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69 ブレンダさんは義理堅い


「おはようございます、オリビアさん」

「おはよう、ユイトくん。昨日はビックリしちゃったわね」

「ハハ、ほんとですね……」


 昨日の夕食時、ハルトとユウマが突然むきむきになりたいと宣言し、突然の事に僕とオリビアさんは呆気に取られてしまった。

 トーマスさんはお願いだからやめてくれと必死だし、オリビアさんはまだ可愛いままでいてちょうだいと泣きそうだし、それでもハルトはぼく、むきむきになります! と頑なで、食卓はちょっとしたパニック状態。

 ユウマはハルトにつられて言ってるだけだったけど、すごくご機嫌だった。


 よくよく聞いてみると、イドリスさん=よく食べる=筋肉が凄い=ムキムキになれば美味しい料理がいっぱい食べられる、と思っていた様で、トーマスさんもオリビアさんもホッと安堵していた。

 僕はムキムキのハルトも少し見てみたいけど、これは内緒にしておこう……。


「お買い物、明日の分も多めにお願いしていいかしら?」

「はい、今日も冒険者の方たち来そうですし」

「そうね、じゃあ私はお野菜カットしておくわね」

「はい、じゃあ買い出し行ってきます!」

「気を付けてね、いってらっしゃい!」



 まだ朝食前だけど、朝市はもう開いてるから、まずは一度目の買い出しへ。最近はお店の人たちとも顔見知りになって、おまけが貰えたりするのでありがたい。


 まずはエリザさんのお店で大量の鶏・豚・牛のお肉を購入。まぁ、ほとんど魔物のお肉らしいんだけど、美味しいから気にしない。

 もちろん鶏がらも忘れずに。あと来週分のミンチを大量に予約しておく。

 ちょっと買い物籠がいっぱいになってきたからいったん帰宅。そしてこれを、朝食の時間までにあと二回繰り返す。エリザさんとネッドさんは事情を知っているので、頑張ってと応援されてしまった。




「ハルトとユウマは今日もまたお庭で遊ぶの?」

「うん! じぃじとね、ぶりゃんこすりゅの!」

「おじぃちゃん、つくって、くれました!」

「え? ブランコ作ったんですか?」


 あれ? 確か昨日はなかったはずなんだけど……? 


「あぁ、昨日二人の昼寝の時間にメイソンの所に行って、廃材を貰ってきたんだ。それでさっき庭の木に付けたんだよ。あ、ちゃんと乗って確認したから大丈夫だぞ?」

「トーマスさん……、なんか尊敬します……」


 最近のトーマスさんは、ホントに遊びに全力という感じがしておもしろい。二人もすごく喜んでるし、オリビアさんは相変わらずそんな様子をにこにこ眺めてるし。二人とも、トーマスさんが冒険者の仕事を再開したら、寂しがるんだろうなぁ……。


「それでそのお礼に、今度メイソンを夕食に呼ぼうかと思ってるんだが……」

「あ、それはいいですね! 僕たちもお礼したいので!」

「そうね、私もいいと思うわ。いつにしましょうか?」


 ハルトとユウマのおてつだいの時に協力してもらってから、実はまだちゃんとお礼できてないんだよね……。反省……。


「めいそんさん? だれ、ですか?」

「めいしょんしゃん、ゆぅくんちってる?」

「前にハルトとユウマが、内緒でアイスクリームを作ったでしょ? その時に協力してくれた人だよ」

「あ! アイス、つくりました! たのしかった!」

「ゆぅくんも! たのちかった!」


 その時の事を思い出したのか、二人は一瞬で元気になった。

 やっぱり楽しかったんだな~。


「そう、アイスの時に協力してくれて、ブランコの材料もくれたのがメイソンさんだよ。皆でありがとうってしたいね?」

「「うん! したぁ~い!」」

「そうか。なら今日は予定を訊いてこようかな」

「あ、好物も訊いてもらえますか? 食べれないものとか!」

「わかった。ちゃんと聞いておくよ」

「よろしくお願いします!」


 トーマスさんにお願いもしたし、再び買い出しへ。






*****


 買い物籠をパンパンにして戻ってくると、オリビアさんがちょっと困った様子で作業台を見つめていた。


「ただいま戻りました……。これ凄いですね? どうしたんですか?」


 作業台には、山盛りに置かれたお肉と野菜に果物が……。

 いつかの光景を思い出すな……。いや、それより多いかも。


「ほら、この前イドリスが食べに来た時に、遅れて来てくれたブレンダちゃん! よく食べる子がいたでしょう? さっきお店に来て、自分も明日来るから足しにしてくれって……。律儀な子ねぇ……」

「こんなにですか……?」

「こんなになのよ……」


 足しにしてくれって事は、これだけ食べるという事ですよね……?

 あの体のどこに……? というか、この食材はどうやって……? あ、魔法鞄(マジックバッグ)かな……? それなら言っちゃいけないやつだ。内緒にしとかないと。


「オリビアさん、明日は覚悟しておきましょうね……」

「えぇ、これだけ見ると、いっそ清々しくなるわね……」

「ほんとですね……」

「こんなに持ってきてくれたから、いっぱいサービスしないと……」


 二人してしばらく食材を眺めたあと、黙々と冷蔵庫と冷凍庫にしまっていく。常温野菜も外は熱いから念のため冷蔵庫の中へ。

 気を取り直して、今日の営業分の仕込みを終わらせよう……。


「あ、ブレンダちゃんが教えてくれたんだけど、たぶん今日の昼前には討伐依頼を受けたパーティが帰ってくるそうよ」

「あれ? でも昨日も何組か帰ってきてましたよね?」

「討ち残しが無いかの最終確認で、上位のパーティが残ったんですって」

「なんだか大変ですね。帰ってくるのも疲れそうです」

「そうね、それで着替えたら食べに来るらしいわ」


 店内にトントントン……、と包丁の小気味よい音だけが響いている……。


「食べに来るらしいの」


 なんで二回も言ったんですか……。


「頑張りましょうね……!」


 オリビアさんはとても素敵な笑顔で振り向いた。


「ハイ……!」


 ハルト、ユウマ。今日もお兄ちゃん、頑張るからね……!


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