個人的に思う、婚約破棄系短編小説の気に食わないことについて
まず初めに、これは特定作品に対しての批難行為ではありません。あくまでも個人の私見であり、自分がどう思うのかを書いただけのものです。ぶっちゃけ異世界転生作品がランキング分けされたように、もうざまあ系はざまあ系で他所に分けといてほしいとは思うけど。
では本題へ。
個人的な意見としてですが、自分は所謂婚約破棄系短編小説がそこまで好きじゃありません。なので、何が自分にとって気に食わないのか改めて考えてみた結果を箇条書きで羅列してみようかと思いまして。
・そもそも婚約破棄系短編小説とは?
今回に関して例題とするのは異世界〔恋愛〕ランキングなんかでよく目にする、『貴族の子女が婚約相手に冤罪をでっち上げてその破棄を求め、結果その理由が不当なものであると暴露され、破棄を求めた相手が不幸に陥り、破棄を求められた相手は別の相手とハッピーエンドを迎える』といった作品のことを指すものとします。
再度言及するが、あくまでも今回の件は個人の感想であり前述のものは仮称『A』として扱うものであって、特定の一作品に対しての批難行為ではないです。
・何が気に食わないのか?
まず第一に、そもそもAの展開が気に入らないという点。趣味嗜好に個人差があるのは分かっていますし、気に入らないなら見なければいいのも分かってます。それでも、もはや汚染と言っていいほどに現在の異世界〔恋愛〕部門がそれ一色で染まっていることがとにかく嫌なだけです。
これに関してはどちらかといえば、話そのものよりも展開が同じような作品ばかりなことが原因だと思われます。Aのような展開は、もはや婚約破棄系と呼称できるほどに小説家になろうに溢れました。
少なくとも2022年12月現在時点の異世界〔恋愛〕ランキングにおいてはAに属する作品を除外したら日間でも年間でも一桁残るかどうか分からないほどには溢れてしまっています。
展開が微妙に異なるのならば違う作品と呼べなくもないけれど、大筋がA路線であるならばそれはほぼ変わらないと言っても過言ではなく、そうしたものが蔓延る環境下ということも気に入らない理由の一端でしょう。
・Aの展開の何が具体的に気に入らないのか
こう、ファンタジー世界の貴族やら王族や皇族の関係が変に曖昧なのはこの際仕方ないにしても、政略である以上は幼い頃に顔合わせをし、内々に決定が下り、その過程を経た上で婚約関係にあるわけで。
そんな関係の婚約者をそもそも蹴るな。まず数年間付き合いのある相手と、ぽっと出の相手とで、前者ではなく後者を取るあたりが分からない。
現代日本においても、婚約成立後の不貞行為は法律上犯罪行為ではなくとも関係の解消並びに精神的ダメージによる慰謝料を請求できるほどに悪質な行いである。その上、これが貴族社会上の婚約ならば、契約によって出る利益、あるいは解消された際の不利益はそれを大きく上回るものになろうこと間違いなし。それを理解できないような頭の人物として描いた作者こそ悪いとも思うけど。
読者視点だし第三者目線だからこそ、自分にとっての常識として『政略で結ばれた相手でも大事にしなければならない』と思うことや、浮気をした側の登場人物に感情移入して『諫言を言ってくる相手より甘言を言ってくる相手を味方する気持ち』とかも分からないでもない。
その上で、何が一番気に入らないのかといえば、浮気された子女側である。
浮気した側を批難した上でなぜ擁護するのか? と思われるが、いや、そうではない。浮気そのものは悪であり、非はそちらにこそある。その上で、であるのだ。
先にも述べたが、不貞行為そのものは悪質極まりなく、悪は不貞行為をした側にある。このことを擁護したいわけではないと重ね重ね否定しておく。ただ、Aにおいては話が異なる。
婚約関係にあった相手に浮気されたこと、謂れのない罪を着せられたこと、それによって人格までも否定されたこと、周囲全てが敵に回り自身の破滅を想起したこと、それら全てであなたは決して悪くない。
だけど、状況が覆った時に唐突に現れた、ぽっと出の相手と再婚約するのは話違くない?
そりゃ吊り橋効果というか、世界全てに裏切られたと錯覚するような事態から救ってくれたであろう相手を好ましく思うことそれ自体は否定しない。
でもそれ、ぽっと出の相手ですよね? 実は主人公のことが好きで、でも諦めきれずにいたら棚ぼたで手に入れられる機会を得た際に実行に移した相手ですよね? それ、浮気相手の間女と何が違うの? 悪意や客観的な正当性の有無以外は同じことでは? いや、正当性とか順序の違いとかも大事なのは分かるけども。
好きな相手が欲しくて、それが結果として別の誰かを傷つけると分かったから身を引いた者と、悪意を含めた上で実行に移した者、本質的な部分では何も変わらないんじゃないかって。
そも短編であるのもまた拍車をかけて悪い。これが長編で何回か重ねられた思い出話なりのエピソードさえあれば、救出に入った側が、ぽっと出扱いされることもなかった。なまじ短編で起承転結を簡潔にしすぎてしまっているがゆえに、登場人物に重みがない。
重みがないということは比重に偏りも生まれないということで。そうなってくると悪のレッテル貼りをされたキャラクターと正のレッテル貼りをされたキャラクターとで差異がないように感じて仕方がない。
このことから、自分はAのような作品が気に入らないのだと改めて自覚するに至った。願わくば、ランキングの分類分けがされるだとか、短編でなく長編でやってくれることとか、あるいは純粋にざまあ要素のないものがランキングに挙がることを期待したい。