lv―》《闇属性耐性Lv1》


アクティブスキル

《影魔法Lv0》《重力の魔眼Lv1》《ステータス閲覧Lv1》


称号スキル

《邪神の子Lv―》《転生者Lv―》《――――》


――――――――――――――――――――――――――


 まず目を引くのは、邪神の子、転生者、空欄の称号。あいつ我が子達とか言ってたもんな。でも俺鳥なんだが。あいつ海月じゃん。転生者はまぁ今更か。

 ふむ、ふむふむ、やっぱあれだな、生まれたてだからくっそ弱いんだろう。素早さ以外ステータスが軒並み一桁だ。ベビーバード、つまり雛だしな。上限レベル5て。

 HP、MPはいいとしてSPまであるのか。スタミナかぁ、ちゃんと飯食えって事かな?

 

 それはそれとして貧弱すぎないか俺の攻撃力。なんだよ2って!直接的な攻撃方法が嘴か足だからなのは分かるけど無いよりマシ程度じゃねえか。

仕方ない。影魔法を何とか実践で使えるように合流したら練習するかぁ……。Lv0なんだが。魔法適正をくれるってだけで練習しないと使えないのか。魔眼はなんか怖いからどうすっかな……。


 そんな事を考えているとステータス画面に文字が浮かび上がる。


【やぁやぁ!テキストでこんにちは!邪神ちゃんだよ〜♪】


 あぁ、こんにちは邪神(自称)。なんかしてくるとは思ってたよ。とりあえず俺が鳥になった事について弁明を聞こうじゃないか!

 

【どう?びっくりした?びっくりしたよね?初めてステータスを開いたそこの君!右も左も分からなくてカタカタ震えてるんじゃないかな?そんな君に!初回のチュートリアルだよ!いやー、感謝して欲しいね!僕って優しい!】


 予めプログラムでもされているのか、こちらの問いには答えずずらずらと文字が並べられていく。くそっ、これだから邪神はダメなんだ!確かに右も左も分からないが別に震えてなんかねえよ!


【まず、ここはエリュシオン。科学の代わりに魔法が発展した世界で、ひとたび森に入れば野生動物や魔物が跋扈してるよ!気を付けてね!】


 あぁ、よく分かってるよ!だってさっきから良く分からない叫び声や断末魔が足の下から響いてるからな!なんなんだよここ!巣から出たら全然安全そうじゃないんだが???

 てかママンは?他にも卵があるって事はそれを産んだ鳥が居るはずだよな?孵るまで温めるもんじゃないの?影も形も見当たらないんだが?


【レベルを上限まで上げれば、位階進化と言ってそれまでの行動や称号に応じて選択肢が出るよ。いいかい、全ての物事には必ず意味がある。君達が愚かな選択をしない事を祈っているよ。】


 なるほどな。自分のスタイルに合った進化先が提示されると。こりゃあれだな、進化先によっては大分遠回りさせられる感じか。そもそも必ず亜人ルートに入れる保証も無いし、慎重に決めなきゃな。


【じゃ、必要最低限は説明したから後は自分たちの目で、耳で、体で、この世界を感じて欲しい。大丈夫大丈夫!何とかなるって!だってここは無限の成長の可能性を秘めたエリュシオンだ!我が子達に邪神の導きがあらんことを!じゃあね〜!!】


 テキストが消えていく。最後にでかでかと【また会う日まで元気でね!】と表示されてそれも消える。


 ほんとに必要最低限だな。まだ分からないこと結構あるぞ?とりあえずどこにも導かないで欲しい。会いたくないし。切実に。お前に導かれたらいい方向に向かうとは到底思えないんだよ!


 切り替え切り替え。

 ふむ、とりあえずどうしたものか。手探り状態なのは変わらない。合流したいが、拠点も必要だ。見渡す限り空と木しか見えないから、人里が近くにあるとも思えない。結構ハードだな。なんか太陽2つあるし。しかも黒谷さんが何に転生したかも分からない、とくる。

 仕方が無い、そう遠くに生まれ落ちてはいないはずだから、探すかぁ……俺、ちゃんと飛べるよな?鳥になったこと無いから飛び方知らんぞ。


 パタパタとはばたいてみる。すると、体が覚えているというやつなのだろう。羽の動かし方、バランスの取り方が意識せずとも分かる。


「これは助かるな。スキルのアシストか?無意識下で動かせるようになるまで練習させられるかと思った。」


 風を掴み、巣の周りをぐるぐると回ってみる。これならいけそうだ。移動手段として十分に使える。


「ははは!飛ぶのは気持ちいいもんだな!風が心地いい!鳥でよかったかもしれん!」


 一通り体の動きを確認して、ステータスを見てみると、SPが18/20に減っている。まだ長時間は飛べないみたいだな。魔法とかは合流してからでいいだろう。そもそもここ木の上だから影魔法使えるか怪しいし。


 ここにずっと居ても仕方ない。よーし、探すか!下からはギャーギャーワーワー何かしらの鳴き声がずっと聞こえるけど!


「じゃあなまだ見ぬ弟、妹たち!立派に育てよ!」


 そう巣の中の卵に向かって叫んで飛び立ち、木の下の探索を始める。


「くっっらいな!なんだここ!ほんとに昼かよ!」


 初めて見た木の下は、邪神の言う通り、沢山の生命で溢れていた。《鷹の目》の効果だろう、そりゃもう良く見える。

 クソでかいカマキリとクマが取っ組み合いをして、うねうね動くハエトリグサが猪を押さえ込み、蜂が寄ってたかってサーベルタイガーみたいなやつをブスブスと刺している。

 

 控えめに言って地獄かな?食物連鎖どこ行ったよ?

 なんだよここ!こんな場所に転生したらすぐ食われるだろ!

 早く黒谷さん探して拠点築こう……


「黒谷さーん!黒谷さーん!生きてるかー!聞こえたら返事してくれー!」


 パタパタと木々の間をすり抜けながら呼びかける。

 あの人は一体何に転生したんだ?卵生か胎生かでもだいぶ変わるだろ。

 SPを確認する。よし、まだ15はあるな。半分切ったらどこかで休もう。


「黒谷さーん!黒谷さー……あぶなっ!」


 まぁ叫びながら飛んでたら目立つよな、近くの枝から芋虫が糸を吐いてきた。


「ははっ馬鹿め!俺は素早さ10もあるんだぞ!そんな糸に当たるかよ!見てろそのうちお前ら食ってやる!……ちょ、多くね?あぶねっ!へぶっ!うわっ!」


 糸を避けながら煽って飛んでいたら四方八方から糸が飛んできて避けたら枝にぶつかった上に糸に捕まった。よそ見はダメだよね……。


「おいおい、こんな所で虫に食われるなんて御免だぞ!虫なら葉っぱ食っとけよ葉っぱ!植物も美味いだろ!」


 宙吊りになりながらゆらゆらじたばたと暴れ、なんとか引き上げられる前に糸から逃れる事に成功。飛んでいるとまた糸が飛んでくるかも知れないのでこそこそと地面を歩く。


「あいつらの糸粘着性無くて助かったな……。蜘蛛糸とかの粘ついた糸だとアウトだっただろあれ。」

 

 少し疲れてきた為確認するとSPも11と半分を切りそうになっていたため、身を隠す場所を探しながら黒谷さんを探す。


「あいつらいつか絶対食ってやる。思い知らせてやる。所詮虫は鳥のエサなんだよぉ……!」


 極力音を立てないように藪の中を進みながら呟き、黒谷さんが転生している生物を予想しながら地面を歩く。

 木の上に居た時よりSPの回復が遅いぞ?疲れてるからか?てか腹減ったわ。水とか木の実ないかなー。生まれてから何も食ってないや。


 そう考えながらガサガサと藪を出る。

 芋虫も諦めきれなかったのだろう。枝から降りてきていたらしい。あれ?あんまり離れてなかった?藪で迷った?あちゃー。

 

 目と目が合う。


「やぁやぁ芋虫くん!おや、ご飯をお探しかな?ほら、この葉っぱとかどうだい葉っぱ!肉よりやっぱ植物だよ!かく言う俺も実はベジタリアンでねぇ!」


 そう言いながら近くの薮の葉を嘴でむしって芋虫に差し出す。

 嘘だ。まだ転生してから何も口にしていない。腹も減ってる。くそ、本当に葉っぱ食ってやろうか。


「ギチギチギチ!」


「デスヨネーー!あー!おやめ下さいお客様!あーっ!!困りますお客様!!!お帰り下さいませお客様ー!」


 葉っぱはお気に召さなかったみたいだ。どこから音出してんだよあれ。気色悪い音出しやがって!

 襲いかかってくる芋虫。くるりと反転し逃げ出す俺。

 飛行するにも、藪の中じゃ羽ばたくのも難しい。素早さ10って陸上でも発揮されるのかな?されてくれ。頼む。


「おうおうおう見せてやるよ!世にも珍しい鳥のクラウチングスタートだ!鬼ごっこしようぜ!鬼はお前な!よーいドン!」


 てしてしと細い鳥の足をしゃかりきに動かし、藪の中を駆け回る。

 いやなんか飛ぶより疲れるんだけど!!SPがぐんぐん減っていく!誰か助けて!!


【称号スキル:《チキンランナーLv1》を獲得しました】


「やかましいわ!!バードだバード!チキンちゃうわ!」


 ――残りSP、5

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ