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20.
声に驚くのは序の口だった。
恥ずかしそうに下を向いていたカンナが、テキパキとPCをセットし始めた。
様子が気になる社員の視線がカンナに集まるが、彼女はお構いなしにミカン箱を開けた。
すると、彼女の動きを観察する彼らの目が釘付けになった。
無理もない。彼女の机の上では、異様な光景が展開されているのだから。
2画面モニターはよくあるが、そのモニターの上に小さなクマのぬいぐるみがずらりと並べられた。
腰掛けさせているのだから、足が画面の上を邪魔するのではないかと思うが、誰かがさりげなく机に近づいて確認したところ、人形の足は吊り輪の選手のように、地面と平行になっていた。バランスを取るために、尻に粘着テープでも貼っているのかも知れない。
その微笑ましくもあり、ちょっと不気味でもある光景は、たちまちのうちに消えた。
なぜなら、ミカン箱から出てきた本がうずたかく積まれ、モニターを隠して机の三辺に沿って壁となっり、カンナがその裏側に隠れたからだ。
会社の机の上に本を積んで、2画面モニターごと自らの姿も隠す。
誰もが開いた口が塞がらなかった。