14.
開発の進捗が2日遅れ、3日遅れ、4日遅れと拡大していく中、また顧客とのハイレベルミーティングが開催され、長時間の激論が交わされた。
恫喝部長を先頭にムスッとした5人が会議室から出ると、各チームのリーダーと何人かの担当者が会議室に集められた。その中に、タケルもいた。
30分ほどして、会議室から真っ先にタケルが飛び出した。
「ちょっと、みんなー! また仕様変更よ!」
席に戻ってきたタケルの声に、みんなはなんとなくわかっていたことではあるが、落胆の声が波紋のように部屋中に広がっていく。
「マジでか」「修羅場の二乗」「限りなくブラック」「とっくに濃いめのブラック。お前が気づいてないだけ」「どうすんの、この状況で」
連日の残業で、終電に駆け込むのがほぼ日課。休日出勤も、当たり前になっている。
24時間戦えますか? んなわけねーだろう、と誰もが心の中でつぶやく。
バグは一向に収束しない。
対向試験がまともに進まない。
しかも、この状況は、毎日進捗報告を求める顧客にも伝わっていてガラス張り。このプレッシャーが半端ない。
メンバーはすっかり疲弊している。
思いつく言葉は、「万策尽きた」。
一部は、落胆から怒りに変わる。
「弁当食いに会社来ている部長が仕様変更をよっしゃよっしゃって受けたんだろう?」「部長にデバッグさせようぜ」「社員一丸となって取り組むっていつも部長が言ってるじゃんか」「そうだ、そうだ」
ただならぬ雰囲気になってきたところで、タケルが手を上げた。