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13 快気祝いと貢ぎ物?


 ご近所さんに貰った大量の野菜や果物を家に置き、再度カーターさんのお店に向かうことになった。

 オリビアさんとユウマには、そのままお店に行ってもらったので、今頃は店内にいるはずだ。オリビアさんの足が心配だけど、痛くなったりしてないかな……?

 ハルトはお手伝いすると言って、転がったオレンジ(オランジュ)をそのまま両腕に抱えてうんしょ、うんしょ、と運んでくれる。それを見た人たちからまた果物を追加で貰うとは、僕もトーマスさんも思ってもみなかった。


 これは“快気祝い”と称した、弟たちへの“貢ぎ物”なのかもしれない……。




 遅れてカーターさんのお店にたどり着き、ホッと一息。

 店内はゆったりと広めで、女性用の服や作業用のオーバーオールなど、多種多様な服がきれいに整理されて並んでいる。

 トーマスさんはと言うと、ハルトと一緒に店の入り口にある長椅子で少し休むと言って座っていた。

 オリビアさんとユウマを探している途中で僕の目を惹いたのが、革鎧やローブ、ミトンなど店の一角にある冒険者用かな? っていう小さいコーナー。



「おや? いらっしゃい。それに興味あるのかい?」



 そう言って声を掛けてくれたのは、赤毛を後ろに(まと)めたオリビアさんより少し若めの女の人。僕が見上げる程、背が高くてカッコいい……!

 こういうのは大体武器屋で売ってるんだけど、知り合いの商品だから数は多くないけど店に置いているらしい。この村にも冒険者が立ち寄るから、たまに売れるんだって。


「あら、ユイトくんここにいたのね。紹介するわ、マチルダ。この子がうちで暮らすことになったユイトくんよ」

「あぁ、坊やがユイトかい? カーターの母親のマチルダだよ」

「はじめまして、ユイトです。えっと、カーターさんにはすごくお世話になって……!」

「ハハハ! そんな堅苦しいことはいいんだよ! あのトーマスさんが可愛がってるって聞いたからどんな子かと思ったけど……。いやいや、エリザの言う通りホントに可愛いねぇ!」


 笑いながら片手で握手をし、もう片方の手でバシバシと僕の背中を叩くマチルダさん。

 よろしくね、とニカッと笑いかけてくる。強盗を素手で捕まえる元冒険者って聞いてたけど、本人を見てすぐ納得した。

 僕も涙目になりながら、よろしくお願いします、と笑顔で答えた。



 合流したオリビアさんと一緒に、店内の服を見て回る。ユウマがどこにも見当たらないと思っていたら、カウンターの奥でマチルダさんの旦那さんに抱っこしてもらっていた。

 仕事の邪魔にならないかと心配だったけど、旦那さんのアントンさんがニコニコしていたのでちょっと安心。


「ユイトくん、どう? こんなの似合うんじゃない?」


 オリビアさんが僕の身体に合わせた服は、ちょっと大人びていて王都で流行りのものだそうだ。カーターさんが仕入れてきた最新の服らしい……。値段は分からないけど、他のより高そうな気がする……。



「オリビアさん、その子にはもっと動きやすい服の方がいいんじゃないかい?」



 破いたりしたらどうしようと困っていると、いつの間にかユウマを抱えたアントンさんが後ろに立っていた。


「そうかしら……。 でもこれも素敵じゃない?」

「確かに、この子ならその服もあつらえた様にぴったりだ。でもこんな幼い子を抱っこしたりするんなら、もっと柔らかい丈夫な服の方がいいだろうよ。仕事も手伝うんなら尚更な」


 それにその服一枚で、ここら辺に並んでる服なら三、四枚買えるぞ? と助け船を出してくれた。

 オリビアさんも少し迷っているようだったので、今ならあの服を回避できるかもしれない!


「……ぼ、僕、この動きやすそうな服がいいです!」

「そう? う~ん……。これも素敵だけど、そっちの方が色も多いし確かに丈夫そうねぇ……」

「このズボンも生地はしっかりしとるが、膝の部分が柔らかいからしゃがんだりしやすいぞ」

「あら、それもいいわね? じゃあ上はとりあえず三枚と~、ズボンも二本買うわ」

「え! そんなにたくさんですか!?」

「え? 洗い替えもいるし、当たり前じゃないの~! 遠慮しなくてもいいの!」



 結局あれから、アイボリー色のシャツとオリーブ色のズボンの他に、僕の下着と靴も買ってくれた。アントンさんはずっとユウマを抱いてニコニコしていたが、この人はかなりデキる人だと思う……。

 助け船と思った僕が間違いだったんだ。

 なぜなら僕の両手には、オリビアさんが買う僕の服がたくさん積まれていたからね……!


 会計をし、お互いにホクホク顔のオリビアさんとアントンさん。

 お二人を見て、僕は一気に疲れてしまった……。いまなら、店の入り口でハルトと休憩しているトーマスさんの気持ちがよく分かる。




「今日もまた、スゴい量だな……」


 店から出てきた僕たちを見て、トーマスさんがお疲れ、と肩をポンと叩いてくれた。

 オリビアさんにお礼を言ったら、必要なものだから気にすることじゃないと言って笑っていた。

 ハルトとユウマは、お店の外まで見送りに来てくれたアントンさんとマチルダさんに手を振っている。

 両手いっぱいの荷物を見て、朝の快気祝いの野菜たちを思い出す。家のテーブルに置いてきたから、帰ったら倍近くの量に増えた野菜たちを見て、オリビアさんとユウマはビックリするかな。

 想像しながらふふっと笑うと、足元に来たハルトがまたお手伝いすると言って荷物を持とうとする。


「あ! おにぃちゃん、この、およぅふく、ぼくと、いっしょ!」


 そう言ってハルトが覗き込んだのは、アイボリーのシャツ。

 ハルトとユウマの服と同じアイボリー色。お揃いだね、と言うとふんふ~ん、とごきげんそうに鼻歌を口遊(くちずさ)みながらスキップしてる。

 あ~ぁ、これは途中で疲れちゃうぞと思っていたら案の定、途中でトーマスさんに抱っこされていた。


 明日からはこれを着て、オリビアさんのお店のことを教えてもらうんだ!


 そう思うと、僕はワクワクと緊張で、明日が楽しみで仕方なかった。



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