T
「なあなあお前知ってるか?この前あそこの講義室で出たらしいぜ」
こいつはT。俺の同期だ。入学式がたまたま隣でそこから仲良くなった。
Tは顔こそ整ってはいるがこいつから女の気配がしたことはない。
背も平均くらいでファッションも普通、短髪で清潔感のある男だが…
授業は一緒に受けているがその程度の関係…と俺は思っているがどうやらこいつら違うらしい。
ことあるごとに俺に絡んできて、なんやかんやと話しかけてくるのだ。
まったく、いい迷惑だ。
「出たって何が?」
「何ってそりゃあれだよ、お化けだよお化け!」
お化けか、くだらん。そんなので騒ぐ年齢でもあるまいし。
お化けが本当に要るなら今すぐ俺のところにこい、除霊してやるから。
なんで夜だけ出てくるなんて夜行性なんだ。ニートか。
「それでさ、今夜行こうぜ!お化け退治!」
おいおい正気かTよ。夜の大学に入るなんて…
警備員に見つかったりしたらどうするんだ。
いや決して怖いわけではない、そんなわけないじゃないか。
俺は平気だ。幽霊なんて怖くない。
「そんじゃ夜11時に正門でなー!」
行ってしまった…あいつ人の話聞いてるのか…全く。
それにしてもこんな季節に肝試しとは…幽霊も大概にしてくれ。
はあー。この講義も詰まらんし、帰るか。
今日も十分頑張ったな、俺。