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352 ご機嫌ななめ

お久し振りです。

とっても短いですが、読んで頂けると嬉しいです。


 ここは王宮の一室。最初に魔族の彼等と対面した部屋だ。

 今後の話をする為に戻って来たのはいいけれど……。


「あうぅ~~っ!」

「あらあら、ご機嫌斜めねぇ……」

「やぁ~~っ!」


 いつもはにこにこと可愛らしい笑顔を浮かべているメフィストちゃんの機嫌が悪い。もしかしたらトーマスが王宮から離れたのを感じ取ったのかしら……? 拭っても拭ってもその愛らしい瞳からポロポロと涙が溢れてくる。


「めふぃくん、こっちおいで」

「うぅ~!」


 レティちゃんも懸命にあやしてくれているけど……。

 困ったわ……。リリアーナちゃんもいないし、これは長期戦になりそうね……。


「皆さん、ごめんなさいね? いつもはほとんど愚図らないんだけれど……」


 向かいのソファーに腰掛ける三人に詫びると、笑顔で気にしないでと返事が。三人ともレティちゃんの腕の中で愚図っているメフィストちゃんに興味があるのか、少し前屈みになって食い入る様に見つめている。


「う~ん……、やはりこの赤子……」

「悪い魔力(もの)は抜けているけど、そのままだもの……」

「まさかとは思いましたが……」


「「「あの悪魔(メフィスト)……?」」」


 どうやらこの三人も、赤ん坊になる前のメフィストちゃんに会った事がある様子。こんな事が? と不思議そうに首を傾げ、繁々と見つめたまま。

 いいわね、大人の姿のメフィストちゃん! きっと素敵に違いないわ! 私も会ってみたかった。


「やぁ~!」

「あらあら、隠れちゃったわ……」


 メフィストちゃんは三人の視線から逃れる様に、レティちゃんの腕に顔を押し付けて隠れようとしている。愚図っている筈なのにその仕草も可愛らしくて、私は口元がニヤけるのを我慢するのに必死。

 赤ん坊って、どうしてこんなに可愛いのかしら?


「……ゔぃるへるむさん、だっこ、してみる?」

「えぇ!? 私がかい……?」


 レティちゃんの突然の提案にヴィルヘルムさんは驚きを隠せない様だけど、隣に座るセレスさんとダレンさんはその言葉に目を輝かせ乗り気の様だ。


「はい! めふぃくん、だっこしてもらおうね?」

「うぅ~!」

「物凄く嫌がられているけど……」

「だいじょうぶ!」


 有無を言わさず仰け反るメフィストちゃんをヴィルヘルムさんの膝へと乗せるレティちゃん。戸惑いつつも、赤ん坊を抱いてヴィルヘルムさんの目尻が下がっているのが見て取れた。


「おぉ……。本当に赤子になってしまったのか……」

「頬もふくふくしてて可愛らしいわ」

「黒い髪はそのままなんですね……。あ、乳歯だ!」


 そう言いながら、そのふくよかな手をやわやわと握るヴィルヘルムさんに、ポロポロと流れる涙の痕をそっと指先で優しく拭っているセレスさん。ダレンさんは髪を撫でながら、複雑だなぁと笑っている。

 そうよね、彼等からすれば自分を捕らえていた憎い相手の筈……。


 そしてレティちゃんも……。


 一緒に育てると言ってしまったけど、本当はツラかったかもしれない……。そんな事を考えてしまい、心が沈んでいくのが分かった。

 この人達もやっぱり、元とはいえ自分を苦しめていた相手と暮らすのは嫌かしら……。



「めふぃくんね、あかちゃんだけど、まほうつかえるの」

「これだけ魔力が豊富なら、必然かもしれないなぁ……」

「わたしのまほうじん、かってにおおきくしちゃうんだよ! ね? めふぃくん!」

「うぅ~……」

「あら、そんな事も? レティの時も驚いたけど……、この子も私達より多いものね」

「この小さな体で魔力酔いはしないのかな? ん~、どうなってるんだろうね? 興味深いなぁ~!」


 ダレンさんはそう言うと、メフィストちゃんの顔を覗き込んだ。メフィストちゃんも近付いてくるお兄さんの顔を見てぷくぅっと頬を膨らませる。



「あっぷぅ~!」



「「「かわいい……!」」」



 どうやら心配は不要だったみたい。

 何となくだけど、彼等となら上手くやっていけそうかしら?


 そんな事を考えながら、漸く今後の事について話を進められそうだ。



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