カフェ
「で、昨日の件でお前が知っていることを説明してくれ」
ホットコーヒーを前にしたSはその立ちあがる湯気を吹き消すかのように話し出した。
自分は本当は霊感なんてなくただオカルトサークルに所属していたこと、初めて霊(もとい人間)を見た恐怖で固まってしまったことなどなど話し始めた。
「それはもういいよ。それでお前が持っていた杖は何なんだ?」
「あれは家に代々伝わるものなんです。実家が神社でその宝物庫から拝借してきたんです。」
なるほど。だからあんな力が…
Sが言うにはその杖に吸い込まれたものは言い伝えでは異世界と繋がっているだとかそういう話だった。
「ということはTはその異世界かどこかへ吸い込まれたという訳か…」
「はい、おそらく…」
「それで助ける方法は?」
「わかりません…」
まあそうだよな。知ってるわけないよなあ…
俺は何度目かわからない頭を抱えた。
こうなればもうああするしかないよな…
「じゃあわかった。俺をその杖で吸い込んでくれ。」
Sは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
「もうそれしかないんだろ?Tを助ける方法は」
「でもそれは吸い込まれたらどうなるか…」
Sはかなり困った顔している。そりゃそうだろう。誰だってそうするはずだ。
だがそれしか手掛かりがない以上、俺が行くしかない。
俺はSを押し切ってSの実家の神社まで連れて行ってもらうことにした。