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バグ取り日和(改訂版)  作者: s_stein & sutasan
3/25

3.

 少々ぬるくなったお茶が載るお盆を手にしたマリアは、重い足取りで会議室のドアの前にたどり着いた。


 振り返ると、相変わらずタケルがニヤニヤしているのが、ちょっと腹立たしい。


 右耳をドアに近づけると、ザワッ、ザワザワッ、ザワザワザワッ、と緊張感の漂う短い沈黙を挟んで聞き覚えのある声が漏れてくる。


 談笑ではない。丁々発止と渡り合っている感じだ。


 深呼吸をしたマリアは、器用に片手でお盆を持ち、会話が途切れそうなタイミングを見計らってドアをノックする。


 ノックは3回と教わったが、お盆が気になるので3回目は空振りになり、ノックは2回となった。


 すると、ドアの内側が嘘のようにシーンとなる。後ろのデスクから聞こえてくるキータッチの音が気になるほどだ。


 ドアを隔てて白熱しているのは、某インフラ系システムの開発進捗会議。


 顧客は部長含め五名、当社も部長含め五名。


 横長のアイボリー色の長机が漢字の口の形に配置され、長い方に陣取った両者が睨み合っている様子が容易に想像できる。前もお茶を運んだときがそうだったからだ。


 これで五度目の大幅な仕様変更。


 直接的には言えないが「いい加減にしろ」という気持ちの当社と、なぜ出来ないという顧客の押し問答。


 会議中の部長たちと同じく気が重いマリアは、もう一度深呼吸をしてドアノブに手をかけた。

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