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381 慈悲

お久し振りです。更新遅くて申し訳ありません。

今回は(短いですが)ライアン殿下視点で物語は進みます。


 教会の扉を開け、ブレンダ、マイルズと共に外へと一歩足を踏み出す。

 辺りに漂う不快な硝煙の臭いに、思わず顔を(しか)めてしまう。


(……これは酷い)


 暗闇に包まれた王都の街に、そこかしこから炎が上がり天高く火の粉が舞う。

 ライアンが張った結界の向こう側では、接近した魔物たちが妖精のテオがかけた魔法なのか、藻掻(もが)きながらズブズブと泥の中に沈んでいくのが見えた。

 だが、それを警戒しつつも、教会に侵入しようとしている魔物がこちらの様子を窺いながら、いまだウロウロと周辺を徘徊している。


 何週間も前から楽しみにしていた今日の試食会。

 初めてできた友人たちと、楽しく一日を過ごすつもりでいたのに……。


(すべてが台無しだ……)


「……ハァ」


 そんな事を考えていると、意図せず口から溜息が漏れた。


「殿下。大丈夫ですか?」


 溜息を聞き、妖精のウェンディ、そしてブレンダとマイルズは心配そうにライアンを見つめている。

 魔物が目の前にいるのに、全く関係のない事を考えていたなんて知られては大変だ。急いで上辺を取り繕う。


「……いや。私のことは気にしないでほしい。とにかく、あの魔物たちをどうにかしなければ」

「そうですね……。レティは大きな気配は四と言っていましたが、まだ我々からは目視出来ない。あの泥の海に沈んでいく分は放っておいても大丈夫そうですが……」

「大きな気配。それが教会に接近する前に、遠ざけた方がいい……」


 教会の中にはシスターと子どもたち。そして怪我人がいる。

 とてもじゃないが、あの人たちでは逃げ切れないだろう。


「……まずは、あの徘徊しているのを片付けようか。ウェンディ、手伝ってくれるかい?」

《もちろん! あれくらいなら、まかせて!》


 そう言って、ウェンディは頭上にあげた手を勢いよく振り落とした。


慈悲のとどめ(グナーデン・シュス)


 光がベールの波となり、包み込んだ魔物たちを一瞬で溶かしていく。


「わぁ! 実際には初めて見たけど、それは凄いね……! 私にも出来るかな……?」

《いまのらいあんなら、かんたんだとおもうよ!》

「本当に? あ、結界が弱まったりはしないかな……」

《しんぱいしなくても、だいじょうぶ!》

「……そうか。それなら」


 そう言いながら、ライアンは左手を高くかかげた。


『弱き者に、光の道標を《慈悲のとどめ(グナーデン・シュス)》』


 先程よりも強烈な光のベールが、辺り一帯を覆っていく。

 残っていた魔物たちの醜い悲鳴が鼓膜を震わせる。


「……初めてにしては、上手くいったかな?」


 まだ遠くに残ってはいるが、教会周辺の魔物はこの光魔法のベールであらかた片付いている。

 護衛で五日間を共に過ごしたマイルズは、この殿下の変わり様に驚くばかりだった。


《ちょ~っと、ちからをこめすぎかな!》

「そうか……。手厳しいな……」


 妖精の発した言葉は理解できないが、ブレンダとマイルズの二人は、この光景をただただ呆気に取られながら傍観するしかなかった。


今秋2024年10月1日(火)に発売を予定していた書籍・第①巻ですが、諸事情により発売が少しばかり延期となりました。

楽しみにお待ち頂いた皆様には大変申し訳ないのですが、また日程が決まり次第、ご報告させていただきます。


その間、私は特に作業もないので、更新に力を入れたいと思います!

……ので、王都編が無事終わるよう祈っていてください!

今回は身も心も強くなったライアン殿下を見てほしかったのです……。


※今回、伸井太一様の「創作者のためのドイツ語ネーミング辞典」を参考にさせて頂きました。

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