幸せは儚いものなのです!
…。
…きて。
「起きて!」
「うわあっ!」
「やっと起きた。おはようお寝坊さん。」
暗めの青い髪の毛の少女が不機嫌そうな顔で俺にまたがっていた。間違いなく幼馴染の蒼である。…しかしなぜ俺の部屋で座っているのだろうか。
「ねえ、11時から買い物に行こうって約束だったんだけど。」
「約束?…あっ。」
おそるおそる時計に視線を移す。…2時間の遅刻である。3分のカップラーメンで例えるならば40個もできあがってしまう大幅なロスである。
「さ、逆さにすれば00:1…なんちゃって。」
「早く用意しろバカ!」
俺の腹に怒りの鉄槌が下された。
***
「んーおいしい!」
笑顔で大量のポテトとバーガーを貪る蒼。もちろん俺のおごりである。拒否権など行使できるはずもなく、言われるがままに購入した。
「そんなに食ったら太るんじゃないのか?」
「まだ若いんだから問題ないわよ!タケル、あんたは全然食べてないわね。」
「寝起きだからあんまり腹減ってないんだよな…。」
嘘である。寝起きの空腹状態でボディーブローをもらったせいで現在、胃の中をかき混ぜられたような気分なのである。
(そんなこと言えるわけないよな…。)
30分後__
「あーおいしかった。ごちそうさま。」
「しかし美味そうにジャンクフードを食うよな。」
「私の親がジャンクフード嫌いだからこういう日にしか食べられないのよ。ありがとう。」と蒼は笑った。
「…まあこれぐらいならいつでも連れてってやるよ。」
おもわず顔をそむけてしまった。付き合ってしばらく経つが、あの笑顔は俺にはまぶしすぎるものだった。
「おなかもいっぱいになったし、次はゲーセン行きましょ!」
それから俺たちは幸せな時間を過ごした_
***
しばらく時間が経ち、ゲーセンを出る頃にはすっかり空が赤く染まっていた。
「なんでどのゲームでも勝てないんだ…。」
本日の蒼との戦績は、格闘ゲーム3敗、音ゲー3敗、ホッケー4敗勝ち無しという付き合って以来の大敗であった。
「まあ熟練度の差だよね。通えばタケルだって強くなれるよ。」
何気ない話をしながら横断歩道を渡っていた。俺はごく普通の日常に幸せを感じ、満足していたんだ。
「危ない!!」
「え…?」
反対側の横断歩道にいた人の声に反応して振り向いたころにはすでにトラックが目の前にあった。気づけば全身に耐えがたい激痛が走り、蒼とともに空中に投げ出されていた。
***
…朦朧とした意識の中、サイレンの音が聞こえる。
(ああ…ここで死ぬのか…。)
サイレンの音は遠ざかり、意識が闇へと沈んでいく。
(あお…は…無…。)
こうして、俺の人生は終わった。