23.
『Take>我々はBさんの指示を受けて動いています』
タケルはそうは書いたものの、Bを信頼していなかったので微妙な心境であった。
言いたかったのは、上下関係を壊して欲しくないということだった。このままでは、カンナがプロジェクトリーダーになってしまう。
『Kanna>ではBさんにここに入ってもらってください』
『Take>入っていますが』
『Kanna>ログを見ても発言している様子はありませんが』
確かに、Bはチャットのアカウントはあるが、指示を含めて発言は口頭だった。自分の指示がログに残るのを回避していた嫌いがある。
タケルは歯がみしながらBの元へ訴えに行くと、「美並さんの指示でとにかくやってくれ」と全権委任した。
「あら、それじゃ外注丸投げじゃないの?」
「君らがいるだろう? 丸投げってのは社員も関わらないことだ」
「リーダーになっちゃうわよ」
「俺は今、他で火を噴いているプロジェクトに関わっていて忙しいんだ。そのために来てくれている」
タケルは『何それ』という言葉を飲み込んで、始終顔を上げないBに背中を向けた。
『Take>Bさんから美並さんに委任すると今聞いてきました』
『Kanna>最初からそう聞いています』
タケルは本の壁に向かって眼光鋭く睨み付けた。
『Take>口頭でですか?』
『Kanna>メールです。私は口頭では一切受け付けませんので』
タケルは今度はBの頭を睨み付けた。
『Take>わかりました。では、みんなに指示をお願いします』