16.
会議室からようやく出てきたマネージャーHはBと軽く立ち話をしていたが、自席に戻るとそこにタケルたちがやって来るのを見た。
「ちょっと、会議室でお話があるの。いいかしら?」
タケルに促されたHを先頭に、まだ熱気がこもっている空の会議室へみんなでゾロゾロと入っていく。
Hは、タケルが先輩をも巻き込んで五人も連れて直訴しに来たこと、さらに一番若い2年目のマリアまでいることに驚いた。
腕組みをしながら窮状をタケルから聞き終えたHは、他のシステム開発に没頭していてBに任せっきりだったことを素直に反省した。これで、聞く耳を持たないと懸念していた者たちは一様に拍子抜けしてしまった。
「遅れ気味とは聞いていたが、Bくんには『頑張れ』で済ませていた。本当に謝る」
「部長からは何も聞いていなかったの?」
「ほとんどない。報告はBくんからだ」
「その報告もどの程度だったの?」
「数値化されてグラフ化されたもので、細かいことは書いていない」
そんな物で済まされていたことに呆れたタケルは、あからさまにため息を吐くことだけは躊躇った。
「これを機会に、現場に足を運んで、もっとみんなを見て欲しいわよ」
「約束する。……そうだ。別のシステム開発に、凄腕のパートナーさんを入れようとしていたんだが、君たちの方へ回そう」
「本当ですか!?」
タケルたちは目を輝かせた。
「何人来るのかしら?」
Hは人差し指を立てた。
「一人。女性だよ。Bくんの補佐に入ってもらう」
その言葉に、タケルたちの目から輝きが失われていった。