心霊番組を見た後の夜
「お分かりになられただろうか~?」
テレビの中から、老婆のやたら老けたような低い声と、女芸能人の怖がっていたり、分からず戸惑っているというリアクションの声が聞こえる。
「誠~! 風呂入ったの?」
テレビに集中する俺を妨害するが如く、母親は話しかけてきた。
「入ったよ。見れば分かるだろ」
さっさと入って来いババァ。そう思いながらイライラした口調で話しているのが自分でも分かった。でも、とてもそんな事は口からは言い出せない。
「じゃ、入るね~。勉強しなよ」
「はいはい」
やっと五月蝿いのが消えたと、俺はテレビに視線を戻した。母さんは勉強勉強五月蝿いんだよなぁ、どうでもいいんだけど。今、番組では、心霊特集をやっている。俺が好きなジャンルで、夏恒例だ。
今は心霊写真に関してやっている。修学旅行の集合写真の中の、一番後ろの人達の更に後ろに、いるはずのない人間の顔があるという物だった。
「うー、怖い怖い」
そんな事を俺は言いながらずっと見ていた。3時間スペシャルなので、22時から始まったが、今や翌日になり、0時だ。とても14歳の俺が起きてる時間じゃないや。……と思いつつも見ていると、途中で番組のナレーターがこんな事を言った。
「こちらの写真に写った手は、五月蝿いと言われて殺された母親の霊である」
一瞬俺はビックリした。ついさっき、母親が五月蝿いと言ったばかりではないか。……そういえば、さっきから眠いが……。
……ああ、まだ番組は終わってないのに目蓋が閉じる……。
気付けば、俺は修学旅行に行っていた。なぜか、小学生に戻っている。小学校の時の修学旅行をまたやっているようだ。
良く分からないけど集合写真を撮るらしい。……その瞬間、俺は背後から母の声が聞こえるのを感じ、階段から落ちるような感覚を感じた。フワッとするような、異世界にでも引き込まれるような――
「誠! 二階に行って寝なさい」
気付くと、俺は下のリビングのテレビの前で寝転がっていた。どうやら、さっきのは夢だったらしい。「……」
眠気が少し覚めた体を起こし、母さんが消したらしい、スイッチの切れた画面が黒いテレビの中に映る俺を見る。左膝から立てて立ち上がり、部屋に入る。
さっきの夢、寝る前に見ていたテレビの内容を組み合わせると、一緒ではないか。……でも多分、テレビを見た影響じゃないかと思う。それなら全く気にする必要はないよな……。
宿題も学校で済ませたから、もう何もやることはない。俺は電気スイッチを消し、布団の中に入った。
しまった。さっき寝た影響で眠りにつけないじゃないか。ああイライラする……。ラップ音も五月蝿いし。
……ん? 何だあれ? 人の顔か……?……やばい、幽霊かな。何なんだあれは……服を掛けてある所だ。何か見えるような気がする。人の顔みたいだ。よし、思い切って確認してやる! なぁに、スイッチの場所ぐらい目を閉じて行ける。いや、ちょっと待てよ。電気点けたら消えるかもしれんし、まぁこれ真っ暗じゃなくて豆電だし、このままま確認しよう。恐る恐る立ち上がり、その場所に近付き、目を細めて見る。
……どうやら、服の模様やらシワやらが、人の顔に見えたらしいです。ごめんなさい。
全く面白くない超駄作をお読み頂き、ありがとうございました。