表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/397

1 出会い


「ハァ~……、それにしてもあっついなぁ~……」


 雲一つない快晴の下、長閑のどかな田園風景が広がる道を、大量の荷物を載せた荷馬車がゆっくりと走っている。


 二頭立ての馬が馬車を引き、その御者台に座っている男性の名はカーター。

 年は28歳と若いが、王都から離れた村・アルトヴァーレで、いま流行りの服や革製品などを取り扱い、その村では人気の店を構える立派な商人だ。


「トーマスさん、今回は護衛を受けていただいてありがとうございます! ……でも、本当に報酬はなしでいいんですか? ギルドに依頼したら、結構な金額だと思うんですけど……」


 そう言って、後ろの荷台に向かって申し訳なさそうに声を掛けるカーター。


「あぁ、構わん。どうせ知り合いに会いに行く予定だったからな。それより片道5日はかかるところを馬車に乗せてもらえて助かった。こちらの方こそ感謝するよ」

「えぇ~!? ちょっとやめてくださいよ~! トーマスさんが一緒で、私もかなり心強かったんですから~!」


 そう言って、自分より30も年下の青年に頭を下げ礼を言う男性。 

 同年代の男性に比べてかなり上背があり、筋肉も厚く初老とは思えない、相当鍛えられた肉体の持ち主だ。

 昔は冒険者としてパーティーを組んでいたが、10年程前に妻と共にこの先にある村に越してきた。

 酒場で白髪交じりの顎鬚をさする仕草は、年を重ねたからこそにじみ出る大人の色気が漂い、男女問わず憧れる者は多い。


「王都がもう少し近かったら、仕入れもラクなんですけどね~」

「ん? そうしたら他の店にも行きやすくなって、店の売り上げが落ちるんじゃないのか?」

「うっ……、そうなんですよね……! くっそ~! もっと皆が興味の引くものを手に入れないと……! う~ん……」


 そう言いながらブツブツ考え始めたカーターを見て、フッと微笑むトーマス。

 しばらく走ると、村の門近くにあるが誰にも使われていない納屋が近づいてきた。


「……ん?」


 何かが動いた気がして目を凝らすと、その物陰に小さな塊……。

 そう思ったと同時にトーマスは荷馬車から飛び降り、その物陰に駆け寄った。


「えっ!? どうしたんですかトーマスさん!?」


 いきなり飛び降り走り出した彼の後を、慌ててカーターも追いかける。

 馬の手綱を引きながらそこに近づくと……、


「……え? それって……!?」


 そこには泥だらけでぐったりと横たわる少年と、その傍らでうずくまり泣きじゃくる、まだ年端もいかない2人の幼児の姿があった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ