表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

子宝

作者: ishikado

 「子供は多ければ多いほうがいい!」

男はビールを一気に飲み干したら唐突にそういった。

「そうか? あんまり多いと手間もかかるし金もかかるし大変じゃねえか?」

俺も酒に酔っていたのだ。思ったことをそのまま口に出してしまう。

「かあ~。わかってねえな~。子供ってのはな、多けりゃそれだけ手間も金もかからねえんだぜ!」

「どうして?」

「そりゃおめえ。子供ってのはあんまり多いと、親が見てなくても自分たちでいろいろ教えあったり叱りあったりするもんなんだぜ。

 親がちゃんとしつけなけりゃいけないのは三人までよ。それ以上はそんなに変わらねえ。それどころか今度は家事の手伝いまでし始める。手間はかかるどころか減る一方だ。

 あいつら、おれの想像以上につかえやがる。」

「はあ~。そういうもんかあ~。

 よし。手間がかからねえ理由は分かった。次は金もかからねえ理由ってのを教えてくれ。

 お前にはたしか十二人くらい子供がいたよな。そんだけいるとなりゃ毎日食べさすにも、学校行かせるにもかなりの金がかかるはずだ。

 それでも金はかからねえってのかよ。俺なんかひとり育てるだけでいっぱいだぞ。」

「・・・」

 男はしばし黙り込んだ。それまでの酔いしれた朗らかな表情は薄れていき、鋭い目つきで俺に振り向く。

「すまん。金がかからねえってのはうそだ。

 あいつら毎日馬鹿みてえに飯食いやがってまいったもんだよ。

 だがな、それ以上に子供ってのは金をおれに運んでくれるのさ。

 一人につき一億くらいか?

 プラスマイナスプラスってな感じだ。

 ま、おまえもたくさん作ってみることだな。」

 男は妙な言い回しになったかと思えば気まずくなったのかそそくさと店を出た。

 俺はどこか味が悪い空気をビールで喉奥に流し込んだ。そして一人で仕切り直しだ。


 後日、男のもとで子供がひとり亡くなったと聞いた。

 どうやら飛び出しによる交通事故らしい。事故を起こした相手はえらく立派な金持ちだそうで裁判はせずに示談で決着したそうだ。

 俺はあの時の会話を思い出した。そして俺は今いる一人の息子を愛し抜こうと決意を固めた。むやみに増やすことなどしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ