3-3:ドラゴニュートが火を噴いても火傷しない件について
教授コメント
『エンシェントドラゴンの吐く炎は君の魔法の様に空間に干渉する魔法と言うことですね』
にじり寄ってくる盗賊。
本当なら魔法でコテンパンにしてあげたいところなんだけど、生憎荷物をアルメルやナディアに持ってもらっていたので手元にBlessed Breathがないんだよね。
「ここはシャーロットがドラゴンになるしかないね」
「いやよ」
「え、なんで?」
「だって、服が破けちゃうじゃない」
「え、あ、うん?」
そういえば、あの時も服を着てなかったような。
エルは変身しても服を着てるけど、シャーロットというかエンシェントドラゴンの変身は少し性質が違うということなのかな?
「へへ、大人しくしてたら乱暴は手荒なことはしねえよ」
半裸の大男が迫ってくる。
いや、こういうセリフを言う奴に限ってちょっと挑発されたら乱暴しちゃうんでしょ?
「近寄らないでよ、デブ!」
「なっ、なんだとぉ!」
ほらね。
ていうか、それくらいで怒らなくてもいいと思うんだけど。
デブって……小学生みたいな悪口だよね。
「俺はデブじゃねえ。骨太なだけだ!」
「いや、そのお腹で言われても……」
歩くたびに揺れてるんだけど。
「っ! お前ら、絶対許さねえ!」
「あ、ほら、シャーロットのせいで怒っちゃったじゃないか」
「あたしのせいじゃないわよ! 火に油を注いだのはあんたじゃない!」
「そうかも!」
「うおおお!」
ドスンドスンと地鳴りを起こしながら近づいて来る大男。
どうしよう。
Blessed Breathなしで魔法を使ったことはないし……。
イチかバチか、やってみるか。
「よし、アクアブレスでも撃つか!」
『音域、中。倍音成分、低。属性付与、水ですが、できますか?』
「よく分かんない!」
とりあえず、中くらいの音域で歌えばいいんでしょ?
よし、聞き惚れろ、僕の美声に!
「あー♪」
「……あん?」
あ、だめだ。
何にも起きないや。
「何遊んでるのよ!」
「遊んでたわけじゃないんだけど、難しいんだよ」
僕、カラオケでもいつも音程のスコアが低いんだよね。
「からかってんじゃねえ!」
「わっ、あぶなっ!」
大男の拳が迫る。
僕は思わずその拳を受け止めようと左の掌を突きだす。
出してから思ったんだけど、そんな大男のパンチを止められるわけないんだよね。
やってしまった、と後悔して目をつぶっていたら一向に衝撃が伝わってこない。
「ん?」
「くっ、こ、こいつ、俺の拳をっ!」
「え、あ、え?」
なんか受け止められてるんだけど。
それも、全然痛くないし。
「手加減してくれてる?」
「そんな訳ねえだろっ!」
「そっかー」
あ、そう言えば、火山の精霊にデバフを解除してもらったんだっけ。
もしかしたら、あの時に僕の筋力が開放されたのかも。
そう考えると、この状況の説明が付くね。
「つまり、僕の方が素手でも強いってわけだ」
「イタタタタタ」
僕は大男の拳を握り、腕を捻り上げる。
うーん、なんか痛そうな顔にちょっと罪悪感があるね。
「ぎ、ギブギブ!」
「よし、じゃあ、そこで大人しくしててね」
「う、うう」
手を抑えて横たわる大男の腰から棍棒を借りる。
うーん、まさに盗賊って感じの武器だ。
「さて、僕としてはさっさと逃げて欲しいんだけど、やる?」
「ひっ!」
威嚇するように棍棒で地面を小突く。
我ながら良い感じの強者口調じゃないかな?
これなら、戦わずして逃げて……。
「おっと、調子に乗るのはそこまでだぜ、異世界人」
「うん? あっ!」
「ちょっと、放しなさいよ、あんた!」
「おっと、暴れんなよ、ドラゴンの嬢ちゃん。それ以上暴れると……」
「ひっ」
「このナイフが嬢ちゃんの綺麗な肌を傷つけちまうぜ?」
「すごい小者臭だ」
「その小者に追い詰められてるんだ。観念しな」
おっと、そう返されると一気に強者っぽく聞こえるね。
「仕方ないか」
僕は棍棒から手を離し、両手を上に上げ降伏する。
ここは一旦、投降してシャーロットの安全を優先するべきだね。
「よし、利口な奴で助かったぜ」
「それはよかった」
しかし、次の瞬間、ヴィルジールの取り巻きが一斉に倒れていく。
あ、この声はもしかして……。
「助けに来てくれたんだね、エル」
「君が困っているなら当然だ」
「私たちも居るわよ」
「迂闊」
「アルメルもナディアも助かったよ」
後ろにいた盗賊たちも二人によって鎮圧されていた。
アルメルもナディアも強かったんだね。
ドラゴン戦では……まあ、あれは規格外だもんね。
「さて、残るは君だけだ。投降する事を勧めるよ」
「ちっ! 誰が、そんなこと!」
「きゃっ!」
「シャーロット!」
ヴィルジールはシャーロットの頬にナイフの側面を押し付け、けん制する。
「へっ、こいつがどうなってもいいって言うなら投降でもなんでもしてやるよ。だがな、お前らはこいつが大事なんだろ? だったら、俺が逃げるまでは大人しく……」
「あーもう、鬱陶しいわね!」
「なんだと?」
シャーロットはイライラした様子で怒った顔をしていた。
あ、身体が光り出した。
「ベタベタと触ってきて、もう怒ったんだから!」
「なっ、お、おい!」
肥大化していく身体を抑えきれず、ヴィルジールはシャーロットを手放す。
そうして目の前に現れたのは体長10メートルもある巨大なドラゴン。
「ひっ!」
「泣いても遅いんだからね!」
「わあっ! 待った待った!」
シャーロットは口元にマナを溜めていく。
火球を撃つ気満々みたいだけど、それしたら死んじゃうから!
「フレアボム!」
そうしてシャーロットの口から火球が放たれる。
あ、よく見ると口に溜めたマナを履きだした瞬間に火の玉になってるね。
なるほど、口の中で火を作ってるわけじゃないから火傷しないんだね、納得だ。
「って、それどころじゃないよ! い、イチかバチか! “Aqua Breath”」
そうして放たれたフレアボムを横から叩き、起動を逸らす。
ヴィルジールの隣を横切り、背後の地面が弾けとぶ。
それを見て、ヴィルジールは気を失ったようでその場にぱたりと倒れてしまった。
うーん、ナイスガイもさすがにドラゴンは相手にできなかったみたい。
「シャーロット、もういいから!」
「なんでよ! そいつは悪党でしょ。なんで庇うのよ!」
「悪党でも殺すのはよくないよ!」
「はあ? わけわかんない!」
シャーロットは僕にくってかかる。
規律を守るドラゴンだから、やっぱり悪は滅するべきだと思っているのかも。
でも、可愛い女の子が誰かを殺そうとするのは、やっぱり見るに堪えないよ。
「と、とにかく、今は駄目!」
「……分かったわよ」
僕の必死さが伝わったのか、シャーロットはドラゴン形態をやめてくれる。
光が広がり、次第に人型へと収束していく。
少し幼さを残すシャーロットの身体が形作られると、光が晴れ、そこには……。
「あ……」
「ん? なんで顔を手で覆ってるのよ」
「い、いや、見ちゃいけないと思って」
「? ……っ!」
一糸まとわぬ、シャーロットの姿があったのだった。
うん、ドラゴンになったら服が破けるって言ったもんね。
「み、見たわね!」
「大丈夫! 一瞬、一瞬だったから!」
「それでも見たんじゃないー!」
正面で再び地響きが怒ったかと思うと、指の隙間からチラ見したそこにはドラゴンの姿に変身したシャーロットがいた。
え、なんで臨戦態勢?
「あ、あの、シャーロットさん?」
「わ、わ」
「わ?」
「忘れなさーいっ!」
「うわああああっ!」
振り下ろされた尻尾に吹き飛ばされる。
僕はこれが裸を見てしまった罰なのだと受け入れ、そのまま、川に着水するのだった。
エディルメモ
『着水は綺麗な放物線を描き、芸術点の高いものでした』
読んでくださりありがとうございます。
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次回更新は21時頃を予定しています。
すいません、無理でした。




