24.
カンナの指示で、完全に作業が分業化した。
机上でバグを見つけるのに専念するマリア中心のチーム、試験を実行してOK/NGを判定するチーム。そして、設計書とプログラムと試験項目の修正はカンナ一人。
抜けていた設計書の異常系の記述は、全てカンナが行った。それに従って、新しくプログラムを組むのもカンナ一人だ。
分業された作業の担当決めは、おそらくBの情報を元に行ったものだろうが、得意分野が配慮されていて誰もが納得いくものだった。最初から「ハズレを引いた」と嘆く者はおらず、カンナへ少しずつ信頼を寄せた。
こうして、カンナ丸は魔物が潜むプログラム開発の大海原へ出港した。
仕上がった設計書が社員に回覧レビューのために共有されると、誰もが増えた分量とそれを書く速さに驚愕した。
異常処理はこう書けというお手本のようなもので、おかしなところが見つからない。レビュー記録表での指摘は、若干のタイプミス程度だった。
その設計書の顧客承認は別のメンバーが行ったが、顧客からは今更こんなに処理抜けが見つかって何をやっていたんだと大いに呆れられ皮肉られた。
仕上がるプログラムのコードもほぼ完璧。
読みやすく、適度なコメントが入り、拡張性まで考えられていて「増設されたらこの箇所のこの変数の値を変えること」まで書かれている。
さすがにいくつかタイプミスと思われる箇所がマリアたちによって発見されたが、「やはりカンナさんは人間なんだ」と彼女たちはホッとした。