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46 お別れのとき

少し短いですが、自分の中でキリが良かったので更新します。


「いやいや、こんな事もあるんだな……」

「トーマスさん、この子たち……。どうしましょうか……?」


 胡坐をかいて座るトーマスさんの周りには、ノアの友達と思われる小さな妖精さんがたくさんいた。

 一人は膝に、もう一人は肩に、もう一人は頭の上にと楽しそうに足をぶらぶらしている。動くに動けないとトーマスさんは困っているが、顔はとっても喜んでいる様に見える。妖精さん、可愛いからね。

 僕の周りには女の子の妖精さんが二人、膝に乗って蒸しパンをはむはむと食べている。お土産に持ってきた蒸しパンはどうやら好評の様で、残った蒸しパンは明日には食べてねと念を押して伝えた。

 皆こっくりと大きく頷いたので大丈夫だろう。お腹痛くなったら可哀そうだからね。


 ノアは僕の肩に乗って皆とお話している様だ。残念ながら声は聞こえないが、皆には通じているらしくとっても楽しそう。

 こうしていると、ほんとに絵本の世界だな、とほんわかしてしまう。

 そしてなぜかあの梟さんが僕の横にぴったりと寄り添うように座っている。眠っているのか目を閉じたままだ。





「名残惜しいが、そろそろ帰らないとオリビアたちが心配するな」

「そうですね。まさかこんな事になるとは思いませんでしたもんね」


 帰る準備を始めると、トーマスさんの肩に乗っていた男の子の妖精さんが朝のノアの様にいやいやと駄々をこね始めた。

 それを見たノアがこまらせちゃだめ、と言っているかの様にその子の手を握っている。すると、しょんぼりした様子でトーマスさんの肩からふわりと宙に舞う妖精さん。


「ふふ、ノアがお兄さんみたいだね」


 そう言うと目をぱちりと瞬いて、嬉しそうにえっへん! と胸を張っている。





「ノア、また会いに来るからね。皆も、またお菓子持ってくるね」


 ノアは最後に僕とトーマスさんのほっぺにぎゅっと抱き着き、少しだけ潤んだ瞳で笑顔を見せてくれた。

 バイバイ、と手を振り別れを告げる。

 ノアも大きく手を振り、またね、と言っている様な気がした。






*****


 アーチまでの戻り道は、前と同じ様に梟さんが案内してくれる。


「梟さん、帰り道の分の甘いものは持ってないんだ。ごめんね……」


 申し訳なくて先に伝えると、気にするなとでも言う様に梟さんはホォ─、と一鳴き。

 そしてなぜか、僕の手にグイグイと押し付ける様に緑色の綺麗な石をくれた。


「これ、僕が持ってていいの?」


 そうだ、と言う様にホォ─、と一鳴きし、梟さんは大きな羽を広げて森の奥へ帰って行った。




 森から出ると、シュルシュルと音を立ててアーチは解け、森の入り口が消えてしまう。


 まるで今までの出来事が夢だったかの様な、そんな不思議な気持ちになったが、掌に握りしめたこの石が、これは現実だと教えてくれている様だった。



ブックマークや評価、ありがとうございます。

コロナの影響で休業になり、ふと思いついた話を小説として投稿したのがきっかけですが、たくさんの方に読んでもらえてとても感謝しています。

まだまだ書きたい話には辿り着かないんですが、楽しんでいただければ幸いです。

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